小児がん女子・シーズン2(8)
鼻血が止まらなくなった日から数日、少しずつ白血球が回復してきた。この分ならクリスマスは家に帰れるかもしれないね、などいっていた19日のこと。
長女は高熱を出した。朝、少し高めで昼近くに落ち着き、午後の検温をしたときだった。美人の看護師さんと「顔色もよさげだし、あっても37℃くらい?」などと話していたら、39℃オーバーだった。
「インフルエンザかな!」と言うと、長女は「検査イヤなんだけど」と心底嫌そうに言った。すぐに主治医が来て、容赦なく鼻に棒を突っ込んでいた。長女はお気に入りの看護師さんに抱きつき、うわーっと泣いていた。
手術も拒否しない長女が、この検査だけは抵抗するのだから、あのおぞましい鼻に棒を突っ込む検査は(大人でも)泣いてもいいんだ。
しかも、あんな検査しといてインフルエンザじゃないってどういうこと?
後日、それがカビが引き起こした肺炎だったとわかった。長女は一時的に個室に移された。
40℃の熱が出たせいか、長女は「トイレのドアがさ、開いたりしてさ」とか「カーテンが開くんだよ、怖くない?」とか言っていた。それが主治医に伝わり、眼科に連れていかれていた。
看護師さんの一人は、「病院だから怖いこと言わないでー」とキャッキャッしていた。そうだ、熱でどうのではなく、見ちゃいけない的なものかもしれない…のか?
結局、長女は病院でメリークリスマスだった。肺炎は治っても、すぐに帰ってよしというわけではない。
しかし、長女はがっかりしても一瞬のこと。病院では病棟ごとにクリスマスパーティーがあり、ビンゴ大会などでかなり盛り上がっていた。
家に戻らなくても、同室の友だち達と楽しく過ごしていて、これはこれでよかったかな?と思っている。
クリスマス、義父母が再びお見舞いに来た。今度は元気な姿を見られたから安心していたようだった。
こんな感じで、化学療法1コース目後は、揺さぶられっぱなしだった。もちろん、苦しかったのは私ではなく長女だし、闘って勝ったのは彼女だ。
髪の毛が抜けるのもその頃には落ち着いて、帽子を被っていた。彼女の帽子は、トレードマークのようなベレー帽だ。
冬らしく、ファーのかわいいベレー帽。残っている髪を帽子の下から覗かせて、長女なりにおしゃれに気を遣っている。
もう見ることもないと思っていた地肌の大きなほくろも、すっかり見えるようになっていた。シーズン1の1コース後よりも、髪が一気に抜けた。
来年の冬には、かわいらしいショートカットに仕上がっているから大丈夫。
あと、闘病とは関係ないけれども、電車で20代前半くらいの複数の男女が大騒ぎしている。うるさいなぁ。
「かわいそうに。このあと、あんな悲惨な…あんな酷いことが待ち受けているとは…」と未来予測して溜飲を下げている。
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