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【課題解決】中小製造業の技術経営 競争ポジション リーダーの戦略定石
中小製造業の商品開発を伴走・支援 TECH-TOSHIです。
今回は、東京理科大学 MOT(技術経営)における 経営戦略とマーケティングに関連する講義から、『競争ポジション リーダーの戦略定石』について、ご紹介します。
1.ポイント
内容は、『リーダーの戦略の定石は、隙を作らないよう即座に同質化』でした。
1.リーダーの戦略目標
戦略目標は、業界首位のポジションを維持し、業界で最大の利益を獲得すること。
具体的アクション
①シェア拡大
さらなるシェア拡大によって、リーダーの地位はより安泰となる。
市場シェアを拡大するには、値下げや積極的な販売促進キャンペーンを展開したり、他社製品の顧客を引きつけなければならない。
ただし、あるレベル以上のシェア拡大は、大きな追加的費用のために、かえって利益が圧迫される事態が想定される。
シェア拡大のデメリットとして規模に対する「収穫逓減の法則」が作用する場合には、「規模の不経済」が発生する。
規模が大きくなるほど、他の用途に転用できない投資額が増え、「埋没費用」となって変化への対応力が低下する。
よって、大きな技術変化や顧客需要の構造的変化に対応しにくくなる。
②シェア維持・防衛
現状のシェアを維持するためには、攻撃を受けてそのまま放置しておくのは得策ではない。
第1の手段は、「直接対決」で、競合と同じ土俵で正面から競争すべきである。
ただし、正面からの直接対決は、たとえ勝ったとしても収益を大幅に圧縮する。
競合が攻撃を仕掛けにくくすることで、「戦わずして勝つ」ことが上策とされる。
攻撃されないためには、
1)妨害:
部品や材料メーカーに対して、ライバル企業に部品や材料を供給しない
ように妨害する。
2)隙を作らない:
製品ラインナップ上に手薄は領域を作らないよう、 くまなく製品を
取りそろえておく。
即座にライバル企業と「同質化」を行うことが有効。
3)イノベーション:
自らが率先してイノベーションを起こし、業界のあり方を変えていく。
などの方策がある。
③市場全体の拡大
業界全体としての市場拡大策を考えるべき立場なので、
1)新しいユーザーの獲得
既存の市場セグメントで、「とりこぼしている」潜在顧客に働きかける。
従来とは異なる市場セグメントに対してアプローチする。
2)新しい用途の開発
3)1回あたり使用量を増やす
などがある。
2.リーダーの定石的マーケティングミックス
ライバル企業につけいられないために、「フルカバレッジ」で市場全体をターゲットに。
製品ラインは「フルライン」で、開放型チャネル政策で、積極的な販促を展開し、やや高めの価格設定を行う。
出所)網倉、新宅、『経営戦略入門』、P231-237
2.講義からの気づき
講義から気づいたことは、『リーダーは、フルカバレッジで市場全体をカバーし、ライバル企業へ即座に同質化を仕掛ける』 です。
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3.現状
以前、勤務していた製造業の別の担当者の開発テーマにおいて、既存のある商品に新たな機能を付加した開発品を市場へ販売し始めたところ、
その市場のリーダーから、すかさず、類似の機能を持った商品を出されたことがありました。
業界リーダーによる、典型的な戦略定石の『同質化』の事例で、あたかも、用意していたかのように出してきたので、技術的には既に完成していたのではないかとも思われました。
よって、自社としては、できるだけ競争を避けるべく、ターゲットを絞ることとなりました。
4.解決策
ならば、『リーダーが同質化しにくい状況はあるのか?』 ということになります。
山田(2020)は、リーダーに不協和(ジレンマ)が生じた時に、リーダーが同質化しにくい状況であり、不協和(ジレンマ)とは、経営資源を持っている優位性が、逆に戦略遂行の足かせになる場合である と述べています。
また、企業の資産として、企業側に集積された「企業資産」と、顧客側に蓄積された「市場資産」(顧客基盤、販売済みの製品・交換部品・消耗品・ソフトウェア、企業イメージなど)の2種類があり、これらの資産を「持っている優位性」が戦略の足かせになる現象を、「資産の負債化」と呼んでいます。
つまり、リーダーの保有している資産が、負債となる状況になれば良いわけです。
出所)山田、『競争しない競争戦略』、日本経済新聞出版社
5.今後の課題
課題としては、『リーダー企業の強みである保有資産を、弱みにできるか』 です。
大企業ほど、強みは複数ありますので、まずは、それらを明確化することからです。
今回は、東京理科大学 MOTにおける 経営戦略とマーケティングに関連する講義から、『競争ポジション リーダーの戦略定石』について、TECH-TOSHIよりご紹介しました。
尚、その他にも、この分野においての実践的なノウハウを投稿しています。