夜の木の下での感想を書いたバイヤー猫
更新者前書き
転職先がなかなか服装にうるさい予感がしており、先日Yシャツを新調いたしました。今まで襟ついていればとりあえずOKみたいな軽いノリだったので、スーツを毎回着ていくなどしたことがなく、若干面倒くさいなぁと思っております。
ただ最近服装に無頓着になりつつあり、楽な服装機能的な服装へとシフトチェンジして、おしゃれから遠のいている節が見られます。スーツを着ていくことにより、若干のスマートさエレガントさ少しずつ取り戻せたらなとも淡い期待。
サンダルTシャツから、革靴Yシャツに。この夏はカジュアルからダンディズムへ。ちなみに今日の服装はスライムTシャツです。
夜の木の下で 湯本香樹実 著
6篇の短篇集。以下それぞれのあらすじと感想。
『緑の洞窟』は幼い頃を回想する。幼き頃に住んでいた家にあった1本の大きなアオキの木。1本だと思われている木は実は2本の木が一つになったものでそれは彼の特別な秘密だった。彼には病弱な双子の弟ヒロオがいて、おそらくこのアオキの木に双子の自分たちを重ねていた。
病弱であるが故に大事に大事に両親や他人から愛情を受ける弟に抱く感情はきっと純粋な好意だけではない。幼き頃に二人で共有した秘密と約束を思い出したときにそこにいるのは2本が1本になったアオキの木だった。
『焼却炉』は女学校時代を回想する話。ミッション系女学校という閉鎖的且つ潔癖な空間を、トイレ掃除での生理用品を焼却する当番で綴られるのがなんとも生々しい。
自分の希望通りに将来を決められなかった友人の事を思うとき、最後に出てくる本の一文がとても悲しい。ある意味では夢を持ってい女学生の彼女はそこで一度死を迎えたとも言える。
『わたしのサドル』は突如お母さんのお下がりの自転車のサドルが喋りだす話。わたしことミキちゃんに語りかけるサドルは良き理解者となる。サドルとの別れは思春期との別れということなのだと思う。
『リターン・マッチ』は元虐める側といじめられっ子の話。いじめられっ子の自分の曲げられない一部分を貫く生き方に徐々に好感を持った。
それは過去を語る元虐める側も同じでそこには友情が芽生える。友情の果てに起こったある事件。具体的なことは明言されていないけれど、そこにも死の香りが漂っている。
『マジック・フルート』は音楽教室の先生の姉で精神が病んでいると思われる網枝さんと、幼かった頃にピアノを習いに行っていた僕との不思議な交流の話。
蒐集家の祖父の家に預けられた僕は、借金のカタで嫁がされた祖母の幽霊を見る。祖父と祖母の関係性も気になるところではあったけれど、網枝さんの過去を最後まで読み解くことができなかった。作中に出てくる「幸いあれ求める人よ」という曲を聞いてみたくなった。
『夜の木の下で』表題作であるこの作品は、交通事故で意識不明の状態が続く弟との日々を回想する。生死を彷徨う弟が事故に合う夜に何をして何を見て、何を思っていたのか追想する。やがてそれは虐げられていた子供の頃の記憶まで呼び覚ます。
救いを求められる場所が、救われる場所ではなかったり、救えなかった命だったりと子供が抱えるには重すぎる記憶を蘇らせて何に向き合う必要があるんだろうと読んでいて少し苦しかった。何のため?と意味を知りたがるのが良くないところ。
雰囲気たっぷりな小説で、感想書きたいと思うのに難しくて一週間以上たってからの感想文。6篇全部回想で、狭い世界だと思っていたのは過去だった。過去に囚われて過去に特別な思いを抱き過ぎている人たちの話だというのに今更気づいた。きっとこの本は夜の静けさと、漂う死の香りを受け入れたら良いだけ。
評価
バイヤー猫に評価を聞いてみたところ
評価は★★★★☆
だそうです。
純文学テイストの短編集でしたね。
更新者後書き
短編集って感想難しいですよね。今回6編だったので単純に6つ感想を思い浮かべる必要が出てきます。昔書いていたときは全体像を書くように意識をしていたのですが、テーマだけが統一となると何とも書くのが難しい。
短編の中で一番よかったものを紹介するっていうのでも、良いのかもしれないですね。
短編のいいところは、本当に小さなところに着目できるところだと思います。『焼却炉』は多分長編じゃ難しいテーマなのかなと。象徴を題名にしたタイプの短編だと思うのですが、その象徴を掘り下げる行為が狭ければ狭いほど長編って難しいのかなって。
ただもう大ベテランとかになると、いともの簡単ななのかなと思ったり。風呂敷の広げ方がどんどんとうまくなったら、小説書くのもっと楽しいんだろうなぁ。