見出し画像

事業戦略大学(教員1名、生徒無限大) 第3回 顧客の捉え方、理解の仕方を考え直す「考え抜くための戦略フレームワーク入門」コース


今日は先に質問です。

設問1:お客さんと企業はどっちが世の中の先を行っているとおもいますか?その理由は?

設問2:値引きばかりして利益をもたらさない顧客がいたとすると、その顧客を切るのは正しいでしょうか?

設問3:これからのマーケティング戦略では、顧客と企業はどのような関係であるべきでしょうか?



■ マーケティングが顧客についていっていない

最近、マーケティングの理論をリードしている専門家や研究者が述べている言葉に、一つの共通するフレーズがある。それは「企業のマーケティング部門の担当者や大学などのマーケティング研究者が、マーケットや顧客についていっていない」ということである。過去に積み上げてきた従来の方法論の前提が本質的に変化してきているのだ。それではどのような前提が崩れ去ったのだろうか。いくつか挙げてみたい。まず、

①消費をはるかに上回る供給量が世界中に存在するようになった。

②インターネットの普及などで、顧客の方が供給者よりも多くの情報や知識を持てるようになった。

③24時間注文可能のネット販売や海外調達の日常化などにより、商品・サービスの入手の制約条件がかなり低くなった。

④顧客自身が供給者に転じ、小さなセグメントを侵食するようになった。

⑤顧客の変化のスピードが加速度的に上がった。

以上のようなことは、耳にタコができるほど聞いていることである。しかし、企業が行っている顧客の捉え方やマーケティングは十年前とさほど変わっていない。まさに「マーケットや顧客にマーケティングがついていっていない」のが現実である。それでは、事業戦略企画を行う際に、どのように顧客を捉えていけばよいのか。まず、努力すべきことは、顧客のニーズを探ることではなく、「顧客の持つ価値基準を把握すること」であろう。それは消費者について言えば価値観であり、法人顧客で言えば経営ビジョンや戦略である。

次には、顧客ニーズに合わせた商品・サービスをつくるのではなく、「顧客の価値基準を刺激し、支援するような商品・サービスで、顧客が予想もしなかったものを提供」すべきである。しかし、それにはリスクもあるので、顧客を巻き込みながら、実験的にそれらを行うことが望ましい。さらに、顧客には商品、サービスを購入してもらうだけでなく、「それを使い顧客の目的が達成し続けられるよう顧客を支援し続け、顧客と一生付き合っていく」必要があるだろう。

■ 顧客と双方向の関係性をつくる

具体的に、顧客を捉えていくための主な方策を挙げる。

まず、顧客の価値基準を探ることである。その方法は、①顧客が置かれた環境変化を把握する、②顧客の強み。弱みを把握する、③顧客の成功要因を分析するなどである。つまり、顧客の問題解決を行うコンサルティング的なアプローチが必要とされるのだ。したがって、顧客とのコミュニケーションができる企業姿勢と、そのための仕掛けや仕組みが必須となる。

次に、顧客が予想もしなかつたものの提供である。それは顧客のビジョン達成や問題解決に対する、自社のオリジナリティをベースにした問題解決提案活動、すなわちソリューション提案であろう。顧客が置かれた環境に対して、自社の強みと独創性を活かした一連のソリューシヨンを提案するのである。商品・サービスだけではなく、組織の持つデータ、知識、問題解決力などを顧客の持つ能力や資源と結びつけることにより、顧客の価値と自社の価値を向上させる活動だ。いわば顧客とのネットワーク、あるいはアライアンスとも言える。

そして、顧客と長期間にわたる継続的な関係を構築するためには、顧客との間に長期的ビジョンを共有し、信頼を構築しなければならない。そのために企業は、顧客の理念やビジョンを理解し、さらに自らの理念やビジョンを顧客に示さなければならない。関係性を商品・サービスの提供と購入だけに限らず、組織と組織、人と人、知識と知識、業務と業務をネットワークしていかなければならない。

これからの顧客の捉え方とは何かを結論づけるなら、「顧客との関係とは、厳しい環境変化の中で、互いが学習し合い、価値を高めていくための緊張感を持ったアライアンス関係である」と言える。単に一方的に奉仕して、金銭という対価を手に入れるという時代は過ぎようとしている。従って今後は、自社も従来通り顧客に選ばれるが、一方では自社が手を組むべきお客様を誰にすべきかを慎重に選ぶことも重要だと言える。もはや顧客との関係は、スケールの大きさではなく、質的なものに変化したことを理解しておかなければならない。

いいなと思ったら応援しよう!