三方の小品【22:港】
〇〇に入るキーワードは、配信中にスターとコメントのキリバンを取っていただいたリスナーさんにリクエストしていただきました。
鎌倉屋トルテという少女の思い出や、頭の中に触れていきませんか。
港
港 (テキスト版)
内容は上の画像と同じです。
「港町」という単語に、どことなく憧れを抱いたり、特別な感情を覚えたりする人は少なくないと思う。青空の似合う町並み、海上からも目立つカラフルな建物や背の高いビル、船乗りの帰りを待つ家族がいれば、あたたく人情的な雰囲気を気に入る魔法使いだっているかもしれない。そんな港町を、カメラを首から下げながらお気に入りのワンピースと靴でお散歩したらきっと楽しいに違いない、そんな空想昼下がり。
鎌倉からほど近い江ノ島は漁港であるので付近を港町と言ってもよいのだろうが、ここで私が想うのは輸入品を扱うような大きな貨物船が往来をしているようなちょっぴりハイカラな街のこと。そう。大きな汽笛が響き渡っていろんな人々の人生が交錯する、海の青と空の青が混ざり合う、そんな街のこと。特定の場所が思い浮かぶわけではないけれど、きっと似たような風景をみんなそれぞれ心の中に持っている気がして、心の港町の存在にそっと敬礼をしてみたり。
港町には外国からの舶来品が多く、珍しい品物で溢れているので、ウィンドウの中を覗き込み歩き回るだけでも時間はすぐに過ぎていく。アイスクリームをほおばりながら、お土産のカステラの紙袋を手にして思いつく。家に帰ったらこれもまた舶来品のチョコレートと合わせて食べよう。きっと、そうするのだ……なんて思いながらニッコリ笑っている少女が、お土産のカステラなんてものは存在しないことに気が付くまで、あともう少しだけ。
傾いた陽が窓ガラスを通して青色に変わり、カウンターを彩っている。
初出:2022年1月19日
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この記事が参加している募集
サポートは、鎌倉屋維持費として使用させていただきます。 ありがとるてなのですよ〜!