劇団かびるんるん(漢字忘れた)『生足魅惑のマーメイド♪』と「ふぇーん!!」現象の因果関係
どうも、とったんです。
もとい、細川トシキです。
「細川トシキ」という、今はもういない魂を引っ張り出して語るのは、いなくなったものに対する冒涜では?
しょうがないでしょう、ふと思い出して書きたくなったのだから。
今回は久々に大学サークル時代のお話です。
例にもれず、後ろ向きな内容ですが、今までと比べてまだ明るい方だと思います。ぼく自身への実害がすくないからね。
それに『生足魅惑~』は学内での感想は非常に良かったので成功した部類の公演だったし。
ただ、『生足~』はぼくがあまり納得していなかった部分があったので、これのだいぶ後にやった『ちまつり、わっしょい!!』の評価がこれより低かった(※ぼく調べ)のはかなりショックだった。
それに、練習期間中はだいぶ修羅場っていた。
この期間は本当に演劇サークルに入ったことが間違ってたのではと思うくらいだった。
というわけで、今回は劇団かびるんるん夏公演『生足魅惑のマーメイド♪』をぼく視点で振り返っていこうと思う。いつものことだけどかなり主観が入っているし、ぼくの知りえない、より深い裏事情は語れないものとする。
・そもそも「かびるんるん」って何よ?
あれは一回生の夏前、他大学の演劇公演を見に行こうというT先輩の提案により、京都の大学演劇を見回っていた時のことである。
とある大学演劇を見終えたT先輩は突然こんなことを言い出した。
「われわれは劇団洗濯氣、『心を洗う演劇』を目標としている。でも、たまには『心を汚すような演劇』がしたい!」
と、大体そんなことを言った。
その当時、T先輩とぼくの同期数名は同志社大学の期間限定ユニット・「大腿ぺろでうす」の公演、『いちご☆光クラブ』を見終えた直後だった(ぼくはスケジュールが合わず行かなかった)。
一部の有識者にはお分かりかもしれないが(大体知らないと思うが)、
この『いちご☆』は『ライチ☆光クラブ』という作品のオマージュである。
『ライチ☆光クラブ』とは、鬱屈とした町に住む男子中学生数名が徒党を組んでフランケンシュタイン的なロボ「ライチ」を作り、美少女をさらってくるが、そこで男子中学生同士がそれぞれの争いやしがらみに巻き込まれる話である。原作では残虐、性的、耽美なシーンが多いので興味を持って原作を読む際は閲覧注意である。
『いちご☆』では原作プラス「アーバンギャルド(バンド)」をモチーフにしており独自の展開になった・・・らしい。(ちなみにアーバンギャルドのメンバー、松永天馬は同志社出身である)
それに影響を受けたT先輩は上記の発言をし、「心を汚す演劇」を作ることになったのである。
ただ、「洗濯氣」名義ではしのびねぇので、放置した洗濯機に繁殖するカビから連想して『アンパンマン』のかびるんるんに飛躍し、「劇団★黴々琉ンるン♪」を名乗ることにした。
・脚本会議と『生足魅惑のマーメイド♪』
というわけで、劇団★黴々琉ンるン♪の公演で行う脚本を決める会議を行った。提出したのはぼくと、例の雷神(過去記事参照)である。
ぼく自身、感情がぐちゃぐちゃになる演劇に興味があり、『ライチ☆光クラブ』の原作をブックオフで見つけ、早速読み、参考にしながら構想を練りだした。『ライチ☆』の原作にある、「カリスマのある別の奴にリーダーの座を奪われた男が自分のものにもどすために叛逆する」という部分に影響を受けたぼくは、その部分を膨らませた脚本を書き上げた。
このモチーフは大分形を変えて「ちまつり、わっしょい!!」に転用された。
とはいえ、その当時はラジオドラマで8分程度の脚本しか書いたことがなく、終始モノローグで進んでいく展開だったり、新しく入ってきた男女が組織に染まるにつれておかしくなった男が女を乱暴したような描写をいれたり、最終的に主人公が爆弾で全部を破壊する、といった支離滅裂な描写のせいなのか知らないが、結局ぼくの脚本は選ばれず、雷神の提案した『生足魅惑のマーメイド♪』が採用された。
『生足魅惑のマーメイド♪』は、脚を偏愛する大学生の女が理想的な脚の女を見つけ、殺してでも手に入れようとする話である。
「脚を偏愛する女」というモチーフはいいのだけど、登場人物が全員狂人なのはどうなんだろうか、とぼくは思っている。
主人公の友人の男(女が脚をコレクションしていることを知ってるかは不明)はサイレントのシーンで実は女子高生を監禁しているというくだりが出てくる(それいる?)
