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良い感じの読書生活ゲーム(1)

 「自分を幸せにするには、何をすると良いだろうか。」

 一つの提案として「良い感じの読書生活ゲーム」を紹介する。単なる読書や読書習慣ではなく、幸せを実装するためのゲーミフィケーション。個人的に10年以上あれこれ試していたものを「読書生活ゲーム」として紹介する。「ウェルビーイング」な言い方が微妙なので「良い感じ」と言ってみた。

3つのステージ

 読書生活ゲームには、(1)基本ステージ、(2)実践ステージ、(3)応用ステージという3つのステージがある。なお、いずれのステージでも、あなた自身の創意工夫があなたの幸福度を高める。

1. 基本ステージ
あなたが自己肯定感を持ち、進捗と集中を実感することで幸せを得るゲーム。シンプルなルール。ポジティブ心理学を参照している。

2. 実践ステージ
読書によって「快楽とやりがい」の両方を獲得して幸せを得るゲーム。基本ステージで使う読書リストに工夫を加える。幸福学でいうエピクロス派とストア派の考えをバランス良く追加していく。

3. 応用ステージ
幸福学やウェルビーイングで言われている要素を読書生活に加えて幸せを得るゲーム。小難しい話が出てくるが、習得すると納得感・満足感は高い。

基本ステージ

1. 基本ステージのルール

 最初の基本ステージは、あなたが自己肯定感を持ち、進捗と集中を実感することで幸せになる事を目指す。基本ステージだけあって、ルールはシンプル。

  • ルール1:読書リストを用意する。期間内の目標冊数を決めて、読む本をリストアップする。期間は1週間から1ヶ月程度を推奨。

  • ルール2:読書結果を記録する。読み終えた本を記録する(計画していなかった本も読んだら記録する)。

  • ルール3:振り返りでゲームを評価する。読書記録から今回得たポジティブな感想を記録し、次の読書リストを用意する。

 「ルール1の計画」と「ルール2の実績」を踏まえて「ルール3の評価」であなたが得たポジティブな感想の量と質が、このゲームで得た幸せとなる。

2. 基本ステージの例

基本ステージの例として、以下のような流れを紹介する。

1. 1週間後の予定として、1時間の振り返り時間を計画する。
スマホのメモアプリに計画を書く。1週間で2冊を目標に設定。前から読もうと思っていた文庫本2冊をメモにリストアップする。早速購入。2冊で1,200円程度と、ちょっと贅沢なランチと同じくらい。

2. 通勤日は通勤時間に少しずつ本を読む。
気になった部分は帰宅後に続きを読む。リモートワークの日は、仕事前と仕事後に、気持ちの切替えとして1時間ほど読書した。加えて、土曜の夕方が空いていたので、まとまった時間を使って一気に読了。

3. メモを見ながら振り返り。
読書生活ゲームがなかったら無駄にスマホゲームとかで暇つぶししていたと思い至る。無駄と思う時間の過ごし方がなくなった点がプラスと読書記録の振り返り欄に書き込む。贅沢なランチよりコスパもタイパも良いと思えた。今週のゲーム結果を「成功」と評して、簡単な感想をメモに書き加える。来週の同じ曜日に振り返り時間を計画し、別のメモに次の2冊をリストアップした。

3. 基本ステージのクリア条件

 このゲームのクリア条件は「振り返りでいかに多くの幸せに気づいて記録できたか」にある。別に誰もあなたの記録を見て論評などはしない。あなた自身が、自分に満足するかどうかがこのゲームの全て。ゲームの結末は、振り返り時に以下のいずれかになるだろう。振り返り時に、評価結果と簡単な感想を書き込むと良い。書くだけでポジティブになれる。

  1. 失敗。目標冊数に届かず、大した満足度も得られなかった。

  2. 学習。目標冊数に届かなかったが、次につながる学びがあった。

  3. 達成。目標冊数をクリアし、学びや気付きを得た。

  4. 成功。このゲームを通じて幸福度の上昇を実感できた。

 良くあるパターンとしては、基本ステージで始めは「失敗」したり成功途中の「学習」に留まっていたが、コツがつかめて「成功」するようになるというもの。その後、「成功」が続いて幸福度が上がっていたあとで、ややマンネリ化して「達成」はするものの幸福度の上昇は感じなくなってくる場合がある。その時は、基本ステージは卒業して、次の実践ステージに移ると良い。また、難しい本を読破したい場合や、読む本の選び方にこだわりを持ち始める場合も出てくる。このような場合も、次の実践ステージに移ると良い。

 ちなみに、別に急いで実践ステージに行く必要はない。あなたが読書を通じて幸せを感じられる枠組みならば、その枠組みにいる方が良い。あくまであなた自身のペースで、あなた自身が満足する方法で読書生活を楽しむのが一番。

