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戦略力を上達させるには、パターンの認識力を上げること

事業戦略大学(教員1名・生徒無限大)「事業戦略スキルアップのこつコース第4回」

■ 戦略パターンの認識力を上げる


経営コンサルティングの現場では、「戦略・計画力の上達とは、戦略パターン認識力を向上させることだ」と言い切っている。著名な経営者、経営学者、コンサルタントであつても、事業戦略をゼロから創造する人はほとんどいない。誰もが事業の置かれた状況を正確に認識し、これまでの先人の考え出した戦略のモデルを組み合わせ、最も効果的な戦略を企画し、計画に落とし込んでいる。

偉大な業績を残した著名な経営者は、たとえ経営大学院(いわゆるMBAコース)で戦略手法や企業戦略のモデルを学んでいなくても、長期間にわたる膨大な数の取引や事業の失敗・成功から、さまざまなケースを学び、経験として記憶している。そして、いざ必要だと認識した際にはいつでも引き出せるよう、その経験をパターン化している。

ビジネススクールでの学習や事業における実務経験がいつでも引き出せるかどうかは、過去の成功・失敗経験がパターン化されているかにかかっている。いくらビジネススクールや実務で学んでも、使える道具として頭の中に記憶されていなければ実際には使えない。れは決して戦略のモデルや分析の方法の名前や概要を記憶することではない。あくまでも置かれた状況を認識し、それらをすぐに使用できることが重要である。戦略パターン認識力と呼ばれるものは、3つの要素で支えられている。

1つは自己の置かれた戦局や状況を認識する力、つまり状況認識力に優れていること。

2つ目は、その状況において効果的な打ち手として、多くなくてもよいが、いくつかの戦略のモデルを現場で使いこなせること。

3つ目は、それらの土台となる基本的な戦略の企画・実行のために、日常業務の中で分析手法をつねに磨いておくことである。


以下、各々について細かく解説していく。

202020708_事業戦略大学図表第3回


①状況認識力に優れていること


事業経営で成果を上げられる人の第一の特徴は、状況認識力に優れている点である。状況認識力とは、事業を鳥腋するマクロな視点からの状況認識力と、自分自身や事業についてのミクロな状況認識カである。さまざまな状況変化からいくつかのシナリオや重要な意味を見つけ出し、効果的な戦略のモデルや型を選び出してくる。


変化を察知できるように絶えず動き回り、外に目を向け、現場の生の情報を入手し、それらの情報の関係性を分析する。その中に新しいトレンド、つまり新しい時代の意味を創造的に発見する。


優れた実務家は、自己の認識力を向上させるため、絶えず好奇心を働かせている。一見自分の事業に関係ない社内外の事業や業務であっても、当事者の立場で問題や課題を把握し、解決を試みている。「もし自分がこの会社の経営者であったら、どのような判断をするか」「もし自分が買収される企業の経営トップならどう考えるか」―そういったことを日頃から絶えず考え続けているのだ。


そのような人は、生活者としての個人の活動も活発である。ファッションや食べものに関心を持ったり、年齢や性別、職業、地位の違う人がどのようなことに関心をよせているか……などなど、アンテの感度が非常に高い。また、思考が柔軟で人付き合いも良く、話題も豊富なため、つねにフレッシュな情報が入ってくる。そして、バランスのとれた人間関係を築いている。

② いくつかの戦略モデルを使いこなせること


現場で成果を上げている実務家は、戦略モデルをどの程度把握しているのだろうか。私の経験だと、成果を上げる実務家ほど、「アンゾフの成長ベクトル」「プロダクトライフサイクル戦略」「市場ポジショニング戦略」「ポーターの四つの競争ポジション」など、いくつかの絞り込まれたモデルを徹底的に使いこなしている。また、それらの部分を組み合わせ独自のモデルをつくり出している。単に知識として知っているだけではなく、何度も事業の中で繰り返し活用し、経験を積んでいる。その成功と失敗の体験が蓄積されている。

相撲でも柔道や剣道でも、基本的な型はそう多くはない。 一流の選手ほど基本となる型を普段から訓練し続けているのだ。本番の試合では、相手の状況を素早く読み取り、その状況に合う型が何かを瞬間に判断し、タイミングを見てそれを実行し、確実に勝つ。ときには失敗もするが、それは重要な経験として頭と体に記憶されるのである。


さらに、自分なりのお手本となる企業経営や経営者を持っている。そして、それらベンチマークとなる組織やトップを、さまざまな角度から直接的・間接的に学ぶ。良い仕事のやり方や考え方を記憶し、自分なりに表現できるまでになっている。そのお手本は、必ずしも企業経営に関することだけでなく、スポーツや音楽、芸術、経営以外の他の学問の場合もある。モデルとして良いものから学ぶ方法を自分なりに工夫している。


③日常業務の中で分析手法をつねに磨いておくこと


戦略・計画力の優れた人の3つ目の特色は、各種分析手法、企画手法をつねに鍛えていることである。多くの人は日頃の業務に追われており、まとまった時間が取りにくい。そのような状況にあっても、戦略。計画力に優れた人は、自分なりの工夫、技を持っている。

たとえば営業活動であれば、初回顧客訪間の前には、その顧客に関する簡単な経営分析を行い、自社の商品・サービスによる事業レベル、経営レベルのソリューシヨンの機会を把握する。ライバルの商品・サービスの競争力分析や、ライバル会社の戦略の分析を行う。頻繁に使う重要な分析視点をチェックリストとしてメモ帳に書き込んでおき、事前情報やヒアリング情報を簡単に分析しノートなどに記録する。

優れた人は、このように日常の業務の中につねに学習の機会を埋め込み、習慣化しビジネスチャンスに対する反応力を高め、センスを鍛え上げている。突然、今よリレベルの高い仕事に挑戦しようと考えるのではなく、今日できる仕事の中で学習する工夫と技を持つ。また、分析力を上達させるために、プロが講演するセミナーや研修に定期的に参加して本物に触れ、刺激を受けたり、専門書を読み、論理を体系化しておくことも重要である。

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