1月26日 近い将来、「脳」でゲームを操作できるようになります。
電ファミニコゲーマー:Valve、脳とコンピューターを脳波や電気信号でつなぐ「ブレイン・コンピューター・インターフェイス」を研究中。ゲームへの活用も視野に
〈引用〉
BCIとは簡単に言えば、脳とコンピューターを脳波や電気信号を通じて繋ぐインターフェイスのこと。氏はインタビューの中で、BCIを使えば脳波でゲームを操作するだけでなく、ゲームから出力される情報を脳に直接伝えることもできるだろうと、まるでSF作品に出てきそうな未来の構想を伝えている。
この仕組みを活用すれば、ゲーム機がプレイヤーの脳内と直接やり取りができるようになり、映像イメージを直接プレイヤーの脳に送ることができて、またプレイヤーも脳でゲームキャラクターを動かすことができるようになる。もうコントローラーもテレビもいらない。
ということは、これでフルダイブ型ゲームが実現可能となる。みんなが憧れた『ソードアートオンライン』はこの仕組みで可能になる。というか、この仕組みでないと、絶対に実現しない。
こういった研究は実は奥が深く……話は1957年スプートニクショックにまで遡る。
1957年、ソ連が初の人工衛星スプートニク1号が打ち上げられる。ソ連が打ち上げた兵器が地球軌道上をグルグル巡回し続ける、という状況が生まれ、ということは地球外からいつでもアメリカが攻撃されてしまうかも知れない……という恐怖が生まれた。
他の案件でもソ連の兵器・科学力がアメリカを追い抜くということがいくつも重なり、当時の大統領アイゼンハワーは「もうソ連には絶対に負けてはならない」、と2つ組織を結成させた。それがNASA(アメリカ航空宇宙局)とDARPA(アメリカ国防高等研究計画局)である。
NASAはみんなご存じ、宇宙船を開発したり、宇宙人の死体を隠したりしている組織だ。しかしDARPAはマイナーで知られていない。
DARPAの有名な成果といえばご存じインターネット。インターネットはもともと、核兵器をぶち込まれた後、地上が放射能で汚染されて核シェルターから出られなくなった状態でも連絡が取り合えるように、と開発されたもの。これを作ったのがDARPA。
他にDARPAでどんな研究が行われていたかというと、いわゆる「脳力開発」。脳の特定箇所に針をぶっ差し、振動を与えることでその人間にどんな影響が出るかを研究していた。この研究で、アメリカは集中力が無限に続くスナイパーとか(狙撃手は通常20分ほどしか集中力を維持できない)、いくら傷を負っても戦い続けられるバーサーカー兵士とかを生み出そうとしていた。
ところがそういう脳力開発って倫理的にどうなのよ、ってなり、アウトサイダー化して研究成果が封印された。それであまり知られていない研究となってしまった。
それでも実はこの脳力開発の研究はその後も続けられていて、その成果として実現しているのがTMS治療。経頭蓋磁気刺激法というもの。
パッと検索してみると実際のクリニックが出てきたので紹介しよう。
実は脳のどの箇所に電気信号を与えればどのような心理変化をもたらすか、これはすでに大分わかっている。これを治療として応用したのがTMSで、この手法を使うとアルコール依存症、薬物依存症、拒食症、不眠症……その他の改善が確実に期待できる。
こういった精神障害を抱えている人は、脳の特定箇所が弱くなっているから……ということがすでにわかっていて、そこに刺激を与えれば治療効果が出ることもわかっている。
人間の身体とは脳でコントロールされているものだから、例えば持病など、脳から直接治すように信号を出せば治るんじゃないか……と考えられ、将来的には薬物治療は時代遅れになり、直接脳に働きかけて治療する形が一般的になるんじゃないか、という展望もある。
このTMS、実はゲーム機として発売している。ただしアメリカのみの販売で、日本では入手できない。パッと検索してみるとちょうどいい記事が出てきたので紹介しよう。
Fou.us(フォーカス)というゲーム機で、上に挙げたTMSと基本的には同じもの。しかし医療的な認可が下りないから、じゃあゲーム機でっていうことで販売されている。こいつを装着してゲームをすれば長時間集中でき、しかも確実にスコアが上がる……と商品説明がある。
脳力開発研究で通常20分しか集中力が持たない狙撃手を、無限に集中し続ける狙撃手に変える……という研究に関する話を紹介したが、Fou.usはまさにそれ。あれをゲーム機に置き換えたもの。
こいつさえあれば執筆している時も無限に集中できるようになるから、ぜひ欲しいと思うのだが……アメリカのみの販売なのよね。残念。