理想的な脚の女は主人公の狂信者だったり(今思えばここは別にいいが、当時は都合が良すぎると思っていた)
まあそれでも演劇のていをなしていないぼくの脚本よりははるかにましだったのかもしれない。
あと、この作品のキモ(気持ち悪いの意ではない。ある意味あってるけど)は視覚的なビジュアルのインパクトが強いことにある。
新聞紙を丸めてつなげて黒ビニテでぐるぐる巻きにして作った「脚」を客席上部につるしたり、壁の上の物が置けるスペースにリカちゃん人形系の脚だけ設置したり、カーテンで覆った壁からカーテンを外すといろいろ集めた人の「脚」の写真がびっちり貼ってあったりと小道具に力が入っていた。
この公演ではぼくは音響を担当しており、劇中のBGMを決めたり公演中のBGMをながしたりしていた。
BGMを決めるに当たってサイコホラーを意識し、主人公が一人で脚への偏愛を語るシーンでは穏やかさと不穏さを行ったり来たりするBGMをチョイスし、後半になるにつれてサスペンス感のあるBGMをチョイスした。
クライマックスの主人公が理想の脚を手に入れ狂気の笑いを浮かべるシーンでは原作者の要望でクラシック(たしか「月光」だったっけ)を入れるなどした。
まあ、見てる人からすればそんなBGMに注目してないだろうし、なんだったらこのBGMおかしくね?って思われてそうではある。
夏にピッタリ?なサイコホラーに視覚的なインパクトで割と好評を得た『生足』。
だが、冒頭に述べたように練習風景はまさに地獄への道のりやった…。
地獄からの使者、スパイダーマッ!!
・放送部の合宿帰りの悪夢
練習は長期休暇半ばの九月前くらいから行われていた。
練習の最初の方は、ぼくは放送研究部の親睦合宿に出かけていたので、(合宿中それなりの事件はあったものの)比較的ウキウキした余韻で大学に帰還した。
そこでぼくが目にしたのは、死んだ目をした同期たちだった。
当時上級生の先輩は授業やいろいろで忙しかった(それに先輩は一個上しかいなかった)ので、『生足』のメインキャスト・演出等はぼくたち一回生が中心だった。その代わり、小道具の製作は先輩方が中心となった。
脚本・原作を件の雷神氏、演出は後の演劇部部長(このときにはある程度引継ぎは完了していたはず)が担当していた。
キャストは、主人公の女が雷神氏、主人公の男友達が名前のほとんどが数字のやつ、主人公の狂信者がイカちゃん、主人公の今彼(実はゲスで彼女がいるのに狂信者の子にも手を出そうとしていたが逆に殺される役)が雷神氏の元カレである。
しれっと初出の子がいるので申し訳程度に補足するが、イカちゃん(芸名の最後の方からとった仮名)は高校演劇出身の子で演技に定評がある。部内でも学内でもかわいいともっぱらの評判だが、独特の空気感を持っているのでどう接するのが最適なのか掴みかねる部分があった。
というか、この時期のぼくは異性に対する接し方全般に困っていた(後に異性に対する恐怖にすり替わっていった)時期なので、余計にコミュニケーションがとれなかった印象である。
いままで言及がなかったのは個人間でこれといった事件がなかったので省略していただけである。
閑話休題。
合宿帰りのぼくを待っていたのは死んだ目をした同期だった。
訳を同期から聞いてみると、雷神が荒ぶっていらっしゃるらしい。
・雷神、乱心(ジョイマン並みの韻踏み)
キャストを決める際、雷神は自分が主人公の役をやることに乗り気でなかった。いくら雷神が畜生といえどこればっかりは理解できる。
自分で書いた脚本の主人公を自分が演じるのはなんか気持ち悪いというか居心地が悪くなる。
それに、ただでさえ主人公の性格は作者と同一視されやすいのに作者が演じたら余計に作者=主人公だと強調しているようなものでばつが悪い。
まあ、それでも部員が少ない劇団だとどうしてもキャストが回ってくるもので(身構えてるときには死神はやってこないけど)、雷神は主人公の脚好きの女を演じることになった。こういっちゃなんだけど、そのまんまだったしね。
で、この雷神、首絞め事変のときにも言及したが、演技以前に訛りの矯正が苦手である。
正直、演技に関してはまあ学生演劇だし…って部分もあるので、自分の中でどれだけ折り合いがつけられるかの問題になるけど、訛りはそういう訳にはいかない。そうでもないかもしれないけど。でも、お芝居として演劇として、演出の意図しない訛りはノイズでしかないと思う。
というわけで、セリフ読みの時点で訛りの指摘、演技の指摘等を行った。
その際雷神は稽古場を飛び出して(正確には稽古場の学生会館の一室に閉じこもり)、一定時間ふさぎ込んでしまい稽古が進まないことがぼくの合宿中にあったようだ。
正直、他の部員も辟易しており、指摘をするたび取り乱されると稽古にならないし、委縮してしまう。その割には雷神側も完璧主義的なところがあり、「問題点があるなら言ってよ!!」と逆切れする始末。
でもいざ指摘するとふさぎ込む、という悪循環っ・・・!
