事業戦略大学(教員1名、生徒無限大) 第6回「強み」「重要な経営資産・資源」を認識する (コア・コンピタンス分析)「考え抜くための戦略フレームワーク入門」
コロナショックは、多くの人にダメージを与えた。一方で、じっくりと自分のこと、会社のことを考える機会でもあった。人生で最も大事なことは何かと聞かれたら、自分の強みを理解し、活用しきることと言いたい。弱みを克服しようと思っても多くの人は、「自分はだめな人間だ」というノイズが入ってきて、成長しにくのではないか。もっと得意なことを集中して自由にやる方が伸びる様に思える。これは会社も同じ。「うちの会社これしか出来ない」ではなく「うちの会社のこの強みをこの視点で活かせば成長するのでは」と考えるべきである。
はい!今日も設問からです!!
下記の設問に大きな声でお答えください。周りは気にしなくていいです。ウォーキングして公園でやれば効果は絶大です。お試しください。
設問1:あなた個人のコア・コンピタンス(中核のつよみ)は何ですか?(これから強化するのでもよい)
設問2:あなたの捨てるべき、切り離すべき資産、資源は何ですか?それによりどう暮らしや仕事は変わりますか?
設問3:あなたはコア・コンピタンスを活用するためどのような工夫、努力をしていますか?
■我が社のコア・コンピタンスとは何か
「あなたの会社の利益を生み出すための最も重要な経営資源や資産は何ですか?」「事業環境が変化する中で、あなたの会社の事業機会とはどのようなものですか? その事業機会を活かすためのあなたの会社のコア・コンピタンス(事業の中核能力)はどのようなものですか?」――このような問いかけに対して、あなたはすぐさま答えることができるだろうか。もし、答えられなかつたり答えにくいと感じた場合は、以下のような問題が組織内に生じている可能性がある。
①市場の中で競争に勝てる競争力を担保するような経営資源や資産がどのようなものであり、それをどう磨いていくかという意識が希薄である
②その結果、ムダな経営資源や資産を保有している可能性や、それらが競争力のない状態になっている
可能性がある
③事業環境が変化し、保有資産の見直しや入れ替えが必要であるにもかかわらず、何もせずに放置している可能性がある
■ 資産や資源に対する見方はどう変わってきているか
過去に、多くの日本企業は、たくさんの資産を保有することで環境変化に対応しようとしてきた。倒れない寄りかかれる巨大な組織をつくり、膨大な資産を蓄積することが、環境変化への不安を軽減してくれるものであった。しかし時代は変わり、ほとんどの資産は時価で評価されるようになった。単に資産を多く保有することは、必ずしも安心を担保することでなくなったばかりか、むしろ活用が不十分な資産は、利益の減少など価値を目減りさせるリスク要因と見なされるようになった。経営の成功とは利益の最大化と資産の最適化であると考えるならば、事業戦略企画の際には特に、資産に対する見方を鋭くしていく必要がある。保有している何らかの資産が、その資産を取得した資金コスト以上のリターンを生み出すことができなければ、その資産は売却した方がよいという判断基準も一般的になってきた。
実際、事業は一つの資産で成り立っているわけではないため、そう簡単に切り分けることはできないが、目標利益を生まない資産は切り離すという考え方は日本企業にも徐々に浸透してきている。
■資産、資源、コア・コンピタンスの区分
しかし、日常の事業経営においては、現預金、売掛金、有価証券などの金融資産や土地・建物はともかく、事業活動を構成しているそれ以外の資産を区分し、評価することはそう簡単なことではない。なぜなら、事業活動は顧客の価値達成を目指して組織横断的に進められており、経営資産や資源が複雑に絡み合って顧客成果を創造しているからである。しかし、事業経営の機動力を上げ、また資産の価値を向上させるとなると、この資産をうまく区分しマネジメントする必要性が出てくる。
まず、言葉の定義を整理し、経営資産と資源、コア・コンピタンスの違いを明らかにしたい。私は、企業が収益や(アウトカム)を生み出すためのものが経営資産(プロセス)であり、経営資源とはその経営資産に投入(インプット)されるリソースを示すと考える。コア・コンピタンスとは、資産を使用し、そこに資源を投入した際に、他社よりも優れた成果(アウトプット)を創出するために必要な能力である。特に複数の商品・サービスに共通して活用されるような競争力の源泉になっている能力を指し示す。資産、資源、コア・コンピタンスともに概念的であり区分が難しいが、整理してマネジメントすることにより、効果的な事業戦略となる可能性が高くなる。
■バランスト・スコアカードの4つの視点での分析
そこで、事業戦略を企画する際、これらの経営資産、資源、コア・コンピタンスはどのように分析すべきか。その際には、バランスト・スコアカードの4つの視点を活用するとわかりやすい。4つの視点とは、①財務の視点、②顧客の視点、③業務プロセスの視点、④学習と成長の視点(人・組織の能力や経営基盤力)である。経営資産と経営資源は、この4つの視点の切り口で、どのようなものが存在するのかを分析する。分析の過程では、この4つの区分にまたがるものも出てくるだろう。重要なのは、戦略企画に使える、競争上重要な経営資産と経営資源を特定することである。
■ コア・コンピタンスを定義する
コア・コンピタンスとは、学習と成長のカテゴリーに位置づけられるものだが、複数のプロセスを伝わって、複数の商品・サービスに反映され、際だった財務成果を示すものである。前述した4つの視点で分析したファクターを因果関係で結びつけると、おおよそ把握できるはずである。コア・コンピタンスは、次のようなものである。例えばスリーエム社でいうとアイデアやイノベーション創出能力による多様な新製品開発力である。トヨタ自動車では、カイゼンやカンバン方式などによる、ローコストでの高品質な自動車の設計・製造力。自転車部品や釣り具のシマノでは、部品をベースとしたシステム設計能力と、そのシステムを商品ブランドとしてエンドユーザーに訴求する能力であろう。
事業戦略企画ではこの例のように、競争力の源泉になり得るコア・コンピタンスがどのようなものかを戦略的に定義づけて育成していくことを考えなければならない。コア・コンピタンスは、アライアンス戦略、ビジネスモデル戦略、ドメイン戦略などの戦略のベースとなる重要な概念である。
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