合格・進学実績を正しく読み解く
東京都豊島区にある私立の女子校、十文字高校からパンフレットをいただいた。
その中に「進路データ」として2020年春の大学合格者数と進学者数が載っていた。ホームページでもきっちり公開しているところに好感が持てるね。
「過去3年間の合格数」などとボヤけた数字しか見せない高校に比べれば天と地ほど差がある。
今回はこの十文字高校の合格・進学実績を読み解く。
現役、既卒生(浪人生)それぞれのデータがあったが今回は現役生のみ集計した。
◆GMARCHは合格数の36%が進学
「合格数 / 進学数」で書いてある。
早稲田 5名 / 3名
慶應 4名 / 4名
上智 3名 / 2名
東京理科 8名 / 5名
学習院 9名 / 5名
明治 14名 / 8名
青山学院 12名 / 3名
立教 16名 / 7名
中央 10名 / 2名
法政 14名 / 2名
2020年春の卒業生が295名なので、早慶上理に行けるのは14名。4.7%
なお国立大には6名が合格し、6名とも進学している。
ざっとだが、十文字高校に行って国立大か早慶上理に進めるのは上位6.8%。クラスで3番以内。
GMARCHも含めれば16.3%といったところだ。
青学、立教、中央、法政は合格者の半分以上が辞退している。
一人で複数の合格を得たか、より上位の大学に受かったためだろう。
大学入試ではこのように「一部のお利口な子が、複数の合格数を稼ぐ」ことが多い。
十文字の例ならGMARCHで75名の合格だったが、進学者は27名。実際は浪人生の合格数も入れたりするので見た目の数字は大きくなる。今春の十文字なら現役浪人あわせて95名が合格数。
早慶上理の合格数は23名。「295名の生徒がいて118名。十文字高校に入れば、40%が早慶上理かGMARCHに行ける」と勘違いするアホな保護者はいませんよね。
見かけの数字ではそう誤解できますが、実際の進学数は早慶上理+GMARCHで41名。13.9%だ。
1クラスのうちGMARCH以上に進学できるのは約5名ということになる。
◆指定校推薦を抜くと
以下は旺文社「2021年度 高校受験案内」と「2021年度 中学受験案内」から抜粋した数字。
2019年度の十文字高校が持つ指定校推薦枠は
東京理科 4
学習院 2
明治 2
青山学院 2
立教 3
中央 1
法政 3
ここから下は私の推測。
東京理科大は5名が進学しているが、うち4名が指定校推薦での進学だとすると一般での合格者は1名。
法政は指定校枠3名あるけどすべて使っていないということか。2名が使って2名が進学だとすると、一般入試で法政にいった子はゼロとなる。
大学合格実績は中学から在籍するお利口な子、もしくは三段階の特待生資格を得るような子が稼ぐのだろう。
十文字は中学入試もあり、高1の内部進学生の割合は約48%。高2から混合クラスとなる。
十文字中は第二志望、第三志望として受ける子も多い。
2020年度 中学入試では
第一回 募集人数50名 受験者120名 合格者95名
第二回 募集人数60名 受験者190名 合格者113名
第三回 募集人数20名 受験者77名 合格者33名
第四回 募集人数20名 受験者80名 合格者36名
得意型 募集人数10名 受験者47名 合格者36名
思考力型 募集人数10名 受験者36名 合格者27名
募集人数の倍くらいの合格者を出している。他中学校の合否結果によって入学数が変わるからだ。
第一志望、第二志望の中学校に落ちて、十文字に来るという子もいる。
そういった子は1つ2つ上のレベルだから、基礎学力が高い。まさに大学受験で活躍してくれるような子だ。
彼女らがスーパー特選クラスに進み、合格実績を稼いでくれているのだろう。
ちなみに、私立トップ中学校は合格者数をそこまで多く出さない。辞退者が少ないから。
例えば、雙葉中学校は募集人数100名に対して合格者は120名前後しか出さない。早稲田高等学院中も120名の募集人数に対して合格者は140名未満。
開成中は300名の募集人数に対して390名ほどの合格者を出す。筑駒との併願者を見越しているのだろう。
その筑駒中も120名の募集人数に対して130名ほどの合格者を出す。
何が言いたいのか。
合格実績を額面通りに信じてはいけないということ。
当たり前だが私立高校は多くの受験生を集めたい。少しでも見栄えのよい数字を見せるのは当たり前。
受験生とその保護者がそれを正しく見抜いてほしい。カモになるなということだ。
◆単願推薦でギリギリ入ってはいけない
「どうしても十文字高校に行きたい」と思っている子はいい。ぜひ受験し、合格を目指してほしい。
そうではなく、都立を目指していたんだけど受験勉強が苦しくなって単願推薦に逃げるようなことだけは止めておきなさい。(あえて逃げるという表現をする)
さいわい十文字は併願もあるので、都立を第一志望として受験することができる。
都立第一志望で十文字にも魅力を感じるなら、都立と併せて十文字も合格するつもりで勉強してほしい。
その上で十文字に行きたいのなら、十文字に一般入試で合格して都立入試を辞退すればいいだけだ。