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ブレスオブザワイルド フィールドワークの旅 裏話!

 あとがきです。
 もともとは『フィールドワークの旅 その3』の中に含まれる予定だったのだけど、そこそこ長いから独立させようか……となった記事です。

 1年以上ハードディスク内で塩漬けになっていた記事をようやく公開! どうしてここまで時間が掛かってしまったのか……というと忙しかったから。間にいろんな作品を制作していて、1つのブログ記事を出すことすらできなかった。しかも作った作品はほとんどお金になってなくてね……どれもマネタイズに失敗しちゃってゴミになっちゃった、という話は別のところですでに書いているので省略するよ。

 1年以上塩漬けになっていた記事とはいえ、本文はすべて完成しているので、再編集にはそんなに時間もかからんかな……とか思っていたのだけどもそういうわけにはいかず。『ブレスオブザワイルド』のゲームを進めながら、ゲーム画面をキャプションしていたのだけど、その数がなんと1万5000枚もある! なんでそんなに画像を作ってしまったんだ!
 そういうわけで、『ブレスオブザワイルド』のありとあらゆるシーンが画像フォルダ内を探せばあるのだけど、探すのが大変……。探しても探しても見つからない。「確かこういう画像を作ったはず……」と思っても見つからない。仕方ないので別の画像を入れて仕上げたのだけど、その後にポロッと画像が見つかる。
 『ブレスオブザワイルド』の地名も忘れているから、記事中で「カザーナ列谷」って書いてあっても、いったいどこのことなのかわからず、改めて調べ直す必要があった。
 そんなわけで1つの記事を作るのにまるまる2日。記事が3本あったからかかった日数は6日。6日間何をしていたかというと、フォルダ内の画像をずーーーっと見続けていた。もう目がしんどくて大変。サムネイル画像ってあと2周りくらい大きくできんもんかな……。

 さてブログそのものの裏話。
 『ブレスオブザワイルド』の地形を見て思ったことを語ってきたけれども、『ブレスオブザワイルド』はこういったオープンワールードゲームとしては珍しいくらいに「サブテキスト」がない。
 オープンワールドゲームにはたいてい「物語内物語」というものがあって、その中でこの世界観においてどんな歴史があったか……が深掘りされていく。その物語の数が、直接作品に厚みを与えている。
 例えば『スカイリム』では作中でたくさんの本が手に入って、その本を読み解いていくと、『スカイリム』のなかでどんな歴史があったのか、わかるようになっている。  ただ、この手法には1つ問題があって……というのもお話がバラバラになっているからかえって物語の全体像が見えづらい。本をたくさん集めたら、物語を一貫したものとして読めるようにして欲しかった……。
 こういうのは『スカイリム』だけに限らず、RPGの「物語内物語」はバラバラにされていることが多いので、お話は断片的にはわかるけども、全体像がわかりづらいっていうのがよくある。

『スカイリム』の場面カット。ゲーム中に集めた本は、こうやって本棚に並べることができる。

 それで『ブレスオブザワイルド』だけど、『ブレスオブザワイルド』はこの手法を使っていない。「物語内物語」がない代わりに、なにかあったらしいと思わせる地形だけが残されている。はじめは単にゲーム的な都合でこういう地形が作られているだけかな……と思っていたけれど、でもよくよく周囲の風景を見てみると、そうじゃないぞ、と気付けるようになっている。
 例えばアッカレ砦とか、どうしてあの場所なのか――もしも敵が海からやってきたとして、おそらく軍団が進むであろう道を進むと必ずアッカレ砦に遭遇するようになっている。外敵を迎えて打つための要塞だった……ということがわかる。
 しかし不幸にして敵は内側から来てしまった……というのが最悪の誤算だった。ガノン軍はガーディアンを乗っ取り、ハイラル城の中心地から外に向かって進撃していった。アッカレ砦の大砲はすべて“外側”を向いていたので対ガーディアン戦ではほぼ役立たず。どうにもならず、アッカレ砦に逃げ込んだ人々はそこで命を落としていった……。
 ということが風景を見てわかるように作られている。それに気付いたとき、「うわっ、このゲーム凄いな」となる。
 世界観にこだわったゲーム……というのは世の中に一杯あるけど、こんなふうに地形や風景に歴史の痕跡が残っている……というゲームに出くわしたことがない。たいていは「物語内物語」で説明し、ゲーム中のフィールドはあくまでもゲーム的なものとして作られている。『ブレスオブザワイルド』はその逆をやった。「物語内物語」を作らず、地形や風景で歴史を語る。それでいてゲームとして面白い……。本当にトンデモない作りだ。

