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映画『ルックバック』|藤野と京本が生きて喋って動いてる


あらすじ

絵を描くのが得意で、学年新聞に四コママンガを連載している小学生・藤野。同級生たちからも褒められて自分のマンガのセンスに自信を持っていた藤野だったが、ある日その自信が打ち砕かれる。彼女の自信を打ち砕いたのは、隣のクラスの京本の画力だった。不登校の京本本人には会えないままライバル心を燃やして絵の練習を重ねる藤野だったが……。
原作は藤本タツキによる少年ジャンプ+に掲載の読み切りマンガ。

※以下、ネタバレありの感想です※

感想

先日やっと観に行ってきました!
映画館に行ける日がなかなかなくて、公開が終わってしまうのではと思っていたけど間に合って良かった。本当に良かった。
原作を読んでいたので、映画館には観に行かなくてもいいかもな~なんて思っていたけど、これは映画館という作品に集中できる空間で見るべき映画だと思う。あと絵が(特に風景の絵が)めちゃくちゃ綺麗だったので大きな画面で見た方が感動が大きそう。

藤野と京本が生きてそこにいた

藤野も京本も、声優さんがとっても上手でした。
藤野の声にはあの自信家で強気な感じ、負けず嫌いな性格がよく出ていたし、京本の声からは藤野への憧れや、藤野と一緒に過ごす楽しさが溢れていた。

意外だったのは、京本が訛っていたこと。
京本!きみ、そういう喋り方だったのか!

確かに山形って設定だもんな……と思いつつ、原作を読んでいるときにはあまり意識していなかったところだったので驚いた。でも違和感はなくしっくりきて、『ルックバック』という作品に対する理解が深まった気がする。

美しく丁寧に描かれる風景

人物の絵はもちろんのこと、特に感動したのは風景の美しさだ。
特に、主題ではないものの山形の自然が美しく壮大に描かれていて、おぉ……!と思った。(とはいえ、あの田んぼや山や、冬には雪に囲まれた土地の風景をあれほど丁寧に描いているということは、そこにある閉塞感のようなものを表しているのかな、とも感じた。)

作中で京本は本屋で出会った背景画の画集に感動して、藤野とマンガを描き続けるのではなく美大に行って絵を学ぶ道を選ぶ。
そんな藤野とリンクして、背景の美しさはひときわ輝いていた。

藤野にとっての京本、京本にとっての藤野

「かけがえのない友達」。こう言うとなんだかありきたりで陳腐な表現だけど、藤野と京本はお互いにそういう存在だったんだろう。

藤野はハキハキしていて友達が多そうだったが、でもその友達は藤野の絵やマンガへの情熱を分かち合いはしなかった。それを不満に思うような描写はなかったけど、丁寧に丁寧に描かれる京本との充実した日々は「同志」に出会った喜びに満ちあふれている。

一方、京本にとっての藤野も「同志」であり、それと同時に仲良くなってからもずっと憧れの対象だったんだろうなあと思う。手を引っ張って、新しい景色を見せてくれる存在。

ラスト、京本の部屋を藤野が訪ねるシーン。
複数冊ずつある単行本。読者アンケートのはがき。そして、壁に飾ってあるサインつきのはんてん。

言葉をぶつけ合って道を違えたけれど、このシーンにはずっと変わらない京本から藤野への思いが詰まっていた。

明日も、その次の日も

映画の最後は、東京に戻ってマンガを再び描き始める藤野の後ろ姿で締めくくられる。その窓の外は、暗くなり、また明るくなる。この風景もまた美しい。
明日も、その次の日も、藤野は描き続けるんだろうとそう感じさせられる。


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