2022年冬期アニメ感想 ジョジョの奇妙な冒険 第6部 ストーンオーシャン
『ジョジョの奇妙な冒険』! 第6部! ストーンオーシャンッ!!
『週刊少年ジャンプ』が誇る天才・荒木飛呂彦の作品だッ! 雑誌掲載時は2000年から2003年ッ! 今から20年前だッ!
本作を持って第1部から続いたジョースター家とDIOとの因縁に終止符が打たれるッ! また週刊誌掲載もこれで最後となり、『ジョジョ』の歴史はこの作品を持って一段落ということになるッ! 『ジョジョシリーズ』そのものはこれで終了ではないが、『ジョースター家とDIO』という対決の物語はここで幕が下りるッ! 100年以上に及んだ戦いの最終局面だッ!
『ジョジョ』の最終局面を飾るのはッ! 意外! 女だとォォーッ!
そして舞台は刑務所ッ! 徐倫は罠に嵌められたのだッ! 逃げ場のない刑務所でいかに戦うかッ! そして、いかに物語を広げるのかッ! それが本作の見所となるーッ!
徐倫は恋人とともにドライブを楽しんでいたッ! そこにッ! 突然、男がッ!
跳ね飛ばしてしまった!
恋人は語るッ!
「彼は即死に決まってるじゃあないかーッ!」
もしも殺人がバレたら、俺たちは刑務所送りだッ! 離ればなれになってしまうッ! 輝かしい未来が消えてしまうッ! 死体を――隠すんだッ!
徐倫は言われるままに死体を隠し、運び、沼の中へ――ッ!
だが間もなく徐倫は殺人の罪で逮捕されてしまうッ!
弁護士はこう語るッ!
「検察側は君が全ての罪を認めれば、飲酒については目をつぶるそうだ」
そうなれば、徐倫の罪はただの『窃盗』と『過失致死』だけになる――ッ! そう教えられていたが――ッ!
嘘だった! 裁判官はこう語る!
「まだ『息のある被害者』を沼地に捨て、『改めて殺害』するという行為を、当法廷は許すことはできません」
な、なんだってぇぇーッ! 生きてただってぇぇーッ!
徐倫は騙されたのだッ! 弁護士が本当に守りたかったのは、恋人のロメオのほうッ! 全ての罪を徐倫に押しつけ、逃れるために、徐倫を生け贄にしたのだったッ!
こいつは外道のやることだぜッ!
徐倫にかせられた刑期は15年ッ! フロリダ州立グリーン・ドルフィン・ストリート重警備刑務所――通称『水族館』に収監されるッ!
15年! 15年! 15年! 15年!
今は19歳だから、出る頃には34歳ッ! 私の青春はここで終わったッ!
ここで作劇上の一つの問題が生じるッ!
舞台は『刑務所』! 主人公は『罪人』!
果たしてそんな主人公に読者は『共感』できるかッ! 少年漫画の主人公は『正義』でなければならないッ! 憧れと理想がなければ、共感の対象にならないッ! しかし『刑務所』という魅力的な場所を物語の『舞台』にしたいッ!
このために、荒木飛呂彦はかなり回りくどい方法で、徐倫を刑務所送りにするッ!
まずはじめに、車を運転していたのは、恋人のロメオのほうッ! そして、そのロメオは自分が罪から逃れたいために、徐倫を生け贄にしたッ! さらに悪徳弁護士に騙された、という経緯を作ったッ! 徐倫の周りに、これみよがしな『悪党』を配置するッ!
確かに徐倫は死体を隠したッ! 死体を隠すのは罪に当たるッ! しかし、それは愛すべき男性を守るためッ! これには『共感』が可能だッ!
こうして『何も罪を犯していないのにもかかわらず、刑務所送りにする』という最初の難関を突破するッ!
空条徐倫は、『正義』の存在のまま、騙されて刑務所送りにされたのだッ! 少年漫画で刑務所を舞台に……という難題をこうして実現させたのだったッ!
が、徐倫は――逃げたいッ! この最悪の状況から逃げ出したいと思っていたッ! なぜなら理不尽だからッ! こういうのはよォ、映画でもドラマでも最後には無実が明らかになって、解放されるじゃあないかッ!
物語が始まった当初は、徐倫は状況に対して後ろ向きに考えていたッ! だが、『運命の糸』は確実に徐倫に絡みついてくる。ジョースター家の『運命』は絶対ッ!
