三方の小品【26:香水】
〇〇に入るキーワードは、配信中にスターとコメントのキリバンを取っていただいたリスナーさんにリクエストしていただきました。
鎌倉屋トルテという少女の思い出や、頭の中に触れていきませんか。
香水
香水 (テキスト版)
内容は上の画像と同じです。
ふわりと漂った香りに包まれ、寸の間ドキリとする。この香りどこかで……振り返っても人影はなく、そもそも人がいたのかすらわからない。どんなに探そうとしても、もうその香りはそこに留まっていなかった。
舞台上で舞う方が纏っていた香りを覚えている。
あの時は一瞬一瞬を目におさめるのに必死で、そのことには気が付いていなかったのだけれども。その非日常な日常が終わってしまってから、とある日に突然に思い出すという体験をしたことがある。まるで、その一瞬だけはあの空間に戻ったように感じてこそばゆかった。ふわりとその香りが漂ってきた時、鮮烈に舞台の情景が脳裏によぎったのだ。それと先ほどの感覚は非常に似ているように思ったのだが……。
改めて深呼吸をしてみたものの、香りのしっぽを捕まえることはできなかった。少し残念に思いながらも、いつかまたと願って待つのも悪くないと思い直して追いかけることをやめた。またどこかで出会えたら、その時には香りだけでなく実体を掴めるように反射神経の訓練でもしてみようかしら、と思案し始める丸眼鏡は今日も微笑みながら街を歩く。
初出:2022年2月17日
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