ショートケーキソング第十六号
2020年6月28日、恋愛短歌同好会第29回のツイキャス歌会を行いました。noteへのアップが遅れてしまって申し訳ありません。キャスに来ていただいた方、ありがとうございます。今回の選者は実は第一回ぶりにわたしtoron*が行いました。実はピンチヒッターとして選者を当日したことはあるのですが、投票で選ばれたことは今までなくて、六首に入ったのもかなりひさしぶりでした…毎月まじめに投稿しているんですが、恋愛短歌がそんなに得意じゃないことが如実にばれたというかなんというか…。
しかし、今回自分が選者をしてみて、この作業大変だな…とめっちゃ自覚しました。量的にもさることながら(自分がやった第一回は三十首くらいしかなかった…)、それらの良いところを褒めようとすると250文字ってめっちゃ微妙な量なんですよね。正直、文字が多ければ言葉を費やせば良いだけなので楽なのですが、まとめるとなると別の筋力が必要だなと感じました。
ちなみに今回はまた過去最大投票数、278首の応募がありました。たくさんの方からのご投稿、嬉しい限りです。選ばれなかった歌の理由についても全首説明できるほど読み込み、そのなかから六首選ばせて頂きました…!
投稿数に比例してキャスもふだんよりたくさんの方に来て頂けました。常時40人くらい…めっちゃ緊張しました…でも、かなり活発な読みができて、あと当たり前といえば当たり前なのですが、自分の評を読んでいるので、良さの説明を伝えやすかったです。非常に楽しかったです。ありがとうございます…!
これらの歌の作者と評の全文のPDFは、文末のリンクから飛ぶことができます。
また、毎月PDF選者としてゲストをひとりお迎えしているのですが、今月はわたしがPDF版での選ができないので、ふたりお呼びすることにしました。せっかくふたり呼べるので、短歌ユニット飛陽軒の尾崎飛鳥さんと朝野陽々さんにお願いしました…!
おふたりとも事前の告知などめっちゃやって下さってありがたかったです。過去最大投稿数はこのためと、おふたりの知名度によるところも大きいなあと実感しました。
また、PDF選者は三首選となるのですが、それ以外にもご自身の気になった歌をtwitterのTLで上げて頂きまして、非常に感謝です。
尾崎飛鳥さん選(三首選以外)
https://twitter.com/a__suuu/status/1281410252152246272?s=20
朝野陽々さん選(三首選以外)
https://twitter.com/asanoyoyo/status/1281554416974229504?s=20
こういうの本当にすごく嬉しいですね…!またぜひ飛陽軒のおふたりにお願いしたいです…!
ちなみにおふたりは、R2ぐらんぷりというwebサイトうたの日企画の連歌の大会で毎回上位になっていて、その推敲の徹底、世界観のすり合わせがすごいなあ、とそのたびに思わされます。その際に派生した、大会に出したのとは別の歌などをネプリにされていたりするのですが、今回は『風になる』という連作を編まれていて、そちらから幾つか引かせて頂こうと思います。
『風になる』
https://drive.google.com/file/d/19F2IWVKZxNs2fUg0VOcGHBGg5-uEQDPl/view?usp=sharing
『風になる』は鎌倉を舞台にしている男女の恋愛を描いていて、女性側のSideA三十首、男性側のSideB三十首、で構成されています。
尾崎さんは横浜出身ということを知っていたので、細かい土地の名前などは尾崎さんが設定したりしたのかな、など想像もしつつ…また、自分はうたの日などで朝野さんの作風を知っていたので、この連作のために設定したキャラクター像にかなり寄せて詠んでいる雰囲気があり、新鮮な驚きがありました。
連作では交互に詠んでいる構成にはなっていないのですが、ストーリーはどちらも時系列で進んでおり、かたまりで引かせて貰おうかと思います。
鎌倉で出会った男女が鎌倉で別れるまでを描いており、具体的になにかが原因で別れたというよりか、男性は不器用さと自信のなさ、女性は不安さを抱えていて、そのために少しずつすれ違っていく様子が良かったです。
互いの作者本来の癖もあるのかな、とも思いつつ、女性の方は結句の字足らず、字余りの歌が多く、でも、それによって不安な感情を吐露している雰囲気がよく出ている。対して、男性の方は体言止めを多用しており、やや言葉足らずで終わるようなキャラクターを上手に形成していると感じました。
また上手いな、と思った部分が、
こんな親でも親なんだね恋人ができるといつもすぐ勘づいて /尾崎飛鳥
「鳶職なんてろくなもんじゃない」彼のことなんにも知らない母親が言う/尾崎飛鳥
鳶職の家に生まれてなんとなく見上げた空の遠すぎる青 /朝野陽々
親父から受け継いだのは古ぼけたレンチと憧れだったヨンフォア/朝野陽々
男性の方は親の職業をそのまま引き継いで働いていて、その選択はもしかして「なんとなく」だったのかもしれないけれど、親とその職業に対する尊敬があったのだと思う。対して、女性の方は歌の中ではなぜそうなのかは触れられていないのだけど(死にたいと思い続けていた日々を~という歌があるので、そのあたりの過去があるのかもしれない)、「こんな親」として語られている。あんまり上手くいっていない雰囲気があり、もしかすると二首目のような固定観念でものをみるような性質のせいなのかもしれない。ただ、それでも、親として見ている…という、さりげない対比が行われていて巧みだなあ、と感じました。
歌の中では、これががっつりふたりの亀裂になっているわけではないのだけれど、ふたりが別れることになる要因として外堀を埋める役割を果たしていると思いました。さらに、134号線の歌があり、
134号線を走る時あなたのなかにわたしはいない/尾崎飛鳥
134号線ですれ違う風の悲鳴を聞くだけの夜/朝野陽々
この時点でふたりの心はもう微妙に噛み合っていないのですが、ふたりとも前を向いた状態で、なんとなく似たようなことを思っており、きっとふたりの相性は悪くないはずなのに難しいな…と思わせる部分も良かったです。
と、何首か引かせて頂きましたが、全体で読むとまた素晴らしく、かつPDFで公開中のものには、これ以外に『雨のうた』なるR2ぐらんぷりの提出歌の制作過程で生まれた歌が収録されていて、そちらも魅力的です。
次回のR2ぐらんぷりももうすぐなので、おふたりがどんな歌をつくるのか非常に楽しみにしております。
今回も無事にショートケーキソング第16号を発行できて嬉しいです。
次回のPDF選者は大城紫乃さんにお願いしております。来月もよろしくお願い致します。
恋愛短歌同好会会報ショートケーキソング第16号
https://drive.google.com/file/d/1AtMkafJbTbvsZsWeAEYjEGPs_hF4go7f/view?usp=sharing
恋愛短歌同好会規約など
https://drive.google.com/file/d/1drVpBH0VsLsz7M1KXNqmQMmRzY_b94Or/view?usp=drivesdk