――『運命』ッ!
こいつは運が悪いわけでも、ロメオや弁護士とかいう小悪党に騙されたとか、そういう事件じゃあないッ! いつかやってくるジョースター家の『運命』だったのだッ!
だが『運命』の戦いをまだ認識していない徐倫は、『運命』から逃れることばかり考えていたッ!
間もなく徐倫は『矢』によって『力』を授かるッ!
スタンドッ! ストーンフリーッ!!
あたしはこの『石の海』から自由になるッ!
刑務所では何もかもが不自由ッ! だがそこからの自由を勝ち取るッ! スタンドはそのための力だったッ!
スタンド同士は惹かれ合う――。それが『ジョジョ』の中で作られたルールだッ! たとえ、刑務所という密室であってもッ!
さっそく徐倫は相部屋グェスと戦うことになるッ! 空条徐倫はジョースター家特有の洞察力を活かして、この一度きりでしかも短いバトルシーンの間に、『スタンド』と呼ばれるものの『性質』を理解するッ! 『スタンド』には固有の特徴があるッ! そして『スタンド』には射程距離があるッ! 徐倫は誰かに教えられるまでもなく、瞬く間に『スタンド』の性質を理解し、バトルに利用するッ!
そして第3話、4話『面会人』! そこに現れたのは――空条承太郎ッ! 徐倫の父親だッ!
親父……今さら父親面しやがってッ!
14歳の時も窃盗で捕まったけれど、その時には見向きもしなかったくせに――ッ!
面会人がお前だと知ってたら、来なかったッ!
だが條太郎は語る。
條太郎「お前に殺人の罪を被せ、この刑務所に入れたのは、ロメオとかいうボーイフレンドではない。ジョンガリ・A」
條太郎「全てはこの男が仕組んだものだ。あの交通事故も……」
ジョンガリ・Aの目的は、徐倫をまず自分のテリトリー内である刑務所に誘い込むこと。絶対逃走不可のその場所で、確実に仕留めること。
刑務所という場所は――絶対に逃げられないッ! 『運命』と向き合わなければいけないッ!
まだ徐倫は『運命』から抗うつもりでいた。だがある事件を経て『運命』を受け入れるッ!
それは――これもジョースター家の忌まわしき伝統! 『継承』の儀式! それは――ッ! 『死』!!
ジョースター家は誰かが死ぬか、あるいは死を直面することによって、自身の運命を受け入れるッ!
ジョナサン・ジョースターは父親の病死を切っ掛けにッ!
ジョセフ・ジョースターは最初から父親と死別していたッ!
空条承太郎は母親が呪いで殺されるという危機にッ!
東方仗助は祖父の死を切っ掛けにッ!
大切なものの『死』が、ジョースター家の人々に戦う『決意』を固めさせてきたッ!
第6部においては徐倫は戦いの最中に父親の想いを知り、その死を目の当たりにして、戦いの決意を固める。それは暗闇の荒野のなかを進むべき道を切り開く覚悟を決めることであるッ!
そう、それこそ『運命』を受け入れるということだったッ!
それまでの徐倫は、いかに刑務所家生活から逃れるか、ということしか考えていなかった。もとより『無実』であるのに刑務所に送られてきた身だ。理不尽で刑務所に収監された身だ。いつか無実が明らかにされて、救われると信じていたッ!
だが、父親を救えるかもしれないッ! 條太郎の肉体から抜き取られたディスクを取り戻せば、蘇生できるかもしれないッ! その目的を持った徐倫は一転して、「懲罰房に入れられようが、この先いくら刑期が増えようが構わない」という考え方に変わったッ!
自分を『犠牲』にしてでも、誰かを救いたい――! かつて第3部で、條太郎は母親を救うための長い旅に出た時と、同じ心理に行き着いたのだッ!
この瞬間、徐倫は少年漫画の主人公としてのヒロイズムを獲得したッ!
ロメオと悪徳弁護士に騙されて……という切っ掛けではない。「可哀想なアタシ」なんかじゃあないッ! 宿命の敵と宿命の戦いを受け入れる覚悟ッ! 『ストーンオーシャン』はただの女囚ものではないッ! 『ジョジョの奇妙な冒険』なのだッ! ここからようやく『ジョジョの奇妙な冒険』としての『ストーンオーシャン』が始まったといってもいいッ!
『運命』は逃げるものではないッ! 受け入れるものなのだッ!
