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【課題解決】中小製造業の技術経営 中小企業の知財戦略
中小製造業の事業変革・ビジネスモデル変革・新製品開発を伴走・支援する 『TECH-TOSHI』です。
今回は、「中小製造業の技術経営」における、『中小企業の知財戦略』について、ご紹介します。
1.ポイント
内容は、
『知的財産権取得にどんな効果を期待し、それを経営にどう活用するか』
でした。
※詳細な内容は、最後の5.内容に記載しました。
2.気づき
気づいたことは、
『知的財産権を取得してオープンにするか、あえてクローズ化するかどうかの検討が必要』
です。
3.課題
知的財産権の取得がもたらす効果は、
①競合先に対する競争優位の確保
②事業活動の自由の確保
③収益機会の創出
④顧客・パートナー関係への好影響
⑤組織のモラールアップ
とのことですが、
いかんせん、かけられる費用が限られており、より効果を上げることができるのかが課題となるため、知的財産権を取得してオープンにするのか、あえて取得せずにクローズ化するのかの判断が問われます。
4.解決策
「事業規模が小さい企業にとって、知的財産権を取得することが常に経営に役立つとは限らない」ことを考慮しながら、権利取得の有効性が大きいかどうかを検討することが必要です。
対象となる自社製品が、
▷自社の視点から、自社で企画した、自社のブランド品である。汎用性が高い技術である。
▷顧客の視点から、売り切りである。顧客が不特定多数である。
▷競合の視点から、競争が激化している、類似品で真似される。
上記の多くが当てはまるなら、権利取得が望ましいと言えます。
出所)藤野、他(2013).『グローバル経営を推進する知財戦略の教科書』.秀和システム,pp.240-244.
今回は、「中小製造業の技術経営」から、『中小企業の知財戦略』について、TECH-TOSHIよりご紹介しました。
尚、その他にも、この分野においての実践的なノウハウを投稿しています。
5.内容
中小企業経営者が、『経営のツールとしてどのように知的財産権を使いこなせばよいのか』、という視点はあまり強くない。
▶︎知財の権利化が常に有効なわけではない
▷事業規模が小さい企業にとって、知的財産権を取得することが常に経営に役立つとは限らない。
▷「自社の利益額や対象とする市場規模からみて費用対効果の面で割に合わない」
「権利を取得しても監視や訴訟にかかる手間やコスト負担が厳しく実効性確保が難しい」
「権利出願により技術やデザインが公開されたためにかえって模倣されるリスクが高まる」
など、中小企業による知的財産権の取得には特有のリスクも存在している。
よって中には、大企業と比較して遜色ない高い技術力をもちながら、あえて特許などを出願しないことを経営方針にしている中小企業もある。
▶︎権利取得がもたらす効果への期待がインセンティブを生む
▷知的財産権取得がもたらす効果に対する期待度が企業ごとに異なるため、経営判断に違いを生み出している。
▷知的財産権取得がもたらす効果は、大きく次の5つ。
①競合先に対する競争優位の確保
排他的独占権により、他社による市場参入や模倣・追従が厳しくなり、自社が優位に事業展開する可能性を広げることになる。
②事業活動の自由の確保
自社ですでに利用する予定がない知的財産であっても、他社が先に権利化してしまい自社の事業活動が大幅に制限されることを防止するもの。
例えば、新商品に対し利用予定の有無にかかわらず意匠や商標の権利を先行取得しておくことが、自社の事業活動の自由度を確保することにつながる。
③収益機会の創出
権利化した知的財産に関するライセンス契約や譲渡契約を結ぶことで、知的財産を直接に収益化することが可能になる。
研究開発型のベンチャー企業などにとっては、技術を収益化して早期に投資資金の回収を図る一手段として重要。
④顧客・パートナー関係への好影響
知的財産権の取得が顧客や事業上のパートナーとの関係において有利に働く。
技術力の高さの証明から、取引先からの信頼向上や新規取引開拓につながることがある。
特許公報を見た他社から、製品開発への協力や共同研究の相談が持ち込まれることがある。
つまり、営業あるいはプロモーションのための有力なツールでもある。
⑤組織のモラールアップ
知的財産権の取得を目指した活動を通じて組織が活性化する。
重要なことは、権利取得の経営判断にあたっては、自社が知的財産権の取得にどんな効果を期待し、それを経営にどう生かすのかを明確に意識すること。
知的財産権はあくまで経営のためのツールであり、知財の権利化そのものが経営の目的ではない。
▶︎事業活動特性によって競争優位への有効性は異なる
知的財産権が競争優位にどの程度有効なのかは、事業活動の特性によって少なからず差異があると考えられる。
権利取得の有効性が大きい場合
自社:①自社企画、自社ブランド、②標準規格品、完成品、③汎用性が高い技術
顧客:①流通市場取引、②短期売買、売り切り、③顧客が不特定多数
競争相手:①ライバルとの競争激化、②類似品で追従しやすい、③製品そのもので競争
出所)藤野、他(2013).『グローバル経営を推進する知財戦略の教科書』.秀和システム,pp.240-244.