 実はブログ本編で取り上げなかったネタというものがまだまだある。
 例えばハイリア大橋の南に作られたシーカータワー周辺。大地が奇妙なめくれ方をしている。
 ハイラル地方はすぐ側にデスマウンテンという活火山があり、その周辺を見るとまだ活発に地形が動いていることがわかる。おそらく100年前はちゃんとした地形に作られていたであろうラウル丘陵東のハイラル軍事演習跡は、地形が動いてしまったために陥没してしまっている。ガノンによる崩壊後、100年の間に地形が変わってしまった跡だとわかる。
 しかし、ハイリア大橋の南のシーカータワーはそんなデスマウンテンとはまったく違う地域。こんな場所がいきなり地殻変動が起きて陥没したとは考えにくい。なんであんな変な地形になったのだろうか?
 わからないので空想を書くが、ガノンには地形を変える力があったのではないか。「終焉の谷」のように、地面を下から引き裂いて、動かすこともできた。こういう能力を頻繁に使えたかどうかよくわからないが……。もしもハイリア大橋の南に大きな砦があったとして、ガノンがその攻略に手を焼いて、最終的に「地形を変えてしまう」という奥の手を使ったとしたら……。

 この辺りは「それを示す痕跡がない」という理由で本編では採用されなかった謎。

 第1回では「双児山がビーム兵器で引き裂かれたのは、交易を潤滑にするためだ」……と書いたけれど、実は他にも仮説があった。
 『ゼルダ無双』時代のハイラル宿場町を見ると、非常に賑わっている様子がわかる。繁栄の程度でいうと、ハイラル城下町に次ぐものだった。『ブレスオブザワイルド』では予想できないくらいの賑わいぶりだ。

 このハイラル宿場町をずーっとたどっていくと、やがて大きな門に行き着く。
 この門がどこに繋がっているかというと……。

 これが門の反対側。始まりの台地へ上がれるようになっていたんだよね……。

 『ブレスオブザワイルド』時代ではこんな感じ。ピッタリ閉じられた門に、土砂がたまり、雨水が漏れないようになって100年ぶん溜まった結果、こんなふうになっていた。もしも門に穴一つ開いたら、とんでもない勢いで水が噴き出すことだろう。

 100年前の『ゼルダ無双』時代ではこの界隈も賑わっていた。きっとたくさんの参拝者を迎えるための施設が一杯あったのだろうと想像される。

 参道を登っていくと、時の神殿を筆頭に3つの神殿が現れる。各神殿のシンボルを確かめると、ディン、ネール、フロルが祀られていることがわかる。ここへやってくるとハイラルを代表する3つの神様を一度に詣でることができる。そういうわけで参拝客がたくさんやってきて、そこからさらに宿場町が発展していった……というのがこの辺りの町が発展していった経緯だ。

 そんな宿場町の道をずーっと遡って振り返ってみると、モヨリ橋から双児山の裂け目まで一直線で繋がっていることがわかる。
 ということは、まず賑わっている街があるから流通を便利にするために道を作った、という理由と、参拝に行きやすくするために作った……という2つ目の推測もできる。
 逆の可能性がある。参拝すべき宗教施設があるから道を作り、交通が便利になったから賑わっていった。……さてどっちだ?

 すると謎なのが「忘れられた神殿」。

 ここにはハイラル人にとって、もっとも偉大な存在である女神ハイリアの大神像がある。しかし地名になっているように「忘れられた」場所となり、誰からも管理されていない。でもこれだけ立派な施設があったわけだから、本当ならここが一番重要な宗教施設じゃないのか?
 簡単に考えつく理由は、「谷底」という立地であるため、一般の人が参拝に訪れるのはあまりにも大変で、後に「始まりの台地」に通いやすい場所が作られたために、この昔ながらの場所が廃れていった……。
 では次の疑問は、どうしてこんな場所に、隠れるように神殿を作ったのか。忘れられた神殿は上から見下ろすと普通の谷の風景に隠れてしまって、そこに神殿があるとはわからないようになっている。おそらくはそこに資材を持ち込んで作ったのではなく、岩壁をくりぬいて作った施設じゃないかという気がする。
 なんでそんな場所に、ハイリア人最大の信仰の対象を置いたのか。

