「選ぶこと」にビビり散らかす私とピンク
選択や決定が苦手だ。
一世一代の重大事でなく、メニューだとか、予約の日付だとか。
「何でもいいですっ!」
と、誰かに振りかぶって決定権をぶん投げてしまいたくなる。
「なんでもいい」は投げやりに響くし、良くないとわかっているのだが、すぐ投げないと爆発する爆弾みたいなもので、持っているだけでとにかく不安と恐怖を感じる代物なのだ。
子どもの頃、何かを買って貰ったり、アソート菓子から一つ選ぶとき。
私しか使わないものなら、私の好みでテキトーに選んで構わないはずだ。
しかし尋ねる母の目をチラ見すると、ギラギラ光っている。
う"。
これは絶対に答えを誤ってはならぬ「クイズ$ハハオネア」だ。
ハハオネアにはいかなるライフラインも存在しない。
頼れるのは己の勘のみ。
「えっと、Aで…」
恐る恐る、一つを選ぶ。
ファイナルアンサー?と、母もんたが無言の真顔で問う。
結果、私の選んだ渾身の答えはいつも、「必ず」間違えている。
「本っ当にセンスない!Aは頭のおかしい人が選ぶ色だ。だいたいお前は…」
と、関係ない過去の「失敗」総決算言葉を1~2時間傾聴する羽目に。
ちなみに次回全く同じ選択が来て、それも2択で、「前回はAが間違い」という絶対確実な消去法によりBを選んだとしても、やはり不正解。
「前はAが正解だった」などと反論しようものなら更なる地獄。
「親に口ごたえ?センスない上に可愛げがないし…(4時間続く)」
父の場合、選択に関してはここまで人格否定することはなかった。
が、例えばコンビニのおにぎりを選べと言われ、本当にどれでもいいのかと念押ししたにも関わらず、じゃあ梅、と選ぶと、
「…えー。俺、梅が食べたかったのに…あーあ、食べたかったな、梅」
としつこく言われる。
…じゃあ最初から「梅以外で」って言えよっ!
母も同じ被害に何度もあっていたため、この時だけは母と「同志」になれたが、とにかくこの家で「選択」は大きい地雷だった。
これがずっと続くと、選択することに自信が持てないし、「正解」自体が定まらないので結局どうして良いかわからず、不安になる。
結局は何を選んでも不正解なのはうすうす判っていても、やはり正解を求める努力をしてしまう。
「Aの色はお母さん絶対的に嫌いな色だな。Bはきっと形が嫌い…」
と考えるクセがつく。
「私はAが好きだけど、母の”正解”に近いのはBだな…」
と自分の好みを自覚した上で、母の「正解」らしきものを便宜上、答えているうちはまだ良かった。
そのうち、自分の「好き嫌い」が自分でも本当にわからなくなった。
母と離れてからも、「母の正解」や、特に特徴がなく誰からも何も言われない「無難」なものを選んでいた。
「A(特定の色や形、キャラクターなど)が好きなんだね」
などと言われると、すごく戸惑う。
自分が好きだから持っているのか、母の「正解」に近いからなのか、一般的に無難だからか、さして好きではないけど似合うから、なのか…すぐに答えが出てこない。
いつか、なにかの行動療法的なやつで、
「自分が絶対に選ばないものを敢えて選んで、身につけてみましょう」
というのがあった。
私にとって「ピンク」は絶対に選ばない色で、どうしてもピンクしかなくて必要な場合しかピンクの持ち物はなかった。
母の「絶対に不正解」な色で、
「いやらしい色。バカな女が選ぶ色」
と言われてきて、たいていの「女児用」はピンクだったりするので、男児用を持たされることも多かった。
私自身、ピンクが好きな女児と気が合わないことが多く、母の「正解」とは別に、自分でもピンクが嫌いだと思い込んでいた。
だがよくよく考えてみると、ピンク色そのものより、
「女はピンク!ピンクはかわいい♪」
的押し売り感が嫌で、嫌っていた節がある。
母の「正解」の押しつけはすんなり受け入れて、日本の文化的な押しつけは嫌うなんて矛盾があるなぁ、と自分で苦笑した。
とにかくピンクを選ぶことは、私にとっては「素っ裸で街を歩く」くらいにとんでもない、ショッキングなことだった。
最初はビクビクしたが、
「ピンクを身につけても別に死にゃぁしない」
という当たり前のことがわかった。
「ピンクを選ぶ」をデフォルトにしてみると、同じピンクでも淡いベビーピンクのようなのは苦手で、ベリーピンクやショッキングピンクのような紫寄りの割と濃い色合いのものが好きなことに気づいた。
私のアイコンの着ぐるみ猫のイメージは、2000年代にウェブサイトをやってた頃から使っているが、ずっとブチの部分が無難な茶色だった。
名前を変えて再出発するに当たり、色を明るめのピンクに変更した。
色以外でも「絶対に選ばないもの」や「いつもと違うもの」を敢えて選んでみたり、選ぶ機会を増やしたり、選ぶ時に「なぜそれを選んだか」に少し注目してみることにした。
まだまだ選択も苦手だし、自分の好き嫌いもパッとわからないことが多いけれど、自分がどの観点でそれを選ぼうとしているのか、それに対して好き嫌いの感情があるかどうか、自分に問えるようになっただけでも、前進かな、と思っている今日この頃だ。
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