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三方の小品【38:踏切】
踏切
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踏切 (テキスト版)
内容は上の画像と同じです。
目の前を……まさにそう。目と鼻の先を紺の車体が、少しの潮風と共に駆け抜けた。風にあおられた前髪と、飛ばされそうになった帽子を片手で押さえながらひょひょいと向こう側へ渡っていく。
ここは所謂踏切という場所で、しかし一般的なソレと同じトラのしっぽの様な棒はない。それはそれはこじんまりとした線路なので、”踏切保安装置”が設置されていないのだ。
つまり気を付けなければならないけれど、その分近くに車体を感じられるこの瞬間が好きだったりする。
心にも踏切があれば、大切なひとたちの心を無用に踏み荒らしてしまうことがなくなるだろうか。不用意に立ち入られて困ってしまうことがなくなるだろうか。
しかし、踏切はいつかは上がるもの。そしてまた下がるもの。心を守るために使うのはちょっぴり違うかもしれなかった、と思い返して首をふるふる目線を上げる。それでも、下がる前にカンカンと音を立てて危険を知らせてくれるのはちょっぴり良いなと思ったりして。
また、踏切が下がる。安全を守るための細い棒の指示に従って、ただひたすらに上がるのを待つ。
あっ、と思ったときにはもう遅くて、強くあおられた帽子が後方へ押し戻されて行く……はずだった。ぴたりと上空で止まった帽子は、とある人物によりしっかりと掴みとめられていた。「ありがとう、今日は……」
後ろの言葉は通過していった車輪の音にかき消さた刹那、上がった踏切をくぐるようにして帰路に立つ。なくさずに済んだ帽子を今度はしっかりとかぶったのを、夕暮れの踏切だけが見つめていた。
初出:2022年5月12日
【三方の小品とは…】
文章 × 鎌倉屋トルテ × 〇〇
全てを掛け合わせたとき、トルテのどんな一面が浮き上がってくるのか?
配信アプリIRIAMをメインに活動中のヴァーチャルキャラクター「鎌倉屋トルテ」が、”#IRIAM3周年を彩る私の企画”をきっかけに、上記三つの要素を用いて立体的に「鎌倉屋トルテ」自身を紐解いていくために書き始めたミニエッセイのこと。
〇〇に入るキーワードは、通常、配信中にスターとコメントのキリバンを取っていただいたリスナーさんにリクエストしていただいたものを使用しているのですが、本日はちょっぴりすぺしあるバージョン。
鎌倉屋トルテという少女の頭の中の世界へ、ようこそ。
~タイトルはアンサンブル作品「三つの小品」より~
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【鎌倉屋トルテ】
配信アプリIRIAMを中心に活動をしているヴァーチャルキャラクター。
鎌倉のどこかにあるかもしれないレトロなカフェバーを切り盛りしている。
丸眼鏡とロングスカートが特徴で、チョコレートや文房具が好き。/12月5日生まれ
☆2021年12月25日で活動一周年を迎えました☆
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