良い感じの読書生活ゲーム(2)
あなたが自分で幸せになるための一手法として、「良い感じの読書生活ゲーム」を紹介する。このゲームは3つのステージがあり、前回(下記のリンク)は、3ステージあるということと、最初の基本ステージを紹介した。
今回は2つ目の実践ステージを紹介する。実戦ステージの紹介は長くなったので前半と後半に分ける。
実践ステージは基本ステージと何が違うか
1つ目の基本ステージは「自己肯定感を持ち、進捗と集中を実感する」手段として読書を用いた。だから本の内容よりも、没頭できるものを重視した。しかし2つ目の実践ステージでは、「いやー、読書したぁ!」という行為のみならず、読んだ内容からも幸福を得ようとする。そのため「何をどう読むか」を考える必要が出てくる。
この時、1冊の本を読んで、それだけで常に幸福を得ると言うのは難しい。単発の読書ではなく、複数の読書の組合せで幸福を勝ち取っていく。いわば、ゲームの内容が単試合からリーグ戦に変化する。
幸福の定義の一つに「快楽とやりがいの両立」というものがある。心安らかな状態にありながら、やりがいのある取り組みを行うことで幸福度を高めようというもの。これを複数の読書を組み合わせることで実現する。
実戦ステージ(前編)
1. 実践ステージのルール
実践ステージは、基本ステージで使用した読書リストに工夫を加えていく。読書リストに、エピクロス派とストア派の考えをバランス良く取り入れることでリーグ戦を構築する。実践ステージのルールは以下の通り。
ルール1:骨子は、基本ステージのルールと同じ。読書リストをつくり、読書記録を付けて、定期的に振り返りを行う。
ルール2:「次に読みたい本」のリストを用意する。読書リストを2~4のカテゴリに分けて「次に読みたい本」から読書リストを選書する。カテゴリ分けは各自の好みに合わせて用意する(後述の攻略を参照)。
ルール3:振り返りを二段階で行う。一段目は基本ステージで行っていた短期間の振り返り(単試合の振り返り)。これに、カテゴリを通した振り返り(リーグ戦の振り返り)を追加する。短期間は1ヶ月程度で、カテゴリを通した振り返りは四半期・半期・1年といった長めの期間を推奨。
2. 実践ステージの実施例
実践ステージの例として、例として、以下のような流れを紹介する。
基本ステージで使っていた「読書リスト」のフォーマットを見直した。
週単位から月単位に変更した。
読書リストに「次に読みたい本」の欄を追加した。
読書リストにカテゴリを追加した。「ビジネス・自己啓発」と「小説・そのほか」の2つのカテゴリに分けた。
読書目標を月に8冊と設定した。目標8冊の内訳として、「ビジネス・自己啓発」としてビジネス本4冊、「小説・そのほか」として文庫小説とエッセイ集を4冊をリストアップした。
短期の振り返りは月ごとに設定し、次回の振り返りを今月の最終週末に計画した。
基本ステージの頃と同じように本を読んでいく。その日読んだ部分の簡単な感想を記録しておく。読書しない日もあったが、まとまった時間は本を読むようにした。
1ヶ月が経ち、振り返りの日がやってきた。
実は目標冊数をクリアできなかった。ビジネス本の1冊が手強くて、予想以上に読了に時間が掛かったのが主な要因。
振り返りを通じて、小説・エッセイの4冊に較べて、ビジネス本4冊が自分には「重すぎる」と実感。このあたりの感想を振り返りの記録に付ける。この月のゲーム結果は「学習」と評価した。
振り返り結果を受けて、来月の読書リストは、月8冊ペースはそのままで、「ビジネス・自己啓発」としてビジネス本を2冊に減らし、「小説・そのほか」として文庫2冊と雑誌4冊をリストアップした。
上記を半年繰り返した。6ヶ月目の振り返りで、カテゴリごとに半年間読んだ本を振り返ってみる。
「ビジネス・自己啓発」は6ヶ月で10冊読了。自己啓発的なものとマーケティング的なもの、それとエクセルの使い方みたいな本が中心だった。マーケティングを学べたのは良かった。次はリーダーシップと統計学に関する本に挑戦しようと思った。
「小説・そのほか」の本は6ヶ月で28冊ほど読んだ。小説が半分と、エッセイ・雑誌が半分。
半年間の目標冊数48冊には達成しなかったが、月8冊という目標を掲げなければここまで読まなかっただろうとも思う。継続して読む自信が付いたので、次はシリーズものに挑戦しようと思い、振り返りに記録する。
3. 実践ステージのクリア条件
クリア条件は基本ステージでも実践ステージでも変わらない。ただ、実践ステージの方がカテゴリが増えて求める水準が高くなっている。このゲームのクリア条件は「振り返りで幸せを実感して記録することで満足できたか」どうかである。基本ステージでも述べたが、別に誰もあなたの記録を見て論評などはしない。あなた自身が、自分に満足するかどうかがこのゲームの全てと言える。
