三方の小品【62:ハロウィン】
ハロウィン
ハロウィン (テキスト版)
内容は上の画像と同じです。
かぼちゃ大王がやってくる……そんな言葉を昔本で読んだことがある。
確かにその言葉がぴったりなくらい、今の時期には街ではかぼちゃが溢れ出す。大きいもの小さいもの、色とりどりのごろんごろん。手のひらに乗せてその重さを慎重な顔をして比べているが、実のところ違いはよくわかっていない。
さあ、大王が来る前にしっかりと準備。
かぼちゃの頭を蓋になるように切り落とし、中身をくり抜いて裏漉し、裏漉し。いくつかはかぼちゃに戻してオーブンへ。
ブゥゥンと低く鳴り響く音を聴きながら、残りの一つに対しても手を入れていく。
辺り一面に深く香ばしい香りが漂い始めた頃、キッチンの窓辺には怪しげなゆらりとした灯火が風もないのにゆらりゆらりと揺れていた。
その炎が笑ったように見えたのは、大王の降臨かそれとも気のせいか。不思議で怪しい、秋の日の戯れ。
初出:2022年11月3日
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いいなと思ったら応援しよう!
サポートは、鎌倉屋維持費として使用させていただきます。
ありがとるてなのですよ〜!