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読書レビュー 夢の新エネルギー「人工光合成」とは何か

 面白さ★★★★☆
 オススメ★★☆☆☆
 難しさ★★★★☆
 ページ数:238

 ひとことで表すと……人工光合成の基本について知れる本

 この本では、人工光合成について、その基本的原理から研究の歴史、実現への道筋、これからの展望などひと通りの事を知れる。

 人工光合成はまさに今、研究中の技術である。SDGsやカーボンニュートラルが騒がれる昨今、大いに注目されている。人工光合成の実現には主な方向性として3つの道筋があり、それぞれエネルギー効率や費用対効果などを改善する研究が行われている。

 3つの道筋は①生物学的アプローチ、②色素分子・金属錯体触媒からのアプローチ、③半導体光触媒からのアプローチである。それぞれ一言で言うと、①は天然の光合成を改良する方法、②太陽光のエネルギー密度の低さの問題を色素分子で改良する方法、③は半導体を活用した水素やアンモニアの生成である。

 そもそも人工光合成は、カーボンニュートラルの実現に向けてカーボンマイナスにもなりうる技術であり、そこに向けた更なる発展が待たれる。大きな問題として変換効率ももちろんあるが、カーボンニュートラルの考え方には変換効率だけでなくそれを実現する設備への投入エネルギーなども考える必要があり、ただ製造コストより高く売れればいい「良付加価値型」の製品とは大きく異なる視点が必要となり、実現ハードルはかなり高い。

 この本で、名前以外どういうものなのか全く知らなかった人工光合成について、特にその実現の難しさの認識を持てて、基本的知識を得ることができた。聞いたことはあるくらいの、興味を持ちはじめた人に特にオススメできる本である。

今回の本:夢の新エネルギー「人工光合成」とは何か 編 光化学協会 講談社 2016

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