三方の小品【37:こどものひ】
こどものひ
こどものひ (テキスト版)
内容は上の画像と同じです。
青空には大きな鯉が泳ぎ、屋根まで高く透明なシャボン玉があたかもその鯉が水中にいるかのように見せている。大空を悠長に泳いでいるのは紛れもなく3匹のこいのぼりとそして大漁旗。青赤橙の3匹の鯉のぼりは、いずれもまん丸の目玉をキラキラさせてこの世の中の楽しいことはどこかと探しているみたい。
と、その3匹の下に添えられているのが大漁旗だが、なぜそれが陸の路地の奥に存在しているのかご近所さんは毎年謎に思っていたがまだ誰も真相を知らない。
ぷわりぷわりと伸び上がるシャボン玉に目をやりながら、来る夏に思いを馳せるのが鎌倉屋流。
花火かスイカか、その前に紫陽花を忘れてはならない。とにかく、これからノンストップでやってくる数々の季節たちの準備に心を寄せつつも、今日のところはぷうぷうとシャボン玉を宙の海に放っていく。
大漁旗の件。一説によれば、ご先祖様に漁師がいるとかいないとか。その時からの習わしで大漁旗を作る慣習となったとかなっていないとか。
真偽のほどはぷかりぷかりと浮き上がってははじけるシャボン玉くらいつかみどころがなく、真実かと思ったことも次の瞬間にははじけて消えた。
そんなことはもうどうでもよいくらい、真っ青な空が眩しい。
初出:2022年5月5日
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