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読書レビュー 脳を開けても心はなかった

 面白さ★★★★☆
 オススメ★★☆☆☆
 難しさ★★★☆☆
 ページ数:275

 ひとことで表すと……科学者が意識研究に取り組むモチベーションを知る本

 この本では、様々な分野の科学者達が一見科学と相反するようにも感じられる意識に関する研究をなぜはじめるのかについて、実際のインタビューなどを交えてまとめられている。

 脳科学者や、生物学者などの色々な分野の科学者がある時期から意識の研究に取り組みはじめることがままある。ノーベル賞を受賞しているような科学者にもそのパターンが散見されており、著者はなぜ今までの研究から意識の研究に方向転換するのか気になったようだ。

 結論から言うと理由は人それぞれだが、ある程度共通して言えることは分野を極めて行くとどこかで解けない問題が現れ、そこに対する解としての複雑系、意識の研究へと向かっていると感じることが多そうだ。複雑系とは簡単に言うと人体や世界経済、進化、免疫系など単一もしくは数えられる範囲の変数で説明がつかない系の事である。複雑系は数学的に解くことが困難であり、そこにまだ発見されていない理論が含まれていると考えるのは自然なことであると考えられる。

 意識研究は哲学的な要素や神秘的な要素と関係を持ちやすく、一般的な受けはあまり良くない。だが、ここにこれからの科学の発展における重要な要素が含まれている可能性は十分にある。昨今流行りの生成AIなども変数の数と組み合わせが多すぎて説明はつかず複雑系と言える。こういった複雑系に関する研究の今後の発展に期待。

今回の本:脳を開けても心はなかった 著 青野由利 築地書館 2024

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