 理由を3つほど考えていて、もともとはそういう宗教観だった。明るい地上に出てみんなで詣でるものではなく、本当はこういう地下に潜って密やかにお参りするようなものだった。
 もう1つ考えている理由はこの女神ハイリアが作られた当時は、隠れて参拝しなくてはいけないような宗教だった。もしかしたらかつてのハイラル地方には別の主流となっている宗教があって、女神ハイリアはどちらかといえばマイナーで、弾圧の対象になっていたかも知れない。
 ところが宗教戦争があって、最終的に女神ハイリアが中心的宗教になっていった。女神ハイリアは表舞台に出ることになったが、かつての信仰の場が変なところに残されてしまった……。
(この考え方を進めると、ハイリア人はもともとこの地域に住んでいたのではなく、別のところからやってきた……という推測も生まれてしまう。これも古い歴史なのでよくわからない)
 3つ目の理由は、これもガノン対策だったから。ガノンによって文明が徹底的に破壊されるおそれがあったから、ガノンに発見されないよう、あえて辺鄙なところに作った……。

 祠のミイラも「シーカー神」ではなく、「女神ハイリア」を崇拝している。ということはやはり女神ハイリアはそれだけ大きな存在であるのに、なぜか信仰の中心地が廃れてしまっている。この理由は何だったのか。
 シーカー族とハイリア人はあるとき激しく争いあったとされるがその理由も不明。この辺りのハイラル地方における宗教観に関する謎は、最後まで解けないまま……。

 宗教的なテーマとは別に、ゲルド山脈にも不思議な痕跡が見られる。

 ゲルド山脈北西部に、巨大な石像が一体だけ残されている。地形を見ると、どうやらこの石像は、山の壁面をゴリゴリと削り、その削ったところに作られたようだ。

 ゲルド山脈を地図上で見てみよう。こうして見るとすぐにわかるが、数カ所、不自然にえぐられた場所があることに気付く。おそらくこのえぐられた場所が英雄像が彫られた痕跡だと思われる。
 ではここで削り出された謎の巨大像はどこへ行ったのか?

 もちろん東ゲルド遺跡だ。ここには7体の巨大像が置かれていて、8体目がなぜか運ばれずに、事業は中断されてしまった。

 ゲルド山頂へ行くと、8体目の巨大像の手元にあるはずだった剣が放置されている。
 この場所にあるということは、岩壁から削り出された後、巨象は地上を通過していったのではなく、ゲルド山頂を通過して運ばれていた……ということになる。そんなことが可能なのは、シーカー族の技術でしかあり得ず、ゲルドもシーカー族の技術から恩恵を得ていたことがわかる。
 しかし巨大公共事業であった8体の彫像を掘り出す事業は、最後の1体……というところで中断されることになってしまった。それも、剣を山頂に残す……という雑な放置の仕方で。計画的に中断されたのではなく、慌ただしく中断され、放置されたのだ。
 ゲルド山に8体目の巨大像があることはゲルドの人々もどうやら知っているらしいが、しかしどうしてそうなってしまったのかまではもはや記録にも記されていない世界なのだとか。

 次にカルサー谷へ行ってみよう。ここは現在ではイーガ団が根城にしている場所となっているが、入り口を見ると、8体の英雄像が勢揃いしている。8英雄のミニチュア版だ。ということは、ここはもともとゲルドの聖所であったところだったが、時間の経過で宗教観が忘れられ、さらにイーガ団によって占拠されてしまった場所ということになる。
 それにしてもこの8英雄は誰だったのか。いったいいつ、誰がどういった思いつきでこんな巨大公共事業が始まったのか……。これを読み解くヒントはない。

 ハイラル南部のジャングルへ行くと、今度は謎の巨石文明の痕跡を発見できる。鳥と蛇をモチーフにしたオブジェがいくつも残されているが、これもなんなのかわからない。ハイリア、ゲルド、ドロンゴ、リト、シーカー族、いずれにも関連しない様式なので、それ以外の文明があったのかも知れない。

 ただし、カズリュー湖の古い神殿奥へ進んでいくと、そこに女神ハイリア像が置かれている。よくよく見ると、ハイリア王家の紋章も見いだすことができる。
 これはどういうことなのか。南に現在残されていない文化の人々がいて、それはハイラル王家の仕えていた……ということなのだろうか。