父親・條太郎を助けたいッ! 條太郎のディスクを持ったクソ野郎はこの刑務所のどこかに隠れているッ! そいつをどうにか探し出してやるッ!
だがまたしても、作劇上の困難が生じる!
これまでの『ジョジョの奇妙な冒険』には『旅行もの』という性質が背景にあったッ! イギリスッ! アメリカッ! 日本からエジプトへ至る様々な地域ッ! 杜王町ッ! イィィィタリアァァ--ッ!!!
常に変転する舞台ッ! 一度として同じ場所を舞台にしないッ! 常に新しい舞台ッ! それでいて、妥協のない描写ッ! だからこそ、『ジョジョの奇妙な冒険』は魅力的だったッ!
だが今回の舞台は『刑務所』だッ!! そこから逃れることはできないッ! するとどうしても『展開』が単調にならざるを得ないッ!
――『密室』ッ!!
閉鎖された舞台は作家を魅了するッ!
列車ッ! 飛行機ッ! 潜水艦ッ! エレベーターの中ッ!
作家達は様々な閉鎖された場所を物語の舞台としてきたッ!
刑務所もやはり魅力的な舞台ッ! 『刑務所もの』というジャンル自体が存在するくらいであるッ!
だが、密室は魅力的な舞台である一方、実は物語作りは非常に難しいッ! 密室ドラマには明らかな失敗作と成功作品の二つしかなく、その間は存在しないというくらいだッ! このもっとも『むずかしいこと』をどのように乗り越えるのかッ!!
密室ドラマが失敗する理由ッ! それは『物語に広がりが感じられないから』だッ! その場所以上の広がりを感じさせられなかった……ッ! それがありとあらゆる密室ドラマ失敗の原因であるッ!
そんなのはわかってる――ッ! 誰もがそう言うッ! しかしッ! 難しいからこそ、あまたの失敗作が存在するッ! 魅力的であることと扱いやすさは反発し合う関係にあるのだッ! では『ストーンオーシャン』はどのように描いたのかッ!?
最初から戦いの舞台を見てみようッ!
独房ッ!
面会室ッ!
農場ッ!
そして中庭へ至る道と工場ッ!
一度として同じ舞台を描かないッ! あたかも刑務所そのものが1つの『街』であるかのように描写され、展開していくッ!
“決して同じ舞台を描かない”
いかにして『刑務所』という場所に広がりが感じられるかッ! そこに全精力が注がれているッ! だからこそ『刑務所』という閉鎖空間であるにもかかわらず、展開が単調に感じないッ! 『刑務所』だからといって、『独房』だけが全てじゃないッ! 図書館もあるし、運動ができる広場もあるッ! 『刑務所』だからといってステージが狭いと感じられたら、その時点で終わりだぜッ! まるでそう思いながらでも描いてみるみたいだぜーッ!
だが、それでも問題がクリアになったわけじゃあないッ! 問題はいかにして徐倫が物語の核心――つまり犯人にたどり着けるか……だッ!
荒木飛呂彦は著書の中で『プラスの法則』と語るッ!
物語には『プラスとマイナスの法則』が存在するッ! どんな物語にもかならず『最終目標』があるッ! 『ジョジョ』シリーズでは宿敵をいかに倒すかッ! 『ドラゴンボール』ではいかにしてドラゴンボールを獲得できるかッ! スポーツ漫画ではいかにして、対戦相手に勝利して、優勝へとたどり着けるかッ!
そうした物語の目標地点に向かって行く実感がある時には、『プラス』。遠ざかっているように感じられる時には『マイナス』と感じられる。
バトル漫画であれば、敵は常にプラス、プラスで強くなり、主人公も強くなっていくッ! 『ドラゴンボール』を見よッ! 桃白白(タオパイパイ)は指一本で、あるいは舌の突きだけで人を殺せる強敵であった。だが後に天下一武道界の中で登場した時には、すでにザコキャラ。主人公がそこまで強くなった……ということを見せるためだけのキャラになっていった。これが正しいプラスの『パワーインフレ』だッ!
少年漫画の主人公は常に前進していかなければならないッ! 特に『週刊少年ジャンプ』は毎回のページ数が16ページッ! この中で『プラス』に感じさせるように展開させなければならないッ! それを達成できていたから、『ジョジョ』の面白さがあったのであるッ!
