ドラマ感想 ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪 第3話感想 ヌーメノールが栄えていた時代
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ついにやって来ましたヌーメノール。いやぁ壮麗。人間文明は凄い!
話には聞いていたけど、いったいどういう立地に建てられた王国なのかよくわからなかった。中つ国から少し離れた西側の、そこそこ大きな島に作られていたのがこの王国(少し離れているし、しかも後に島ごと沈んでしまったので、いわゆるな「中つ国地図」には記載されていない)。昔の中つ国にはこんな王国があったんだなぁ……。
第3紀の時代、やたらとでかい彫像があちこちに残されていたけど、みんなヌーメノール時代の遺跡だったんだな……。
王国の全景。画面の中央、全ての道路が集まるところに少し目立った特徴の建物が見える。あそこが王宮。後のミナス・ティリスに形が似ている。
第2紀が終わる頃、ヌーメノールは島ごと沈む……という危機に直面する。それを事前に察知したエレンディルが島を離れ、南方国の目の前に要塞のような城を作った。それがゴンドールのミナス・ティリス。ミナス・ティリスの城はヌーメノール時代のお城の形を元にしていたようだ。
王宮、謁見の間を出てすぐそこにある中庭に、「王の木」が植えられている。この木も後のミナス・ティリスに移し替えられる。王の木は間もなく花を散らせてしまい、その後アラゴルンが帰還する時までずっと枯れたままになっていた。王の権勢の衰え、そして王の帰還を予知させる木となっている。だからこの木は見たままの植物ではなく、「霊的な力」で咲いたり枯れたりする木……と考えた方が良さそうだ。
この人がこの時代の女王……ではなく、王位はまだ父親が持っているので、ミーリエルは「執政女王」という立場。
公務の様子。政治家達が一杯いて、わーわー言い合っている。王はこの人達の話を聞いて、まとめなければならない。西洋時代劇ではよく見かける光景だ。
奥の半円形ゲートの向こうに中庭と王の木が咲いている様子が見えている。
王城を出たところの平原。奥に見える「パラマウント」っていう感じの山は「メネルタルマ」という山。王城の俯瞰構図カットでもこの山は見えている。高さは4200メートル。
ヌーメノールにとって神聖な山で、この山頂に唯一の寺院があって、毎年最初に採れた果物を捧げている。
めっちゃ楽しそうなガラドリエル。そんなに乗馬が好きだったのか……。
それにしてもこのシーン、何コマ撮影なんだろう? 馬に乗って風を受けているのに進んでいるよう見えないコマ数ってなんか凄い。
ついに登場、イシルドゥル。
うわっ、こいつが……。
なぜ「こいつが」と思ったのかというと、2001年公開『ロード・オブ・ザ・リング 第1章』のプロローグを見てみよう。こいつがやらかしたことによって、サウロンとの決着が3000年も伸びてしまった。登場からいきなりサウロンの囁き声が聞こえていたりと、なかなか不穏な未来を予感させている。
なんで「イシルドゥア」じゃなくて「イシルドゥル」なんだろう?
でも……ちょっと待ってくれ。話を整理しよう。
イシルドゥアの生没年は第2紀3220年~第3紀2年だ。イシルドゥアはエルフの血を引いているので、223歳頃まで生きて、最終的にはオークの襲撃に遭って死亡している。
第2話でエレギオンの領主にして名工・ケレブリンボールが登場した。生まれは第1紀の頃で記録がないのでわからないが、死亡したのは第2紀1697年だ。
エレギオンとモリアはミスリル交易でお互いに繁栄していた……という話だが、ドラマの第2話の段階でまだ交易が始まってなかったから、「これから交易するんだろうな」という時期だと考えていたが。
ところがイシルドゥアが登場してしまった。あれ? このドラマの設定、何年だ?
