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勉強やお金に価値を置きすぎる社会への批判|朝日新聞Voice欄から

2025/2/9の朝日新聞声(Voice)欄に、『勉強できない人置いていかないで』と題して中学生の方の投稿が寄せられていました。

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この方は、東大卒のインフルエンサーの『勉強は時給4万円』という表現に対して、受験生を励ます言葉であろうと理解しつつも、受験の成功が高収入に繋がる学歴社会を浮き彫りにするものだと指摘していました。

そして、最近の学生は、小学校の英語や大学入学共通テストの情報Ⅰなどの科目追加、単純な授業数の増加や教科書のページ数の増加など、学ぶことの負担が増えていて、勉強が苦手な人を置いていかないでほしいと訴えられています。

こういった状況に対して、勉強ができる人が社会において有利になる傾向にあるのは不公平であり、勉強以外の様々な才能、例えば技術や芸術なども社会でもっと評価されるべきであると述べていました。


中学生でそこまで考えられているのは大したものだと思い、また、こうして発信するのも優れた行動力を持った証だと感心しました。こうした思考や行動力は、学歴を得るための勉強だけでは得られない貴重な才能であるように感じます。

さて、この方は、勉強ができるできないで評価される学歴社会を批判し、それ以外の様々な才能も学歴と同様に評価されることを望んでいます。

学歴社会は今に始まったことではありませんが、実は学校教育というのは、本来は学歴社会を助長するものではなく、個人の様々な才能を活かすことを目指しているのをご存じでしょうか。

以下は、日本の教育の在り方を定めた「教育基本法」ですが、教育の目標を定める第二条二項には、以下の様に定められています。

(教育の目標)
第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。

二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。

教育基本法

ここだけ見れば、日本国としての教育方針は学歴主義ではなく、個々人の価値とその能力を伸ばすことであり、その能力は職業や生活に関連を重視することだと分かります。

しかし、現在の学校教育の現場や社会の常識においては、法の精神は失われており、「教育=学歴=高収入=幸せ、正解」のような価値観が蔓延していることは残念なことです。

学歴社会において有利に立ち回れる人は、恐らく以下のような能力に優れた人でしょう。

  • 記憶力(効率的な知識の習得)

  • 論理的思考力(与えられた条件から結果を導く)

  • 計画性(試験に合わせて計画的に学習を進める)

他にもあるとは思いますが、上記3つは学歴を得る上では非常に影響の大きな能力であると思います。これらに優れた人は、学歴社会において、圧倒的に有利であるということです。

勿論、これらの能力が高いことは悪いことではありません。寧ろ良いことだといってもいいくらいです。勉強に限らず、実社会においても役立つ能力です。記憶力は、知識を必要とする職業には不可欠です。論理的思考力はあらゆる職業において物事を考え解決するのに役立ちます。計画性も長期的なプロジェクトをこなすのには必須の力です。

しかしながら、これらだけが社会において必要とされている能力ではないことも事実です。芸術は感性や想像力が求められるでしょうし、職人のような技術職には、集中力や熱意、忍耐力が求められるでしょう。

そういったことに優れている人が、学歴社会においては劣った人というレッテルを貼られるのは、悲しいことであり、また、社会の損失でもあります。

また、学歴社会の言う高収入による経済力の獲得が人生の成功である、というのも唯一無二の正解とは言えないでしょう。事実、朝日新聞に投稿された中学生の方のように、万人がそう考えているわけではないのですから。

お金は確かに必要です。しかし、最低限生きていけるだけあれば良く、自分らしく生きることをより重視する人も多くいるでしょう。そういった人にとっての学歴社会は、社会によって自分の在り方が否定されているようで、生きづらいものだと思います。

教育基本法の目標にあるように、学力だけでなく、個々人の個性や能力を職業や生活に活かすことが広く価値があると認められ、勉強が苦手でも他の得意分野で同じように評価される社会が望ましいと、私も感じています。


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Torch-Truth Seeker
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