映画『男と女』とBar Bossa
フランスの恋愛映画と言えば...クロード•ルルーシュ×フランシス•レイが描く上質な大人の恋物語
この映画を初めて観たのは、高校生の時。名画という名画を見まくっていたあの頃。その中でもこの作品は衝撃的だった。もしこの映画を観ていなかったら後にフランスに暮らすこともなかったと思う。それほど私の人生に強い影響を与えた映画。
配偶者に先立たれたカー•レーサーの男と脚本家の女が子供の寄宿舎への送迎の行き帰りに出会い、互いに惹かれ合う3週間を映像美で描く。
この作品の何が衝撃的だったというと、まずアヌーク•エーメの美しさ。言葉じゃない、視線が、話し方が、仕草が相手への想いを語る。じっと見つめた瞳を伏せる時、髪をかきあげる時の大人の色香を彼女ほど持つ女優を私は知らない。車内での二人の躊躇いがちな会話がふと途切れた際の沈黙が絶妙で、人生を重ねて来た大人ならではの惑いと間がそこにある。
そしていつまでも心に残る配偶者の亡霊のために引き返そうとするも進まずにはいられない恋の衝動、初めて共に過ごした夜が明けた時の妙にやるせない気持ち、そしてその後に襲う後悔、でもまた孤独から互いを求めあってしまう...学生の頃には分からなかったそんな気持ちの起伏も、今ならばよく分かる。
カラーやモノクロ、セピアのシーン、光、真夜中に車が疾走する場面、海辺の景色、過去に愛した忘れられない人との回想シーンをフランシス•レイの音楽がロマンチックに彩る。それはとてつもなくノスタルジックで切ない。
奥渋谷のバー『Bar Bossa』に初めて行った時、カウンターで「私、ボサノヴァで好きな曲があるんです。映画『男と女』に出てくる『サンバ・サラヴァー』という曲です」と、マスターの林さんに言うと二回目に来店した時にこのレコードをかけてくれた。どうやらレコードを探してくれたらしい。
とても嬉しかった。そしてその後も林さんは、必ずこの曲で私を迎え入れ笑顔にしてくれる。
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