負のスパイラルっ・・・!
稽古場はさながらカイジのエスポワール号で星一つだけになった奴らの吹き溜まりのような空気感であった。
もしくは乾燥しきった火薬庫とでもいうべきか。
まさに一触即発☆禅ガール。
いや禅ガールってなんやねん。予測変換に流されるな。
そして、やはりというべきか事件は起こる。
・「ふぇーん!!」現象 発動篇
それは、ぼくが合宿から帰ってきてからちょうど一発目の稽古の時だったと記憶している。つまり、死んだ目をした同期を見て驚愕していた時である。
雷神という目に見える地雷原を踏み抜かねばならない空気に全員気が重くなっていた。
そして稽古が始まり、やはり雷神がミスる。
指摘する。ふさぎ込む。繰り返されていた現象の再現だった。
なるほど。居心地悪っ・・・!ぼくはそう思った。
そして、こちとら楽しい合宿を終えた後なのに、なぜ地獄に入れられねばならんのだと被害者意識が芽生えていた。
この時、怒りの限界を迎えた男がいた。スウジである。
スウジは、雷神が指摘のたびにいちいちカンシャクをおこして稽古を中断させることにブチギレた。
相当うっふん♡が溜まってたんだnow!・・・もとい鬱憤が溜まってたのか
「悲劇のヒロインぶってんじゃねーよ」
と、かなりきつい言葉を投げつけた。
いろいろ鈍いぼくですら「それは言っちゃまずいだろ!」と思ったくらいだから、その場にいた全員そう思ったに違いない。
ある男を除いて。
「悲劇のヒロイン、かぁ・・・」
雷神の元カレはぽつりとスウジの言葉を反芻した。
なんでこのタイミングで反芻するねん。
その場にいた全員が内心で突っ込んだことだろう。
天然って、恐ろしい。
ひょっとしたらこの時点で雷神と別れていたはずなので、ささやかな復讐だったのかもしれない。それでも!それでもなんでこのタイミングなんや!
傷心の雷神にとどめの塩が塗り込まれ、
決壊っ・・・!雷神ダムっ・・・!
例によって雷神は部屋に閉じこもり、一瞬の沈黙の後、
「ふぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」
と鳴いた。
誤植ではない。
鳴いたのだ。
原文ママである。
ロリショタ、かわいい系のキャラが「ふぇぇ・・・///」っていうのはネット・オタクスラングではおなじみだが、
現実世界に(しかもいい年した女が)「ふぇーん!」って泣くかね普通。
まあ、雷神はガールズバー勤務らしいので仕事での癖が私生活に出ちゃったのかもしれないけど。
場に張り詰めた緊張からの緩和、恐ろしく空気の読めない雷神の元カレの反芻、いい年した(わりとキツイ)女の「ふぇーん!」という間の抜けた鳴き声。これらの要素がぼくに笑いをもたらした。
不謹慎な笑い、というものがある。
お葬式の途中で誰かがおならをしてちょっと笑ってしまうみたいなやつである。
それに近しい現象が起こっていた。
実際に声に出して露骨に笑っていたかは覚えてないが(これを読んだ同部員はぜひ指摘してほしい)、そんなおかしみがあった。
これが、特級呪詛「ふぇーん!!」現象の全容である。
・・・しょうもな!!
ちなみに、このあと雷神とは「指摘を受けても不貞腐れない、閉じこもらない」という制約を結ぶことでなんとか公演を行うことが出来た。
雷神は特級過呪怨霊なのかもしれない。
・どうでもいい(けど一番学びのある)やつ
ちなみに、元となったフェーン現象は、
高校の地理で習う、気温が変化する現象の名前である。
似たような現象として、阪神タイガースの応援歌でも有名な六甲おろしがある。こちらは逆に冷たい風が山を越えて吹き込んでくる。
本題とはあんまり関係ないが、実りのない話を読んで時間の浪費だと思ってしまった人のために少しでも学びを提供しようと思い、掲載しておく。
更新頻度は低いですが、サポートしていただけると生活が少しばかり潤いますので、更新頻度も上がるでしょう。