イシルドゥルの妹、エアリエンが登場。
むむ……イシルドゥアには弟のアナーリオンがいたが、妹は……。
うーん、じゃあこの人物は「イシルドゥル」であって「イシルドゥア」じゃないんだろうな。単に名前の似たキャラ……ってことかな。ではこの若者がいつかサウロンと戦うこともないのかな。
それにしても、船、実際に作ったんだろうな。CGじゃないだろう、これ。これを作ってしまう予算って凄いな。
ただ描写に「おや?」というのがあって、ガラドリエルが寝ているこの場所。ハッチの真下だ。ハッチの真下というのは階段があるか、あるいは積み荷を降ろすためのクレーンが上に設置されている……という場所だ。そんな場所にベッドって……。ハッチは強度的にも弱いところなんだが。
こちらのカットを見ると、ベッドの下にさらにハッチが見える。ということは積み荷を降ろすほうのハッチだ。
なんでそんな場所にベッドが敷かれてあるのか……というと「照明」の問題。ハッチの真下に置かないと光が自然に入ってこず、綺麗な絵で撮影できないから。
船の大きさから察するに、たぶん「船室」と呼べるものは船長室があるかどうかって感じでしょう。もしも「客室」があったら、ガラドリエルはそこに寝かせるはず。船員達はハンモックで眠る。賓客を迎えるための船ではない。
ヌーメノールの由来は、エルロンドの双子の兄弟であるエルロスの頃に遡る。エルロスはモルゴスとの戦いで人間とともに戦い、人間と強い結束で結ばれ、その後「不死の運命か、死すべき運命か」を選択するときになって、「死すべき運命」を選び、そのまま人間界の王となった。
そのエルロスが建造した国がヌーメノールで、その建造は第2紀32年。エルロスは初代ヌーメノール王となり、第2紀442年まで統治した。エルロスは「死すべき運命」を選んだものの、それでもその後500年も生きたし、末裔達もみんな500歳くらいの寿命を得ることができた(その後、末裔達の寿命は少しずつ短くなっていく)。
ガラドリエルがエルロスの双子の兄弟と仲が良かった……というのはもちろんエルロンドのこと。エレンディルの御先祖の話をしている。1000年前や2000年前の話題をついこの間の話みたいにするのがエルフらしい。
人形劇。主役はなんとガラドリエル。イシルドゥルも「え? ガラドリエルが来てる?」とビックリ。ヌーメノールの人たちからすれば、御先祖の知り合いで、なかば伝説上のような人物。ここにガラドリエルが現れたら、「本人登場!」で大騒ぎだろう。
さあて古い資料から謎のサインの答えが明かされる。答えはシンプルで「地図」だった。
この地域、この頃は「モルドール」じゃなくて「南方国」だったんだね。詳しい人が書いているのを見て知ったよ。
ヌーメノールの街の疑問は、やたらと道が狭いこと。
なんで道が狭いのか……というとそれはセットの大きさと関係している。セットが狭いと、広い道を作ることができない。中つ国は架空世界なので、現実のロケーションを使うわけにはいかない。街そのものをセットの中に建造しなければならない。
それはわかっているけど、もうちょっと広い道を見せて欲しかったなぁ。大通りとか見せないと、ヌーメノール王国の壮大さが見えてこない。俯瞰構図の壮大さに対して、道を見せる場面になると王国が狭く見えてしまう(こんなに人が多いのに道が狭いと、流通が大変だろう……)。大通りからそびえ立つ王城の威容とか画として見せて欲しかったなぁ……。
舞台は変わってハーフットの集落。お祭りのようなものが催されていた。
彼らは何に扮装しているのだろう?
たぶん、「死んでいった人たち」だろう。ワーグのような獣の姿があるが、ハーフットにとってワーグのような獣が死の世界に誘っていく象徴的な存在なのだろう。どうやら旅暮らしの最中、死んでいった人たちを称える風習がハーフットにあるらしい。
ハーフットは農耕をやっていないので、自然から得られる収穫物が頼り。旅暮らしをしていて、そこで得られる収穫物がなくなると次の収穫地へ……という感じに移動するのだ。
もちろん「採りすぎる」と将来その森から得られる収穫物がなくなってしまうので、全てを取り尽くさず、ある程度収穫してもう充分だろう……となると次の収穫地へ移動するという感じだ。
家に車輪が付いていて、リヤカーのように移動できるように作ってあるから、1年の間に結構な頻度で移動するのかもしれない。
お祭りの夜。村の長がみんなの前で、死んでいったかつての人たちの名前を挙げている。
まるで楽園のような暮らしをしているハーフットだが、実際には危険と隣り合わせ。生活の中で多くの人々が日々死んでいっている。
ポピーはある名前を聞いた瞬間、目に一杯の涙を浮かべる。説明はないが、きっと親しい間柄の誰かを亡くしているのだろう。
その翌日、足を怪我しているラルゴの一家は行列の最後尾に回されてしまう。足を怪我して文字通りの足手まといの存在になったし、しかも正体不明の「よそ人」を集落の中に連れ込むという「掟破り」をしてしまった。そのための制裁だ。
これは小規模血縁社会に実際にある風景で、部族の中で「もう助からない」という人が出たとき、居住区を移動するときに連れて行かず、置き去りにする。置き去りにして遺棄し、その死に直面することを避ける。小規模血縁社会ではそうやってコミュニティを存続させる。穏やかな結束があるが、ある面では冷酷なのが小規模血縁社会だ。
ただしチャンスが与えられることもあり、パラグアイのアチェ族は置き去りにする人に対し、少しの薪と食料と水を残していく。もしも自力で後を追いかけてきたらそのままコミュニティに戻ることを許される。
今回の制裁も、もしも追いついてくることができたらコミュニティ戻しても良い……というものだ。
(移動先はおそらく先頭集団以外知らない)
ハーフットはこの方法で移動の時に病人や掟破りをした人を置き去りにして、死に追いやってきたのだろう。しかし後ろめたさも感じているから、お祭りの時に置き去りにして死に追いやった人たちの名前を挙げて称える……そうやって自分たちの気持ちを納得させているのだ。
そんなラルゴの一家を、“灰色の人”が手伝ってくれることになる。
やっぱりこの人、ガンダルフだよなぁ。
このシーンの灰色の人の表情がなんだかたまらない。「ごめんなさい」って感じが出ている。
疑問のシーン。ハーフットは「本」を作って星の形や運行を記録していた。ハーフットのコミュティの中に他に本は見当たらないから、この星の記録が彼らにとって重要であると推測される。
星の形を記録している理由は、まず「いつ移動するのか」。次に「どこに移動するのか」。「あの星座が見える頃になると移動を開始しよう」とか「あの星を目印に移動しよう」という感じなのだろう。その目印を地上の何かではなく、星を目印に移動しているのだ。
ではなぜ星を目印に移動するのか?
