[読書記録]「沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う」山舩晃太郎 / 好奇心と行動力
水中考古学者、という職業(?)があるのをはじめて知りました(厳密には考古学者の一分野で、水の中でも調査ができる方々のことを水中考古学者と呼ぶそうです)。
筆者の山舩晃太郎さんは世界中の海に潜り、数々の水中遺跡の発掘や研究に携わっておられます。ある時はエーゲ海、ある時はカリブ海、そしてミクロネシア…、薄い味噌汁のような透明度の川からリゾートとして有名な海まで。本を読んでいるだけで、世界中の様々な海や川に潜っているような気持ちになります。
私はほとんど泳げないので、このお得感は更にありがたいようにも思えます。(ところで、素潜りや泳ぎが得意でなくても、機械をつけて潜ることってできるんでしょうか…。いつか海に潜ってみたい気持ちは昔からもりもりとあるのです。)
また、この山舩晃太郎さんの、水中考古学者として身を立てられるまでの経歴は、ドラマか漫画のようなサクセスストーリーで、すごかったです。
憧れのテキサスA&M大学で勉強するために渡米したものの、初日にタクシーにぼったくられたり、注文できずにマクドナルドから逃げ出したり、TOEFLの読解で1点を取るなんていうスタートラインから、たった三年で英語を殆どマスターして、更に憧れのカストロ教授に自ら志願して弟子入りし、その後修士課程三年、博士課程四年、その間にも絶えず知への探求を怠らず、沈没船の3Dモデルを作成できる「フォトグラメトリ」を開発され、世界中から賞賛を集めたのです。その好奇心と行動力、猛烈です。
それを山舩晃太郎さんは
好奇心と行動力に脱帽です。すごいなぁ。こんな風に心を解放して好きなことへの探究心をずっと失わずに生きられたら楽しいだろうなあ。
ユネスコによると、100年以上前に沈没した水中文化遺産となる沈没船は300万隻を超えるのだそうです。その海底から発掘された古代船の木材や積荷は、まるで昨日沈んだかのように綺麗な状態であることが多く、それが水中遺跡の最大の魅力だと筆者は仰います。それは「タイムカプセル」だ、と。
きっと私が見たこともない世界がどこまでも広がっているのだろうなあ、と思います。世の中は私の知らないことだらけ。細胞のつくりのそのまた細かなミクロの部分から、宇宙に広がるまだ分からないマクロなことまで、海の底や空の上、まだ誰も行ったことのない場所や住んでいる家のリビングの片隅まで、私も生きているうちに少しでもいろんなことを知ることができたらなぁ、なんて、空を見上げてしまいます。
この本は、スピッツの草野マサムネさんが紹介して下さっていて、「面白そう」と私も手に取りました。誰かが教えてくれた、自分では手に取らない本ってそれだけでまた世界が少し広がる感じがします。
知らないことを少しでも知ることができるのは楽しいな。