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X-Pro3と安芸の小京都 広島県竹原市

昔ながらの古い街並みが見たい。
昨年京都に行ってから改めて日本の家屋や建物というのは良いなぁと感じていた私は、時々ふとこう思うようになっていた。お寺や神社を見に行くのもいいが、街並みを歩くというのがしたい。宮島もそれに近いが、どうせなら人があまりいない所で静かに過ごしたい。

そう思って今年の4月、暖かくなって来た頃に広島県の竹原市に足を運んだ。竹原市には「町並み保存地区」という場所があり、ここは一つの街区がそのまま伝統的な建築で構成されている。ほとんどが江戸時代中期から明治時代に建てられた物というから驚きだ。どんな景色が待っているのか、楽しみにしながら竹原行きのバスに乗り込む。

バスに揺られること1時間と少し。竹原に到着し、とりあえず大体の方角だけ確かめて後は適当に歩いてみる。商店街の中を歩いたが、平日なのもあってか休みのお店が多い。
住民の方がたまに談笑している。平和な午後の時間。



しばらく歩くと、「町並み保存地区」の看板。
やはり平日なのもあって人はほとんどいなかったが、私としてはそれぐらいがちょうど良い。
歩いてみると、人の暮らしや生活も感じられる。古い町並みは観光地としても機能しているが、本当に昔からの姿を保存され維持している姿なのだと感じる。空いた建物を利用したホテルも近年オープンしたらしく、この町で二、三日のんびりするのも良いなぁと思う。



竹原の中でも特に観光スポットとして人気なのが西方寺というお寺。
この西方寺にある普明閣という建物は京都の清水寺を模して作られたとされ、舞台からは竹原の町が一望出来る。




そして個人的にとっても良かったのがこちらの賴惟清《らいただすが》旧宅。谷崎潤一郎氏の陰翳礼讃という本では日本人の美意識について語られているのだが、それを思い起こさせる場所だった。
差し込んで来る自然光のみで浮かび上がる住居というのは何と美しいことか。



そして休憩で入ったお店にてぜんざいと竹原の地酒、「竹鶴」を頂く。
まろやかだがスッキリしていて美味しいお酒だった。一人のんびりと日本酒を頂くという贅沢な時間。
ほろ酔いになった後はまた少し町並みを散策する。



町並み保存地区を一通り回り、さぁどうしようかと考える。
南に向かって海沿いに行ってみたいと思っていたが、時間はまだまだ余裕があったので一旦北に向かう。行きのバスの車内から見ていた景色が綺麗だったので、そこを実際に歩いたらどうなっているのだろうと思ったからだ。



川沿いには時折大きな倉庫などもあったがほとんど田んぼや畑など田舎の風景が広がっていた。人々の暮らしを感じながら歩き、そして一気に南下して今度は海を目指す。ゴールに設定したのはハチの干潟と呼ばれる場所で、賀茂川の河口にある干潟。潮の満ち引きによってさまざまな姿を見せてくれるのだろう。訪れた時は少し満ちてるぐらいで、本当はもっと奥まで行きたかったがその姿を収めるだけにとどまる。
ちなみに今回レンズはノクトンとSIGMAの16mmと56mmを持っていたのだが、ほとんどノクトンだけで撮影した。56mmは結構お気に入りのレンズなのに、一回も使わなかったのは自分でも驚きだった。本来レンズは50mm相当一本あれば事足りるということなのだろう。



干潟を後にしてからは、少し遠回りをしながら竹原駅を目指す。地図だけを頼りに、この辺の道はどうなっているのだろうと気になった所を目指しながら歩く。海沿いがどうなっているのかがやはり気になって歩いてみたが、どうやら工業地帯になっているようでのんびり出来る感じではなかった。
この辺りから足に違和感を感じていて、というのも靴を履き慣れていない物で来てしまったせいでマメが出来ているようだった。この日も結局トータルで20km程歩いたのだが、元々ここまで歩く予定ではなかったのもあって何となくいつもと違う靴にしてしまった。最後の方には結局マメは潰れて、痛みを感じながらの帰路となってしまったが不思議と不快ではなかった。今後のことを考えたらマメが潰れるぐらいの経験はしておいた方がいいと思っていたからだろう。



安芸の小京都と呼ばれる竹原を訪れて、そこではただ観光地としてあるだけでなく、暮らしと共に守られてきた姿を見ることが出来た。京都のように観光客でごった返す訳でもなく、ごく普通の景色としてそこにある。京都よりも日本らしいと言えるのではないだろうか。
今回は何もない時に訪れたが、次は何か催しものなどがある時に訪れてもっと人の姿を写してみたいと思う。
何にせよ、楽しい旅であった。


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貴田倫大
フィルム写真の文化の一助になるよう活動を続けたいと思います。フィルムや印画紙、薬品の購入などに使わせて頂きたいと思うので、応援の程よろしくお願い致します!