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【読書メモ】『ジョブ型雇用はやわかり』 (マーサージャパン, 2021)

仕事でジョブ型雇用を取り扱うことになり、さくっと理解できそうなこちらを読んでみました。

編著者は外資系の人事コンサルティングファームであるマーサージャパンです。非常にわかりやすく要点がまとめられていました。文庫なので、値段もお手頃です。備忘録を兼ねて、noteにまとめてみます。(正確に原文を引用しているわけではなく、多少文言は修正しています。)

ジョブ型雇用とはなにか

第1章でジョブ型雇用の概要についてまとめられていました。以下がポイントとなります。

ジョブ型雇用では事業の必要な組織とジョブを定義し、適所適材で人材を配置する。ただちに適材が見つからないジョブに関しては、採用か社内公募で充足する。ジョブごとに人材確保を行うため、職種別採用、職種別報酬となる。報酬の決定は、市場価値をもとに事業およびジョブを理解している現場マネージャーが決定する側面が強くなる。異動は会社主導ではなく、本人同意が原則となる。ジョブの要件を満たしていない場合は、PIPを実施し、必要に応じて退職勧奨を行う。

マーサージャパン (2021)『ジョブ型雇用はやわかり』日経文庫

ジョブ型のメリットは事業の必要な人材を確保できることであり、さらにそれが個人間に競争をもたらし、「リスキルやスキルアップを促す構造があること」、ひいては「組織における不活性層が出にくいこと」である。

マーサージャパン (2021)『ジョブ型雇用はやわかり』日経文庫

ジョブ型雇用の基本形

第2章からジョブ型雇用の具体的な内容に入っていきます。「ジョブの明確化」が起点となりますが、JD(職務記述書)があるから、ジョブ型になるわけではないことが書かれていました。加えて従業員の「キャリア自律」が求められることが強調されていました。

ジョブ型雇用の人事エコシステムの起点は、ジョブの内容を明確にすること。

マーサージャパン (2021)『ジョブ型雇用はやわかり』日経文庫

JDそのものは必要に応じた粒度で作成すればよく、個人が担うジョブについて会社と個人の双方が合意し、各個人のキャリア自律を認めることが重要。

マーサージャパン (2021)『ジョブ型雇用はやわかり』日経文庫

ジョブ型雇用は仕事を介した会社と個人の労働力に関する市場取引であり、報酬額は個々のジョブの重要性や難易度、需給バランスによって決まる。

マーサージャパン (2021)『ジョブ型雇用はやわかり』日経文庫

ジョブ型雇用では評価は過度な精緻さを追求せず、育成やフィードバックが重視される。

マーサージャパン (2021)『ジョブ型雇用はやわかり』日経文庫

経営戦略とのかかわり

第3章では「なぜジョブ型雇用を導入するのか?」というイシューについて、経営戦略との接続の観点で書かれていました。同質性の高いメンバーシップ型と比較し、ジョブ型雇用が変化に強いということが強調されていました。

デジタル化が進むこれからの社会においては、多様性を前提に、変化に対するレジリエンスを備えることが組織・人材戦略上重要であり、そのためには多様性の対義である同質性の維持に重きを置いた人材調達・活用の仕組みを見直さなければならない。

マーサージャパン (2021)『ジョブ型雇用はやわかり』日経文庫

ジョブ型雇用においてマネジメントは、随時更新される戦略・方針に照らし合わせて組織とジョブをあらかじめデザインし、そこに必要な人的経営資源を社内外問わずに柔軟に調達・活用する。このため、変化に対して強い制度であると言える。

マーサージャパン (2021)『ジョブ型雇用はやわかり』日経文庫

導入にあたってのポイント

第4章ではメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への転換を実現するうえでのポイントが紹介されていました。個人的には一番面白かったのが4章でした。ジョブ型雇用導入の困難さと、その具体的な対処法についての理解が深まりました。

ジョブ型雇用の導入に向けた改革実行にあたって、実は一番の「抵抗勢力」が自社のプロパー経営幹部、役員層である会社は少なくない。これまで培ってきた人事に関する成功体験、持論や哲学が新しい人事制度のさまたげになり、改革が骨抜きになることは決して珍しいことではない。

マーサージャパン (2021)『ジョブ型雇用はやわかり』日経文庫

全面的なジョブ型への移行が難しい場合は、役割・貢献に応じた報酬決定を強化することや、公募制の拡充を通じた従業員のキャリア自律の強化からスタートすることも選択肢。検討にあたっては
①人材市場の状況
②自社のジョブ型へのレディネス
③今後の構造変化・市場の変化に対する見通し
がポイント。

マーサージャパン (2021)『ジョブ型雇用はやわかり』日経文庫

最後に

昨今、メディアでもよく取り上げられる「ジョブ型雇用」。よく聞くけど、実態についてはわからないという方も多いのではないでしょうか。1から勉強したい、という方にはおすすめできる一冊です。

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