おそらくハーフットの活動期間は昼ではなく夜の方が長いのだろう。ハーフットは人間から隠れて過ごしているから、人間が活動している昼は隠れて、夜に活動することが多いのだ。コミュニティの移動も夜間が多かったのだろう。夜になると地上の目印は何も見えないから、星を目印にしていたに違いない。
……という予想をずっと「~だろう」と書いてきたのだが、今のところ、ドラマの中でのハーフットは普通に昼活動している。コミュニティの移動も昼。
じゃあなんで星の運行なんて記録していたんだろう? 占星術的な何かだったのだろうか。私の書いた予想はだいた外れるんだ。気にしないでくれ。
南方国ではどうなっている?
なんとアロンディルだけではなく、砦に駐留していたエルフ達全員拉致されていた。
じゃあ砦に避難していった人たちどうなったのだろうか……? もしかして、塹壕の中で捕まっていた人たち、みんな……? この辺りのエピソードちょっと端折っている感じがしてわかりづらい。治療師のブロンウィンはその後どうなったんだろうか。
あ、こいつら「ゴブリン」じゃなくて「オーク」だったね。すまん、前回から間違えてた。私の意識ではオークはもっとデカいんだと思ってた。ゴブリンはもっと小柄な種だね。
ところでゴブリンやオークって奴らは頭が良い。ろくな教育なんてないような世界で生きているのに、成長するとみんなそこそこ知能を持つようになる。しかも規律正しく、偉い人に対する忠誠心を持っている。仲間同士の結束も強く、今回のような塹壕制作も全員で一致団結して仕事にあたっている。
人間だと規律や忠誠心といったものも教育されないと身につかない。それをなんの教育を受けずに身についているわけだから、オーク達は知能だけなら非常に高いということになる。
ただゴブリンにしてもオークにしても基本的に「モノを生み出す」という発想がない。人間から略奪し、その廃品を利用するという発想しかない。オークの使っているものって基本的には人間社会からの略奪品。ただし鉄の鋳造技術があるので、武器・鎧だけは自前で作るようだ。その鋳造技術で平和利用できる何かを作ったりもしない。
頭は良いが創造力を持つということがない。頭の良さや団結力を、人間社会の破壊だけに全てを注ぐ、とんでもない怪物達だ。生物学的な存在ではなくて、「モンスター」だからそういう理屈を越えた行動をやってのけてしまう。
人間は縄張り意識が強くなかなか結束しないし、教育を受けないと大集団で一致団結もできない。ゴブリンやオークは妙なところで人間を越えた能力を持っている。
エルフは自然とともに生きる種族だから、「大木を切れ」というのは「信仰に反する」みたいな感じになる。これだけでもエルフにとっては拷問のようなもの。
この木だけど、途中まではスタッフが作ったセットだけど、途中からCGのはず……。その継ぎ目がわからないように作られている。
オーク達が掘り進めている塹壕を俯瞰から見たところ。
……なんか変じゃない?
地下のトンネルならまだいいけど、こんなに大規模な塹壕を掘っていたら、すぐに発見されるじゃないか。どうして今までオークたちが塹壕を作っていることにエルフ達は気付かなかったんだ?
塹壕を掘って何をするつもりなのだろうか……という疑問もある。別に銃を撃ち合う世界というわけじゃないし、目的はなんだろう……?
それに、人物が微妙に大きいような気がするし、光の当たり方もどことなく不自然。CG合成っぽいなぁという感じが出てしまっている。
ワーグ。第3紀の頃とだいぶ顔が違うなぁ。
おそらくワーグはひたすら品種改良されまくっているので、姿もどんどん変わっていっているのだろう。
さあ謎の人物、アダルが登場する……というところで第3話終了。
タイトルにもなっているのに、登場しないんかい!
相変わらず物語の進行は非常にゆったり。あまり事件らしい事件は起きておらず、まだキャラ紹介のフェーズから抜け切れていない。こういうところも『指輪物語』らしいけど。
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