だがかつての『ジョジョ』も苦戦した時があったッ! それは第1部ッ! 『ファントムブラッド』だッ!
第1部の前半部分は、ほとんどがジョナサンが一方的にDIOから理不尽なイジメにあい続けるお話であるッ! この時の読者アンケートはひらすら不人気ッ! 貧弱! 貧弱ゥ! なぜなら展開がずっと『マイナス』だったからだッ! 当時の『ジョジョ』人気は「そこに憧れるッ! 痺れるッ!」というわけにはいかず、むしろ連載中断の危機さえ抱えていたほどだったッ!
それが一転したのは、DIOが「俺は人間をやめるぞーッ! ジョジョーッ!」の急展開があって、ジョナサン・ジョースターが力を身につけてから。そこから物語は『プラス』の展開に転じて、人気は急上昇ッ! ふるえるぞハート! 燃え尽きほどヒートッ!! これが今日に至るための導線に繋がったッ!
では刑務所が舞台である第6部ではどうあるべきかッ!
徐倫は父親の精神が封じられたディスクを取り戻したいッ! その手がかりに邁進していく過程が、この物語における『プラス』の展開となっていく。
では第5話で條太郎が倒れた後のストーリーを見てみようッ!
第6話は徐倫は1回お休みして、新しい相棒となるエルメェスが掘り下げられたッ! 対戦相手はマックィーンとかいうあぶねー奴だぜッ!
エルメェスという新しいキャラクターを掘り下げるための傍流的なエピソード……かと思いきや、マックイーンから強奪したディスクから、新しい情報を獲得ッ!
第7話、農場で作業していた囚人が行方不明になったのを切っ掛けに、徐倫たちが捜索に乗り出すッ! なぜ徐倫が捜索を志願したのかッ! それはマックィーンから奪ったディスクの中に、ホワイトスネイクが収集している大量のディスクの画像が映っていたからだッ!
それはトラクターのタイヤの中ッ! 捜索のついでに探索もできれば、父親のディスクをその中に見付けるかもしれないッ! こいつはコーラを飲んだらゲップが出るっていうくらい確実だぜッ!
フー・ファイターズとの戦いを経て、トラクターの中のディスクを探すと、なんと條太郎のスタンドディスクを発見ッ! 第5話でディスクを抜き取られて、第8話にはディスクの奪還に成功しているッ!
展開が早いッ! 「條太郎のディスクを取り戻す」という最終目的地に対して、おそろしく速いスピードで物語が展開しているッ! 一度だって停滞したり、マイナスになるようなエピソードを入れていないッ! つまり「余計なエピソード」が1本もないッ! 最終目標に向かって真っ直ぐ向かって行っているッ!
いかにして読者を飽きさせず、物語を邁進させるかッ! ベテランだからこその手際の良さがここに見て取れるッ!
大きな展開も常にプラスに向かっているならば、個々のエピソードも常にプラスで展開していく。
例えば6話のマックィーンとの戦いを見てみようッ!
マックィーンはいわゆる『スタンド戦』じゃあないッ! マックィーンはやたら自殺したがりのあぶねー奴だッ! だがマックィーンは必ずもう一人を道連れにしてしまうッ! こいつは悪党の匂いがプンプンするぜーッ! そのあぶねー奴を説得できるかどうかが、勝利の鍵だッ!
後半、マックィーンは電源コードを空中に巻き付けて、自殺を図ろうとするッ!
エルメェスが説得に乗り出すッ!
エルメェス「でもいい? 明日は月曜日ってのは嫌なものなんだ。でも必ず楽しい土曜日がやってくるって思って生きている」
↓
マックィーン「俺が逮捕されたのは土曜日なんだ」
マックィーン「あんた、本当な自分が助かりたいからそんな綺麗事を喋ってるだけだろ」
↓
エルメェス「てめぇのことだけを考えてるのはよォ! てめえのほうだぞ!」
↓
マックィーン「俺はついてるよ。最後の最後にこんな素敵な人に会えるなんて……ありがとうッ! ありがとうーッ!!」
マックィーン戦はジョンガリ・A戦とフー・ファイターズ戦の間に挟まれたエピソードで、少し『閑話休題』といったところがあるが、しかしプラスの構造は崩していないッ!
相手の台詞に対してどのように返すか、スタンド戦の場合はさらに強い技を、さらに強力な攻撃を……となるが、マックィーン戦ではいかに相手より強い言葉を出して、説得できるかッ!
