マガジンのカバー画像

小説「千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ」

32
運営しているクリエイター

2019年8月の記事一覧

不死王曲(9) 未完

不死王曲(9) 未完

私はその鑑札を投げ捨てた。風呂の真四角の右肩あたりで波紋を起こし、それが〈女〉に響いて向こうに首を傾けた。右耳の付根から鎖骨、腋にかけて刺青がある。下層の小娘らしく〈黒翼双蛇畜神伝令杖〉の意匠だ。接吻する双蛇それぞれの尻尾に〈茅咲許〉、〈輜梨〉(男の名前らしい)と彫っている。恤榎庭〈毛穴カラ咲ク赤イ蒟蒻〉における穎瑠傳の情夫は、〈陂磨得ハ巨簾ノ格式アル卜医ノ家ニ生マレタ。父ハ南巨簾杼莫ノ坐經列赴大

もっとみる