読書生活ゲームの結果は、このゲームを行わなかったであろう自分との比較が鍵を握る。想定されるゲームの結末は以下の通り。基本ステージと大きくは変わらない。
失敗。全てのカテゴリで満足が得られなかった。
学習。一部のカテゴリには満足いかないが、次につながる学びがあった。
達成。全てのカテゴリで目標をクリアし、学びや気付きを得た。
成功。このゲームを通じて幸福度の上昇を実感できた。
実践ステージが基本ステージと異なる点として、振り返りの内容が複雑になる上に、成功に向けたハードルを、いくらでも高くすることが出来る点が挙げられる。高いハードルをクリアすることで基本ステージにはなかった面白さを味わうことが出来る。
良くあるパターンも基本ステージと似たようなものとなる。始めは「失敗」したり成功途中の「学習」に留まっていたが、コツがつかめて「成功」するようになるというもの。そして「成功」が続いて幸福度が上がっていたあとで、ややマンネリ化して「達成」はするものの幸福度の上昇は感じなくなってくる場合がある。実践ステージでも物足りなくなったら、その時は、次の応用ステージに移ると良い。
なお、応用ステージの技法は実践ステージでも使えるものが多い。実践ステージでの読書生活ゲームに慣れてきたら、応用ステージを参照してみて、ちょっとずつ取り入れると読書生活ゲームの満足度を高めることができる。あなたにはあなたに適した読書生活がある。あなたが読書を通じて幸せを感じられる枠組みを工夫してほしい。あくまであなた自身のペースで、あなた自身が満足する方法で読書生活を楽しむのが一番だと考える。
4. 実践ステージの攻略(1)自分に合ったカテゴリ設定
実践ステージでは、読みたい本のリストを豊かにしつつ、読書リストのカテゴリをどのように作るかが攻略の鍵となる。自分が得たい内容にカテゴリを分けて読みたい本を並べることで、読んだ本が血肉となっていく。
ただし、始めから「完璧な読書計画」を立てようとしないこと。完璧な計画など立てようがない。そもそも読む前に、その本が「当たり」かどうかは分からない(定評ある本でも、あなたにピッタリかどうかは分からない)。読書リストのカテゴリ分けのオススメは、あなたがどのようなタイプなのかで変わってくる。
理論的な軍師タイプ
感情豊かで直感を信じる猪突猛進タイプ
理論と実践のバランスを重視する職人タイプ
以下、タイプごとにオススメのカテゴリ分けを紹介する。
(1) 理論的な軍師タイプ
このタイプのカテゴリ分けは、戦略性を持った分類が参考になる。まさにドンピシャの本として、三谷宏治さんの『戦略読書』を勧めたい。この本では、カテゴリを2軸で整理して2×2の4つに分けて紹介している。この区分けが実に論理的で、きれいにMECEになっている。区分けとしては、「ビジネス系・基礎」、「ビジネス系・応用」、「非ビジネス系・基礎」、「非ビジネス系・新奇もの」の4つに分けている。この本では、キャリア時期に応じた本の配分なども丁寧に紹介しており、理論家にはぴったりの水先案内書と言える。
(2)感情豊かで直感を信じる猪突猛進タイプ
このタイプのカテゴリ分けに理屈はいらない。直感で決めやすいように「面白そうで今すぐ読みたい」か「手強そうだけどいつか読みたい」の2つで良い。実のところ、読書は「量が質を生む」。あれこれ言い訳するより、とにかく読んでいく方が効果的だったりする。哲学的に言えば「面白そうで今すぐ読みたい」の読書リストはエピクロス派の思考を取り入れ、「手強そうだけどいつか読みたい」はストア派の思考でリストを作ると良いだろう。しかし、そんなこと知らなくても、とにかく読めば良い。
(3)理論と実践のバランスを重視する職人タイプ
このタイプのカテゴリ分けは「自分の専門性の中心から周辺に広がる」3つのカテゴリが馴染むだろう。中心・幹の部分に、あなたが極めたい「専門性」領域のカテゴリがある。そしてその周りに、あなたの専門性を支える「教養」領域のカテゴリがある。さらにその外に、あなたの専門性とは関わらないが、あなたの心を豊かにする「充足」領域のカテゴリが広がる構図。このリストを充実させるには、学習理論を参考にすると相性が良い。しかし、学習理論を知らなくても「やるべきこと」や「やりたいこと」を元に読書リストを作っていけば、おのずと近いものが出来るだろう。
上記のように、自分の思考やタイプに合ったカテゴリ分けが出来ると、読書リストの魅力が増す。読書が進まない場合、原因のひとつとして「読書リストが魅力的ではない」可能性がある。読みたくて仕方がない本が連なっていれば、他の誘惑に打ち勝って読書するようになる。読んで、振り返りを繰り返す中で、あなたに合ったの読書リストが自分で作れるようになっていくと、このゲームに「成功」する確率が上がっていく。
実践ステージの奥は深い。他にも攻略法はあり、それは別のエントリーに分けて記載する。(下記の(3)につづく)