マックィーンが「あんた、本当は自分が助かりたいからそう言っているだけだろ」と言ったら、エルメェスは開き直って「てめぇのことだけを考えているのはよォ! てめえのほうだぞ!」と返すッ! するとマックィーンは「響いたぜェ!」と言いながら、「俺はついてる! 最後の最後にこんな素敵な人に会えるなんて! 一緒になれるなんて!」と電源スイッチを入れようとするッ! より力強い言葉で応酬しあって、台詞を聞いているだけでも一級の芝居を聞いているみたいだぜッ! こんな作劇が面白くならないわけがないッ! 最高だぜッ!
だが『ジョジョ』の面白さは戦いばかりじゃあないッ!
フー・ファイターズ戦のラスト、畑の土に水分を奪われて絶命しかけているフー・ファイターズを、徐倫は水を掛けて救おうとする。
こいつを殺す意味はない。ホワイトスネイクにいいように利用されていただけなんだ……と。
――『尊敬』ッ!!
『ジョジョ』は邪悪な奴には容赦がないッ! だが正々堂々と戦う者、己の義を通す相手に対しては敵であっても『尊敬』を見せるッ!
第2部に登場したワムウを憶えているだろうかッ! 『ジョジョ』史上最強ともいえる圧倒的な存在ッ! もはや神にも等しいッ! 人間などは彼にとって、虫けらでしかないッ!
しかしワムウはジョセフ・ジョースターのとっさに見せた技に感心し、『尊敬』を見せるッ! この男は虫けらではないッ! 自分を圧倒するような存在になり得るかもしれないッ!
後にワムウは、シーザーが命懸けで繰り出した『血のシャボン』を破壊せず、見送っているッ! それは命懸けの行動ッ! 仲間を救おうとする男に対する『敬意』だったッ!
そんなワムウの死に際、ジョセフは風に散ろうとする彼に敬礼を送るッ!
『尊敬』に対して『尊敬』で応えるッ! 敵同士だが、美しい戦士たちによる掛け合いであったッ!
これこそ『黄金の精神』ッ!!
スタンド同士が惹かれ合うように、尊敬を向け合える同志は引き合えるッ! 命を救ってくれた徐倫にフー・ファイターズは『尊敬』を見せ、共に戦う仲間になるのであったッ!
『ジョジョ』は奇妙なポーズとバトルシーンが全てではないッ! 人間賛歌! 人間の素晴らしさは勇気の素晴らしさッ! だからこそドラマが熱いのだッ!
1クール最後の対戦相手はラング・ラングラーのスタンド『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』ッ! 1クール目最後に、『ジョジョ』らしいバトルが繰り広げられるッ!
だがその前に、『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』が登場するシーンを見ていこうッ!
階段を上がっている最中に突如、四つん這いの奇妙な男に襲撃されるッ! その追跡から逃れて、次に看守が見張りをしている連絡通路に入っていくが――ッ!!
『ジョジョ』の法則ッ!
新しい敵が出現した時、新しい現象が起きるその時――『沈黙』するッ!
言葉じゃあないぜ。『現象』で見せる。何が起きたか、その身で体験させる。そこから「何が起きているか」を考えさせるッ! そこで見る側も沈黙し、映像でなにが起きているか考えようとするッ! この瞬間、登場人物と同じ気持ちになれるッ!
この時も徐倫は沈黙し、奇怪な現象が起きていることに驚き、慌て、そして考えるッ! 何を言っているかわからねーと思うが、俺もなにをされたのかわからなかった……そういう『間』を経て、そして敵スタンドの性質を知るッ!
次に工場に移動しての本格的バトルシーンだッ!
徐倫が触れたものがどんどん無重力になっていくッ! 息ができないッ!
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雲のスーツを作る。ジャンピン・ジャック・フラッシュには射程範囲があることに気付くッ!
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ウェザー・リポート、敵スタントの射程範囲外に移動ッ!
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そこにラングが回転弾で攻撃ッ!
徐倫がラングの攻撃を防ぐッ!
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ラング、ドラム缶に穴を開ける。ドラム缶が破裂して、ウェザー・リポートに激突! 絶体絶命ッ!
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徐倫、スーツに穴を作って移動ッ! 体当たりでウェザー・リポートの軌道を変えて無重力空間の外へッ!
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ラング、生きたネズミを投げるッ! 血しぶきが飛ぶッ! 目が見えないッ!
