[全文無料: 小さなお話 012] そうだ 京都、書こう。
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東京の世田谷という、竹藪のはびこる武蔵野の田舎でぼくは生まれ育った。
そのように語り始めると、昭和以前の文士の響きが感じられる気がして、佐藤春夫の「病める薔薇(そうび)」を初めて読んだときのことを思い出す。
東京暮らしに疲れた和歌山生まれの佐藤が、武蔵野台地の南のはしで過ごした薄明の日々を描いた、大正時代の小説である。
けれどもぼくが書く文章は、カート・ヴォネガットを下手に真似た誇張をそこかしこに散り嵌めた類いの、いささ