三方の小品【58:お城】
お城
お城 (テキスト版)
内容は上の画像と同じです。
いつかあんなお城に住めるかしらと考えていたのは、もう遥昔のお話。扉の札を閉店に変える。
無邪気にドレスにティアラに着飾って、いつかそう、森の中から連れ出してもらえるかもと夢見ていたあの日々。
いつしか待ちくたびれて眠ってしまった、あの満月の夜の記憶も薄れ始めている。
コーヒー、ココア、ウイスキーにワイン。数えきれないお気に入りの中から、ちょうど良いグラスやコップを出してきてサーブする。
飲めば不思議と笑顔になれる、話せばなんだか心が軽くなる。ひっきりなしにそんな刹那の時を求める人々がやってくるようになった。
ここが私のお城なのかもしれないと思い始めたのはいつからだろうか。
本当はわかっていた。誰かが連れ出してくれるなど、そんなことはないということを。
しかしちょっぴり誤算だったのは、さまざまな人々がやってくるようになったというところ。
いつかあんなお城に住めるかしらと考えていたのは、もう遥か昔のお話。扉の札を開店に変えた。
初出:2022年9月28日
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