三方の小品【29:ブランコ】
〇〇に入るキーワードは、配信中にスターとコメントのキリバンを取っていただいたリスナーさんにリクエストしていただきました。
鎌倉屋トルテという少女の思い出や、頭の中に触れていきませんか。
ブランコ
ブランコ (テキスト版)
内容は上の画像と同じです。
突き抜ける青さの春の日、見知らぬ街を少女は歩いていた。目当てのお使いは早々に完了したので得意のお散歩をしてみることにしたようだ。どうやらこの街はまだ古き建築物が多く残っているようで、一軒一軒の土地も広い。駅を離れればのっぽの建物はぐんと減り、心なしか空も広く見えるというものである。
しばらく歩いているうちに、少女はあることに気が付いたようだ。それは……小さな公園が多いということ。その小さな公園のラインナップはこうだ。
鉄棒・砂場・ブランコ
大体この三点セットがある。そんな公園がいくつもあるのだ。
ともすれば。ちょっとこちらが目を離しているうちに少女はブランコにぽてんと座っていた。きぃ、きぃ、と。はじめは恐る恐る。……次第にこぐ足にも力が入り、公園内の大木にどんどんと近づいていく。
何度か空中と大木の間を行ったり来たりしているうちに、枝先いっぱいに膨らんだ花のつぼみがもう少しで零れんとしていることに気が付いたようである。
目を輝かせた少女は、枝先に近づくタイミングで大きく深呼吸をしてみたようだが……その香しい花の香りは、少し未来ではじける予感だけを残し、すぐに遠ざかっていってしまった。
初出:2022年3月10日
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