双極性障害(躁うつ病)を10年やってみました

 正直にいうと、自分の病気のことを文章にすること、あるいは記事として公にすることについて抵抗があります。どれだけの人が見てくださるかはわかりませんが、たった1人の他人であっても嫌かもしれません。
 それでも私の患った病気「双極性障害」について公開文章として残しておきたいと思ったのは、多くの人(その方を支援する人々も含め)がこの病気に振り回され、人生を狂わされ、命を脅かすものと化していることが、様々な人との出会いによりわかったからです。
 そして、ネットにある情報はリアルなものでないことが多いです。基本的に医師が同病に罹っているとは考えられません。つらいときに当事者の声や生活の様子、乗り越え方を聞きたいと思ったことが私自身多々あったからです。

 苦しいですよね、双極性障害。

 私はこの病気と向き合って(タイトルには10年と書きましたが……)11年になります。

 双極性障害者としては節目の10年を突破、医師から「寛解」と認められた立場として、病気を発症してまもない方や、これからどのようにして病気と向き合っていけばよいのかわからない方、病気によって人生を諦めたいと思う方、あるいはこのような立場にある人への対応の仕方がわからない方などに向けて、私がこの11年で感じたことや考えることを少しずつこの場で表出できたらと思います。

 私のことを簡単に。
 双極性障害としては26歳の時に診断を受けました。ながらく「うつ病」であると診断されつつも、薬でごまかしながらなんとかやっていました。
 職業は医療職。あるとき環境ががらりと変わって、深夜まで仕事をしていたり、休日でもなにかしら仕事に関わることが舞い込むような状況で毎日を過ごしていたら、突然ぴたりと動けなくなりました。
 その後、休職期間をいただいて、思い切ってセカンドオピニオンを受けました。その先で、双極性障害と診断されました。自分自身が精神医療についての知識があったせいか、はじめて合点がいき、双極性障害としての治療を開始することにしました。
 しかし、炭酸リチウム(リーマス)の服用後、たびたび原因不明のてんかん様けいれん発作が起こるようになりました。手足の震えからはじまり、全身に波及して意識を失ってしまいます。最初は診断を受けた病院で。その後は自宅、出先でたびたび倒れ、緊急搬送されるたび自信を失い、ベッドで過ごす日が増えていきました。
 とても仕事どころではないので退職を決断し、治療に専念するつもりでしたが、自分の意図しないところで転職を試みたり、ブログ記事で稼ごうとして異常なほどに執筆したり(実際、数十万円も稼ぐほどのエネルギーがありました)、死ぬつもりでひたすらどこかに逃亡したり、普段の自分とはかけ離れた「ありえない自分」と向き合うことになりました。
 家族に対して憤慨し、他害のおそれがあったため、拘束され、閉鎖病棟に入ったこともあります。
 躁状態のときに破茶滅茶をし、限界が来れば身体はけいれんを起こし、うつ期に入れば何ヶ月も動けない。
 そんな生活を何年も繰り返してきました。

 しかし11年経った現状は、躁・うつの波はあるもの比較的それはゆるやかで、炭酸リチウム(リーマス)だけで精神状態が安定するようになりました。(以前はデパケンやセロクエルなど多くの薬を服薬していました)
 私は「社会に出て仕事をする」というごくあたりまえのことを未だできませんが、ジムに行って身体を鍛えたり、料理をして適量の栄養を摂ったり、趣味といえるほど部屋をきれいにしたり、調子がいい日が続けばボランティアに出たりと、それなりの幸福を感じながら生きています。
 そしていつの日か医師から「寛解」という言葉をいただきました。双極性障害は「完治」する病気ではありません。再発の可能性が極めて高い病気ですので、「寛解」という言葉を使うのですが、その言葉を聞いたとき、自分がひとつ次のステージに進めたのかなと感じることができました。

 友人はほとんどいなくなりました。
 快活に動ける身体と時間を失いました。
 未だに仕事ができません。
 恋も結婚もあきらめました。
 躁状態に気が付かず、大きなうつ期を過ごすことがあります。
 365日のうち、元気でない日の方が圧倒的に多いです。

 それでも私は、しあわせを感じられるようになってきました。

 おひさまが出ていればしあわせです。
 空の青さの違いがわかればしあわせです。
「こんにちは」と声をかけて「こんにちは」と返されるとしあわせです。
 トイレを綺麗に掃除できたらしあわせです。
 入り組んだ道を案内してあげることがしあわせです。
 自分の存在によって、誰かが何かに挑戦してくれたらしあわせです。
 今、たしかに呼吸して、生きていられたらしあわせです。

 つまり、しあわせに関しては「鈍感」であると、生きることが楽になると考えらるようになりました。

 お金がたくさん欲しい。
 有名になって多くの人にちやほやされたい。
 美男・美女と交際したい。結婚したい。
 肩書きや出世にこだわりたい。

 そんな漠然とした欲望に振り回されているうちは、病的な自分に気づくことができません。

 障害があるから、障害者であるから不幸であるように思うのなら、それを改められるように精神を安定させる必要があると思います。
 すべての人にいえることですが、過去の自分のしあわせの基準点と、現在の自分のしあわせの基準点は変化していることが多いです。

 成長すれば衰退もする。
 上がりもすれば落ちもする。

 これらを年単位で何度も繰り返すような私たちの病気。
 普通の人々には体験できない、壮絶な人生の経験をしている気がしませんか。
 病気に対してポジティブに考えることは難しいですが、病気があるからこそ、今の自分があることを忘れてはいけません。

 今を「受け入れる」心構えを、まずベースとして持つことが大切だと思っています。

 身体が重くなったり、だるくなったらたくさん眠っていいのです。
 心が落ち着かなかったら、少し立ち止まって深呼吸をしたり、水を飲んだり、ボーッとしていましょう。
「できそう」と思ったら、翌日の自分の様子や体調を思い浮かべてトライしてみるのもいいですね。

 簡単なことではないですが、そうやって、ただ受け入れて、ただ生きていくことを仕事のように感じながら、生を重ねていっています。

 双極性障害は、孤独感を感じやすい病気でもあります。
 上がってしまって人間関係を破綻させてしまったり、うつ状態で他人に合わせられないことが多いからです。
 ですから、本当に気持ちがわかり合えるのは、同病である人たちだと思っています。あるいは、双極性障害が身近にある人々。
 親切で近づいてくれている人でも、私たちには毒になることあるという点は、悲しいところです。
 もしこの文章が当事者のみなさんたちに届くことがあれば、ぜひ気軽に声をかけてみてください。


 これから少しずつ、元気なときに、病気について、双極性障害についてシェアできることを書いていこうと思います。
 この11年で試してみてよかったこと、悪かったこと。
 自分の苦手なこと、得意なこと。
 すべての人に当てはまらなくても、やってみたりやめてみたりすることが、同病で苦しんでいる方のヒントになるかもしれません。

 一緒に生きていきましょう。
 同じ苦しみを持っている人が、ここにもいます。

 それでは、また。


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