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🌈明日に架ける橋 うたものがたり

歌にまつわる思い出から紡いだ
ストーリーが毎日新聞夕刊で
一週間の連載記事になっていたのは
1994年のことでした。

あの頃、わたしは
浅草の商家の嫁として
二児の男の子の母として
目の回る忙しい日々を
送っていました。

自分の時間……
なんてものは
少しもありませんでした。

そんな中で
毎日、楽しみにしていた連載に
投稿してみようと思いついたのは
新緑が美しい頃だったと記憶しています。


その投稿が社会部長の目に留まり、
女性記者磯崎由美さんの取材を
数回受けました。
一つひとつの記憶が
掘り起こされ、
最初は恥ずかしいと思ったことも
自己開示していくうちに
身軽になっていくような
そんな気がしました。





1994613日〜17日、
毎日新聞夕刊に私の物語が
連載されました。

1994613日 毎日新聞夕刊より



それまで見ていた世界が突然、
カラーになったような
華やいだ気持ちになった16歳。

女性デュオシモンズ
「ひと粒の涙」
初恋を知った1972年の夏。

でも、秋の終わりに母は
くも膜下出血で逝ってしまいました。

あまりに悲しみが深いと、
涙さえ出ないということを知りました。
虚しい色のない世界が私を包んでいきました。

葬儀が終わり、日常が戻り、
私の心は沈んでいきました。


1994614日 毎日新聞夕刊より


ある日、ポストに青い封筒を見つけました。
見慣れた字、一番待っていた、
彼からの手紙でした。
急いで封を開けて、読みました。
慰めの言葉と、一遍の詩。


サイモン&ガーファンクル、
「明日にかける橋」 の詩でした。

『君が疲れ果て 途方に暮れて
涙を浮かべていたら
僕がその涙を拭ってあげる
僕はいつも君のそばにいるから

辛いとき 友達も見つからないとき
苦難に満ちた行く手にかかる橋となって
僕が身を投げ出そう
僕が君の代わりになろう

暗闇の中で 苦しみに満ちているとき
苦難に満ちた行く手にかかる橋となって
僕が身を投げ出そう

銀色の少女よ
さあ、帆をあげて進むのだ
君が輝く時がきた
君の夢は目の前に広がっている
君の夢がどんなに輝かしいものか見てごらん

友達が必要なら 僕がすぐ後ろにいる
苦難に満ちた行く手にかかる橋となって
僕が身を投げ出そう』

それを読みながら、
止まっていた涙が溢れてきました。

堰を切ったような
涙、
嗚咽、
慟哭のあと、
ふっと光が射しました。

大丈夫、一人ぽっちではないから。

数年後に失恋しても、
この時の思いは忘れることは
決してありませんでした。

連載の内容は  
父にとっては
あまり愉快なものでは
なかったはずでしたが、
一応連絡しました。

そして、
一度も一緒に
暮らしたこともなかった父も
201510月に亡くなりました。


遺品を整理していたら、
新聞の切り抜きをみつけました。
私の「うたものがたり」の記事。

色の変わった切り抜き、
そこには父の字で
613日と連載が始まった日付が
書いてありました。
父は大切にとっておいてくれたのです。


1994615日 毎日新聞夕刊より



父は全く私に関わらないように
生きていました。
でも、父はやっぱり私を大切に
思っていてくれていたのでしょう。
初めて、私は父を身近に感じ、
父を愛していたのだと
気付きました。

母との物語も
父との物語も
初恋の彼との物語も
終わってしまうように思えましたが
人生の物語は続きました。

大学時代に知り合って
結婚した夫との間にも
いつしか川が流れていました。



母の遺した建物を
大規模修繕して
立ち上げたシェアハウス。


1994616日 毎日新聞夕刊より


1994617日 毎日新聞夕刊より

そして、
新しい物語が始まりました。

そう、
橋を架けてもらった私も
明日への橋を架けてきました。

今も、架けているし、
きっとこれからも
架けていくのでしょう。

この文章を読んでくださったあなたも
誰かに橋を架けてもらったはず。

そして、
今、橋を架けているかもしれないし、
きっと、これからも、
橋を架けていくのでしょう。
大切な誰かのために

サイモン&ガーファンクル
明日に架ける橋
原題: Bridge over Troubled Water



ポール・サイモン、アーサー・ガーファンクルは
ともに東欧のユダヤ人がNYに移民した家系。
この歌の題名と主題はゴスペル・シンガーのクロード・ジーターが作った
「水の中を通る時も、わたしはあなたと共にいる」(イザヤ書432節)
という一節がインスピレーションを与えたそうです。

#明日に架ける橋
Bridge over Troubled Water
#サイモン &ガーファンクル
#毎日新聞
















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