 これは私が気付いたものではなく、たまたま見たとある動画で紹介されていたものなのだけど……。

 胴体部分に刻まれている文様をクローズアップしてみよう。

 この模様の形をよく憶えてもらいたい。
 次に見てもらうのはハイラル各地にある「ローメイ」と呼ばれる遺跡の壁面に刻まれている文様だ。

 なんと同じ文様。
 他にも、カズリュー湖周辺のゾナウ遺跡によく見られる様式があるのだが……。

 やはり同じ様式がローメイ遺跡にも見つかった。

 ローメイ遺跡といえば「蛮族装備」を手に入れることができるダンジョンだ。ということは、蛮族装備のようなものを作る人々がこのような遺跡を作った……ということになる。それがローメイ遺跡のような、かなり壮大でしかもかなり複雑なもの……というのが不思議だ。
 あれだけの量の石を切り出し、綺麗に整えて、あのような遺跡を作り出した。あんな巨大遺跡を作り出すということは、実は相当に高い文明力を持っていたことが想像できる。なぜあんな巨大な遺跡を作ったのか……これはわからないが、おそらく強い戦士を尊重する文化だったんじゃないだろうか。
 ハイリア、ゲルド、ドロンゴ、リト、シーカー族のいずれにも属せず、現在は滅んでしまった何者か。彼らは何者だったのだろうか……。ハイラル王家によって滅ぼされたか、この地を去ったか、別の一族に吸収されていったのか……これもハイラル地方に残る謎である。
 もしかしたら彼らこそがハイリア人たちがやってくる以前から住んでいた人々だったのかも……?

 『ブレスオブザワイルド』には私にもまだ気付いていない要素は一杯ある。誰も気付いていないけれど、しかしよくよく見ると読み解くヒントになるものはあるかも知れない。それを自分で探して、考えてみるのもきっと楽しいだろう。

 さてさて、いよいよ『ブレスオブザワイルド』の続編『ティアーズ・オブ・キングダム』の予告映像が公開された。そのなかに驚くべきものが映っていた。

 なんとガノンドルフのミイラ! ガノンはそもそも死んでなかったわけだ。
 これでなぜガノンが肉体を伴って復活してこなかったのかわかった。肉体が封印されていたから、「怨念」という思念のみで復活していたわけだったんだな。また魔力の精度も全盛期の頃から程遠く先細っていた理由もわかる。
 ガノンはそもそも殺されていなかった。転生もしてなかった。殺さず、あの状態で縛り付けられてきたから本領を発揮できなかったわけだった。
(まずガノンを転生させないように、殺さず生け捕りにしよう……なんて悪魔的なアイデアを誰が出したのか……)
 そんなガノンの生きたミイラがハイラル城地下にあったということは……もしやこれがハイラル王家成立に関する謎にも引っ掛かってきそうだ。

 疑問はいくつも出てくる。いつからガノンはあの場所に封印されていたのか。1万年前からずっと? それとも別の時代に? どうやってガノンを生け捕りにした?
 現時点では何もわからない。この新たな謎を解くためにも、『ティアーズ・オブ・キングダム』がとにかくも楽しみ。この答えを知るために、早くあの世界観へ行きたい。

 はい、動画原稿として作っていたものはここまで。
 最初に書いた通り、ここまでに書いたものは実は音声化まで進めている。しかしいざ動画を作るぞ……というところで「どうやって?」という壁にぶち当たって、公開が頓挫してしまっていた。
 でもその音声データなんだけど……やっぱりあれじゃダメだ。東北ずん子さんに喋らせているわけだけど、あれだとどうしても「話術」が現れてこない。コンピューターソフトだから最初から最後まで、ずーっと同じテンポ感で話し続けてしまう。内容がどうこうというのではなく、「話術」がないから、面白いお話も面白くなくなる。あんな感じで喋っている動画を見ていると、だんだん眠くなってしまう。
 話速や話の強さ・弱さをコントロール可能なのだけど、これだけの長文をコントロールしようと思ったら、ものすごい時間が掛かって、それも効率が良くない。
 しかし現代は「文字」の時代ではなく、「言葉」の時代。いつまでも文字ばかりじゃダメだ。どうにかして言葉文化のほうへ進みたいのだけど……。いい方法が見つからない。
 方法が一つあるとしたら、喋りが上手い人に原稿を渡して、読んでもらう……ということだけど。やっぱり「経費」が必要だな……。
 残念だけど解決策が見つからないので、動画進出は先送りだ。

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