ショートケーキソング第十三号
2020年4月5日、恋愛短歌同好会第26回のツイキャス歌会を行いました。キャスに来ていただいた方、ありがとうございます。今回の選者は夏山栞さんにお願い致しました。選ばれたすてきな六首はこちらです…!
夏山さんは文章がすごく上手で、エッセイの方でもファンがいるのですが短歌の評もめっちゃ良かったです…!以前、PDFの三首選をお願いしたこともあるのですが、長い方が良さがよりよく解るなあ、と感じました。また、夏山さんとはけっこう作風が自分と違うのに、六首選の候補が自分とかなり被っていて、それもかなり嬉しかったです。作者と評の全文は、文末のリンクから飛ぶことができます。
また、今回のPDF選者は、ちーばりさんにお願いしました。
ちーばりさんは恋愛短歌同好会をはじめた当初…第4回くらいから颯爽と登場して、恋愛短歌を投稿してくれていました。恋愛短歌同好会は毎回選者が変わるのに、当時から詠めば六首のなかに選ばれていて、つまりそれだけ読んだひとの心を揺さぶる歌を詠める方でした。
彼女の私家版の第1歌集『ぼくらは他人のままだから』もわたしは読んでいて、そちらには18歳から21歳までに詠んだ歌から厳選して230首が収録されています。その頃、自分は恋愛短歌同好会を主宰してはいたものの短歌歴=恋愛短歌同好会活動歴という、かなり初心者でした。まだうたの日すらもはじめていない段階の。そして歌集ではじめて買って読んだのは寺山修司の『青春歌集』だったのですが、2冊目はこのちーばりさんの『ぼくらは他人のままだから』だったんですよね。
誰といても眠りに落ちる直前が一番きもちいいなんて、バグ
アセトアルデヒド分解するだけでなんでそんなに楽しそうなの
そんなとこおいしいですか射精ってたのしいですかまだ好きですか
当時読んで、これはすごいな……以外の語彙力がなく、熱量にあてられてしまった。体験したとか云うことではなく嘘を云っていない。魂を千切って投げつけてきている歌が並んでいる感じでした。
その熱量を維持したまま、今年の2月に出されたのが第2歌集である『Rebirth』です。
ひとつの恋が終わった後の再生が、各章にわたって詠まれているのですが、まず、圧倒的に上手い。
きみの目を花火の青がかき消してどこまで言葉だったんだろう
さようならこれが夢ではないことを重力で知る坂をのぼって
前作もすごいな、と勿論思っているのだけれど、一首目はフレーズがすごい。「言葉」がここで出て来るのか。リアルタイムの花火じゃないように感じられる。二首目もこの下の句になるのか、と思う。前向きでありつつ、なんとなくこの世のことじゃないような幻想性を帯びている。…おそらく意図的に使う言葉を絞ってあり、詠みたいことを本当に抽出してきている感じで、濃度の高い歌集になっています。
彼女は聡明な人であるし、第1歌集を読むと言葉も豊富で、自分の心情を多角的に見つめる方法で歌を勿論詠めたと思います。けれど、敢えてじっくり自分のために(おそらく再生のための)言葉を選んでいるように感じました。
また、この歌集は写真付きの歌集で、斜め後ろの女性ではじまってそこからずっと最後まで笑わない。でも、最後の章の横顔でようやく笑っている(ように見える)顔になる。それに気がついてすごくほっとした自分がいて、歌に引き込まれていたことが解りました。
ひとまず、歌集のなかで自分がいちばん好きな歌を一首引いて、終わりたいと思います。
花を買う あなたなしでも美しい世界を一つずつ許すため
この歌はそう詠まざるを得なかった背景がきっとあるのだろうけれど、それでも最初から最後までめちゃくちゃかっこ良くて、大好きです。
自分はこの歌集を各章ごとに「花」と「海」でもっと読み解いてみたい欲があるのですが、それはいつか彼女の歌のファンたちと話し合うための楽しみとしてとっておくつもりです。
次回、14号のPDF選者には榎本ユミさんにお願いしております。キャスの方の選者には小俵鱚太さんを予定しているので、ここでユニット「きすたとエノモ」を再現させたいという試みです…!
では、次号もよろしくお願い致します。
恋愛短歌同好会会報ショートケーキソング第13号
https://drive.google.com/open?id=1H7eX3YBXo7WWvUA_dJK7yvcSyh9wQKRS
恋愛短歌同好会規約など
https://drive.google.com/file/d/1drVpBH0VsLsz7M1KXNqmQMmRzY_b94Or/view?usp=drivesdk