大失敗も大成功も味わい尽くそう(7)
さぁ、ごはん、みそ汁、ほうれん草のおひたしと出来上がって、
いよいよ最後のメニューに挑戦。卵焼きだ。
卵を割るのもおぼつかない子ども達。
あゆ先生が一つずつお手本としてやって見せてくれる。
「割るときは、いきなり強くぶつけてしまわないように気を付けて。」
子ども達はあゆ先生の手の動きをじっと見つめながら、
卵の割り方、かき混ぜ方、油の敷き方を、観察している。
あゆ先生の説明は一つずつ丁寧で、一緒になって話を聴いているうちに、
(なるほど、そうしたら上手にできるのか)
と、気付けば僕も、うんうん、と頷きながら、
気付くとすっかり、あゆ先生の卵焼き講座の受講生になっていた。
あゆ先生は子ども達が、よく理解できたかな?というのを確認するように、
丁寧に、でもテンポよくお手本の動きを見せながら話を進める。
そんな様子をみていると、山本五十六の言葉を思い出した。
【やってみて 言って聞かせて させてみて
褒めてやらねば 人は動かじ】
まさに、今、あゆ先生の子ども達への教え方が、これだなぁ。
しみじみと、そんなことを思いながら、様子を見守る。
いよいよ焼く段だ。
「卵は一気に流し込まないで、そうね、3分の1くらいをまずいれます。」
ジャーッと小さな焼き音を鳴らしながら、
卵がぶつぶつと気泡を膨らませながら焼けていく。
「最初の卵は、こうして膨らんできたところをつぶしながらまんべんなく火が通るようにして、、、」
カチカチカチと、フライパンの中にできた卵の風船をつぶしていき、
卵が薄焼きに全体に広がっていく。
「表面がもう少しだけ生っぽい感じが残ってるくらいで、ひっくり返して、奥の方に持って行って、二回目の卵を手前に注いで。焼けた卵焼きの手前をちょっとだけ持ち上げて、そこに卵を流し込むように…。」
くるっ、くるっ、と卵を巻いていく動きに、
子ども達は手品師を見ているかのように「おおー!」と歓声上げながら、
あゆ先生の卵焼きがじんわりと大きくなっていくのを観察している。
「・・・・最後にこうして、もう一度ひっくり返して、仕上げたら出来上がり。どう?手順はわかったかな。巻くたびに油を敷くのを忘れないように気を付けてね。」
こうしてできたあゆ先生の卵焼き。いよいよ、子ども達もやってみる。
「あ、ちょっとこぼれた。」
「うぉー!ひっくり返らん!おりゃ、おりゃ!」
「3回目がほとんどなくなったぁ。」
子ども達は班ごとに1人ずつ、自分の卵焼きを焼いていく。
あゆ先生の動きをまねながら、3回巻いた卵焼き。
何よりも美味しいのは、やはり自分で作ったという達成感が隠し味。
今回の朝食づくりの一番の成功となった卵焼きで、
子ども達にまた一つ、自信をプレゼントすることができたのだった。