AmazonでFou.usを検索してみると……あれ? 売ってる? 並行輸入品? でも品切れだ。残念。
さてさて、今回の記事はそういった1960年代から連綿と続けられてきた研究がいよいよゲーム機として活用される時期が来たよ……という話。脳に直接作用してゲーム世界を作るわけだから、『ソードアートオンライン』そのものというようなフルダイブ型ゲームもこれで可能になる。あの作品の中に登場してきたヘッドギアが、実はFou.usなどの流れを汲む機械である、ということがわかってくる。
またこういった研究はそもそも能力開発を重視して作られている。脳に働きかけて集中力を高められるようにしたり、入眠をスムーズにしたり、鬱を改善したり、拒食症やアルコール依存を改善したりとそうした能力開発の部分に強く作用してくる。
こういったものが、将来的にはゲーム機を通して、いかにも「治療」という気負いなく、遊んでいるうちに実現していくようになっていくわけだ。
もしも実現して普及していったら、未来の人々は何ものにも恐れず、どんなことにも意欲的で、差別もなく、みんな礼儀正しい人々になっていくことだろう。未来の人々はトラウマなんて抱えない。
単にゲームで遊んでいるうちに、様々な能力開発が実現できる、夢の未来が待っている。ゲームで遊ぶ人と遊ばない人で、人間性や出世に格差が生まれる未来もあり得るだろう。
ただ、フルダイブ型ゲームに対する懸念というのもあって、この仕組みでバイオレンスをどこまで表現するか、という問題。バイオレンスはエンタメの付きものではあるが、それをどこまでリアルに表現するか。
例えば『バイオハザード7』ではチェーンソーで手首切断される場面がある。フルダイブ型ゲームであれば、これを本当の痛みを伴ってリアルに……まさに自分の体験であるかのように表現することが可能になる。そんなことやられたら、トラウマってレベルでは済まない。
でも欧米のクリエイターはやたらとバイオレンスが好きだから、こういうゲームを作っちゃうんだろうな……。自分の体が殺人鬼に切り刻まれるシチュエーションを体験するゲームとか。そういうのを面白がったり、あるいは注目を浴びようとやたらと過激なものを作ったりする人とか現れるんだろうな……。それで政治を巻き込んだ騒動になるんだろうなーっという未来が見えてきてしまう。
それで倫理規制ができて、必要のないものまで倫理規制をかけられ、表現の幅が狭まっていく……そうなってしまうんだろう。
エッチなやつなら大歓迎なんだけどね。
もしもフルダイブ型ゲームなんか可能になったら、エンタメ面で真っ先に流行るのって、エロいやつだと思うよ。有名AV女優と、本当みたいなセックスができるゲームとか。脳からちんちんに刺激を送り込んで、快楽を引き出す仕組みだ(夢精みたいな感じ)。遠距離の相手とのリモートセックスなんかも生まれるかも知れない。
あと2次キャラとのセックスも……。おっと、版権が厳しくなりそうだ。気をつけよう。
ぶっちゃけ、フルダイブ型ゲームが流行するとしたら、まずエロから。エロVRよりはるかに衝撃度・拡散力があると思うよ。
エロ産業のみんな、参入のタイミングを遅れるなよ~!
で、ゲームコントローラーを触ることがないから、操作ミスでゲームオーバーになることがない。ということは、素人でもeゲームプレイヤーと戦えるのではないか! ……と思う人もいるだろう。
こんな記事を見付けたので、紹介しておこう。
→IGNJapan:Game Wellness Project、ゲームがプレイヤーに与える影響を検証した調査結果を発表
これはゲームをやった直後に問題を解く能力がどの程度アップするか……という実験によるもの。
その実験はさておき、注目すべき点は、プロゲーマーの問題を解くスピード。プロと一般人では10秒近い差が出ている。プロゲーマーは要するに、そもそも脳の速度が圧倒的に速い。脳だけの戦いなら勝てるか……というと絶対に勝てない。普通の話として、彼らは能力が高いからプロになれるのだ。
操作ミスという障害さえなければ対戦ゲームで勝ちまくれるのではないか……という期待を持った人は残念。純粋に脳だけの戦いになると、頭の回転が一番速いやつが勝つ。ゲームが下手な人が劇的に対戦が強くなる……というわけではない。そもそも脳でゲームを操作できる、といっても 「反応の遅れ」や「判断ミス」が消えてなくなるわけでもない。むしろそういう時にこそ、「脳が一番強いやつ」が最も称賛されるようになり、そういう人はもともと優秀なやつだった……ということが証明されるようになる。
対戦の強い弱いは、ゲームが脳で操作できるようになっても、コントローラーと操作する時代とたいして変わらないだろう。