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小説「千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ」

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2020年11月の記事一覧

千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (23) 終

千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (23) 終

 夢のなかで聞いてた。
「海面が上昇する」
「ほう」
「隕石かな」
「かな、と聞かれても。さあ」
「隕石が落ちてきて、津波か。津波だと、一回ひいたら、海面はまた落ち着くのか。日本とか沈没するかもしれないけど。やっぱり、温暖化あたりか。じゃあ、太陽が異常に活発化して、気温があがる。隕石も落ちてくる」
「いいんじゃない」
「隕石が落ちてくる、それをきっかけに、急激なものだろうね。三週間とか、せいぜい、

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千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (22)

千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (22)

 わたしのパート、トランペットが泊まってたのは、合唱部がつかってるほうの第二音楽室で、倉庫のかびくさいふとんをしいて、扇風機がまわってた、やけに蚊が多かった。先輩たちが学校を探検してた、そのあいだわたしは、ひとりきりで、まじめに楽譜を見て練習の反省をしてた。画用紙を切りぬいた大地賛頌の歌詞と楽譜、みどりは森で、鳥は青い、赤は秋のイメージ、白い雪、全体的に水色で、宇宙から見た地球で、地球みたいな壁に

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千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (21)

千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (21)

 風に流されないように、がんばって話してたんだけど、微妙なニュアンス、言いたくないことを言いたくなさそうに、それでも、言う、って感じとか、ため息とか、目が泳ぐだろうし、あと、笑ってごまかすのも、魔女の高笑いじゃなくて、チェシャ猫のくすくす笑いがいい、そういうのが、全部、つかえない。残念ながら、人生の話なんて、こまかい、暗くなりがちな、でも色彩ゆたかな、誰が話したってそれなりにおもしろいに決まってる

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千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (20)

千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (20)

 歩いて三十分くらいの道が、自転車で五分くらいだった。なのに、四十分かけた。どういうことかと思うでしょ。
 東京と埼玉の国境あたり、ふりむけば埼玉で、しみじみ、空が広かった。あんな、宇宙みたいな空の下、でも、道は長いのがずっとつづいてるだけで、折れたり、まがったり、かさなったりしないで、退屈で、奈津美は自転車のうしろで、
「うける」
 って。
 たのしくなってきたらしい。
 線の上をすごい速さで走

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千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (19)

千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (19)

 いや、目は、あの、まんまるな目だけど、

  どじょうが 三匹 あったとさ
  おせんべ 二枚 あったとさ
  おもちを ふたつ かさねたら
  雨 ざあざあ ふってきて
  あられが ぽつぽつ ふってきて
  あっというまに たこにゅうどう

 なんだ。
 おでこに、しわ、三本。
「なんだよ」
 って聞いてやらなかったから、夢になって、あんなふうに巨人に変身してしまったんだろうな。
 ベッドは

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千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (18)

千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (18)

 ぽっかり、穴があくくらい。
 あいつは、無神経そうで、気が強そうで、馬鹿のふりをしてるけど、本当は、ひとりも友達がいない。ひとりでトイレに行くのもさみしそうで。顔を、目を見ずに、いつも胸をながめおろしてた。胸に穴があくのは、かなしいことで、風が吹いたら、内側から寒くなる。はじめて空気にさらされた、その心臓はハートのかたちで、ショッキングピンクで、恋でもしているみたいに、いそがしく鼓動をくりかえし

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