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2019年6月の記事一覧

詩 301

詩 301

  運命塔

家路 途上の 粉砂糖
リンゴの木の枝 金 銀の
螺旋 はびこる あの 地帯
水蜜桃が 宙に舞う

餌食 盲目 かわいそう
立入禁止 孵化 前夜
インフルエンザ パラノイア
こわくはなくて 大切な

慈愛にみちた この 時間
照らす 閃光 黒胡椒
塗りたくる 赤 サクラのつぼみ

刻印された物質は
プラスチックか 金属で
溶けて ひとつの正三角錐

詩 300

詩 300

  何色

雲から 衛星 わたる 色
風 ネコヤナギ 真珠色
音は 光は 共鳴し
空中ブランコ えがく 線

あわい よろこび 生贄に
至福の花粉 ひとにぎり
どこからともなく芳香は
魔法のように ほとばしる

早春 蒼白 太陽が
憩う ひととき アメジスト
赤煉瓦の塀 存在 開花

そびえる 虚栄の針槐
坂道 うつろな昼下がり
ハミングバード 独白 引き裂く

詩 299

詩 299

  白黒凹凸

芽生えたばかりの空想が
たわむれ 水滴 不透明
バニラ シナモン 火にかけて
あなたの錯覚 多幸感

コート 着こんで トケイソウ
見つめて 残響 みちるとき
稀少種 はびこる 聖域に
かすかな ハミング それは なに

腐食を無化するためのもの
エーデルワイス 抱きかかえ
版画 きざまれ 目を閉じ やすらか

いつのまにか と 知らん顔
こんなにきれいなはずはない
ジグソーパズル

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詩 298

詩 298

  夢幻複数形

黒いマントを はためかせ
別れを告げる キンポウゲ
光 まだらな 砂の上
トロンプルイユ 足をとめ

ふたつのつばさはつくりもの
雨ふりタクシー ここに また
ひとつのかたち ひざまずく
リンデンバウム 月光樹

三角帽子 悪魔の巣
まどろみながら いさましく
やせた両手で守った デザート

あなたは 静物 低い声
おびえて 気になる 感光度
小春日和に 影は しなやか

詩 297

詩 297

  変声期キャンディー

きらめく水さし 背後には
返事もせずに 立つ あなた
わずかな呼吸で よかった と
銀無垢グラスを かたむけて

服を脱いだら もう つかれ
やさしく 抱いて もらえない
まるで 花の輪 ときはなつ
光 やわらか 奥 深く

記憶の外に失われ
終止符に似たプラナリア
表情のない 嘘の現象

憂鬱そうに ただよって
たまに アンテナ つかまって
歪曲の危機 また こまらせる

詩 296

詩 296

 早起きの日に

あなたはためらう 傘のなか
暗い光の焦点は
夜明けの無人の交差点
遠い あるもの 織りあげて

ほくろはひとつ 眉も濃く
聞いてみたけど 返事 なく
知らないうちに浄化され
温室 芽吹く もう 夢中

曲線 連鎖 無為の罪
思い出ばかりが かがやいて
行列 弔鐘 あまいかおりに

どんな欲望 かきたてて
あなたはとまどう 窓が割れ
早起きの日に スプーン つめたい

詩 295

詩 295

  どこまでどうして

ひび割れ長靴 横たわる
植木 ずたずた むすびめは
最後の痕跡 影法師
わたしのすべてをなぐさめた

かけがえのない輪郭は
夕凪 背負い 白い道
つづく どこまで 不公平
ただの笑顔におびえても

けっして 長くは かからない
ふるえる 虚像 吠える 風
振り返るたび 雨 雨 ふれ ふれ

いつも元気 と 記録され
どうして眠れる 紙吹雪
疎外の感覚 脈 うつ 虹彩