4. 基本ステージの攻略法

 基本ステージでポジティブな感想を多く得るには、攻略法としてポジティブ心理学を使うと良い。ポジティブ心理学に関して多数書籍が発行されているが、ここではチクセントミハイの『フロー体験入門』をお勧めする。でも、本を読まなくて良いように、基本ステージ攻略の定石を後述する。

  • 攻略1:質より量を狙う。硬くとらえず「何でもアリ」と思って、思わず読んでしまうものをリストアップする。難しい本は避ける。

  • 攻略2:期間を短めに設定し、振り返りの日時を決めておく。基本ステージは1週間から1ヶ月程度で区切るのがオススメ。

  • 攻略3:ちょっとずつでも読書する。雑でも良いので1カ所に記録する。スマホなどを使っていつでもすぐに記録する。

 このゲームは「本を読むこと」ではなく「幸せを感じること」が目的なので、実のところ「本かどうか」はどうでも良い(少なくとも基本ステージでは)。そのため、攻略1の通り、「読もうと思う本」を硬くとらえず「文字の集まりなら何でもアリ」と思って、思わず読んでしまうものを並べるのが良い。本ならば読みやすいものを、本の形をしていないものなら「本1冊程度の内容」を自分で定め、これを計画して達成することで自己肯定感を得る。

 基本ステージ攻略に戦略性はあまりなく、攻略2の通り、期間を短めに設定すると良い。振り返りを行う日時を決めて、それまでの期間で何冊読めるかを定めると予定を組みやすい。目標冊数は、1週間なら2冊程度、1ヶ月なら8冊程度が目安(1日1時間ちょっとで週8時間くらいの時間)。もちろん、この半分程度でも全く問題ない。読む本のリストについて、基本ステージで難しい本を並べても達成しない。とにかく読みやすいものを挙げること。以下に、読書習慣の度合いに応じた1週間の読書リストの例を挙げる。

<日頃読書しない人の2冊>

  • TwitterなどのSNSの文字部分を4時間読んだら1冊とカウント(ただし、4時間以上読んでも1冊以上のカウントはしない)

  • ちょっと薄めの、気になった雑誌・週刊誌などを1冊

<読書はしないが新聞は読む人の2冊>

  • 新聞を週に4時間程度読んだら1冊とカウント(1日30分ちょっと掛けて1週間新聞を読めばこのくらい。ただし、4時間以上かけて新聞を読んでも1冊以上のカウントはしない)

  • 新聞を読んで気になった事項に関する、読みやすそうな新書を1冊

<たまに読書する人の2冊>

  • ちょっと薄めの、気になった雑誌やムック本などを1冊

  • 文庫本の小説やエッセイなどを1冊

<日頃から読書する人の2冊>

  • 読もうと思っていた文庫本や新書本を2冊

5. 基本ステージで幸せを感じる理由

 なぜ、事前にリストアップして本を読むだけで幸福度が上がるのかと言えば、それは以下の要素がこの行為に詰まっているから。そのため、これらの要素を引き出すような読書を心がけると幸福度が上がり、ゲームに「成功」したと実感できる。

  • 「計画通りに進めることが出来た」という達成感を得ること。これが自己肯定感につながる。

  • 人は集中すると満足感を得る。有酸素運動みたいなもので、15分~30分以上集中すると満足度が上がってくる(集中の法則)。

  • 「1冊読んだ」という事実が、進捗を実感させる。進捗を実感することが、達成感や満足感につながる(進捗の法則)。

 成功するために、敷居を低くしてきっかけを増やすこと。人は、そこそこの意欲があって、十分にハードルの低い内容に対して、きっかけがあると行動に移す(B=MAPの法則)。きっかけは「通勤時」や「〇〇が終わったあと」というように、自分ルールを設定するとうまくいく。そして、攻略3の通り、始めのうちは、本を開くだけでも、1文を読むだけでも良いので、とにかく敷居を低くして、ちょっとずつでも読書すると良い。4分でも読書できれば、その後に30分程度読書することは容易だったりする。なお、当初予定とは異なる本を読んだとしても、それで満足度が高いなら問題ない。

 そして、読んだ感想を、簡単にでも、その場の思いつきでも、雑でも良いので1カ所に記録すること。これが振り返りの際に参考になる。スマホなどを使っていつでもすぐに記録するのがお勧め。

 読書は、気軽にきっかけを作り、「ちょっと」のつもりでも集中できる行為で、途中の進捗を測りやすい手段の一つ。読みやすい本を選ぶことで、1週間で8時間~10時間程度あれば2冊分を読み終えることが出来る(それくらい読みやすい本を選ぶのがコツ)。事前の読書リストを用意して、事後の読書記録を付けて振り返るだけで、満足感や幸福度は上がる。

基本ステージはここまで。次は実戦ステージを紹介する(以下のリンクを参照)。


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