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「勝ったッ!」第6部完!――ラング勝利宣言ッ!
ここまでのバトルで実に8分ッ! 次から次へと、めまぐるしく形勢が逆転していくッ! この緊迫感ッ! 最高だぜェェッ!
ここでも『プラスの法則』がふんだんに活用されているッ! 相手が出した手札に対して、どんな切り札を使うかッ! 単純にパワーとパワーのぶつかり合いじゃあ、最終的にパワーインフレを起こすッ! だから『ジョジョ』では「その時なにを選択するか」を重視するッ!
攻撃が防がれるなら、防ぎようのないドラム缶をぶつけるッ! 相手の能力が高いと見ると生きたネズミを爆弾がわりに使うッ! 次から次へと、間を置かず切り札を出すッ! 同じ手は使わないッ!
相手を追い詰めるには、パワーが全てじゃあないッ! その状況を見て、いかにすれば相手を追い詰められるかッ! それを見極めた上で物語展開を見るッ! だからこそ『ジョジョ』のバトルは世界一ィィィイイイイッ!!
そして再び『ジョジョ』の法則ッ!
「勝ったッ!」
『ジョジョ』においては、先に勝利宣言した方が敗北するッ! 勝利宣言を早まってはならないッ! 相手が勝ち誇った時、そいつはすでに敗北しているッ! ラング・ラングラーは早まった勝利宣言をしたッ! だから敗北したのだッ!!
ラング・ラングラーとの戦いの直後――徐倫は偶然にもプッチ神父と遭遇するッ! いや、偶然なんかじゃあないッ! プッチ神父=ホワイトスネイクは徐倫が中庭に来ることを知っていたッ! 様子を見に来たのだッ!
物語に停滞感を与えてはならないッ! 常に進んでいるように見せなければならないッ! ラスボスの姿を見せるのをいつまでも渋ってちゃあダメだッ! 偶発的にも遭遇させてしまうッ! その瞬間の緊張感を作り出すッ! これがジョジョ流ッ!
だがその直後、プッチ神父は毒ガエルが降り注ぐ状況に追い詰められるッ!
『ジョジョ』の面白いところは『最強のスタンド』が存在しないことだッ!
『ジョジョの奇妙な冒険 第5部 黄金の風』――アニメ版21話ッ! 組織のボス、キングクリムゾンは間違いなくブチャラティを追い詰めていたッ! だがその寸前で、見逃してしまっているッ! なぜならジョルノたちの仲間達が集まってきてしまったからだッ!
6人同時には相手にできない……。
キングクリムゾンは1人や2人相手では鉄壁の強さを誇るが、6人を相手に同時に戦えるほどの強さはないッ! 強いが『無敵』ではないッ! あくまでもスタンドの『性質』が強力というだけの話でしかないッ!
『第4部 ダイヤモンドは砕けない』のラスボス・吉良吉影のキラークイーンも、「都合が悪くなったら時間を巻き戻す」というトンデモスタンドだったが、肉体はごく普通の人間並みだったッ! 吉良吉影は、最後には車に轢かれて死亡しているッ!
単純に肉体の強さだけで言うなら、第2部のカーズとワムウがシリーズの中で最強だったはずだッ!
ラスボスだからといって、決して絶対無敵ではないッ!
プッチ神父はたかが毒ガエルくらいで追い詰められ、徐倫を見逃し、ディスクを取り戻すことに失敗するッ!
こうして空条承太郎の『精神』は取り戻され、『ストーン・オーシャン』の第1部は終了する! しかし徐倫の戦いはまだ終わりではないッ! 空条條太郎の『記憶』ディスクはまだ取り戻せていないし、なによりホワイトスネイクという危険人物は刑務所のどこかに隠れているッ! 徐倫の戦いはこれからだッ!
全体的に満足いく『ジョジョ』第6部であったが、一つだけ、引っ掛かるものがあったッ! それは――『作画』ッ!
今回の『ジョジョ』はずいぶん絵が乱れているんじゃないかッ!
個々のキャラクターだけの話じゃあないぜッ! 構図にも緊張感がないッ! およそ『ジョジョ』らしくないところがあるんじゃあないかッ!
特に7話と8話ッ! どのカットもパースが狂ってるッ! 空間があやふやで、妙な気持ちになるぜッ!
内側でなにがあったかは知らねえーが、続くお話では立て直ししてくれていることを期待しているぜッ!
次回