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映画『インサイド・ヘッド2』 すべての感情がここに 音をたてすべり込んだ
いろんな感情といろんな思考がめちゃくちゃ刺激される、ピクサースタジオ最新作でした。
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母ヨロコビの成長物語
まず最初に思ったこと。
『トイ・ストーリー』が友だちを絶対に見捨てないという"社会性"を教える父ウッディの物語なら、『インサイド・ヘッド2』(と1)は経験する全ての出来事と、そこで生じる感情をありのまま認める"受容"を教える母ヨロコビの成長の物語だった。
『トイ・ストーリー』のくだりが唐突で意味わからんと思われるでしょうから、今から11年前に別のブログに書いたこちらの記事を貼っておく。
アンディのお父さんが一切出てこない『トイ・ストーリー』は、主人公ウッディがアンディの父的存在であったという見立て。
これを踏まえてピクサー最新作『インサイド・ヘッド2』を見ると、主人公ヨロコビがもうお母さんにしか見えない。ライリーの全ての経験とそこから生まれる感情をありのまま認め、包み込んで受容する母的存在。
といっても『トイ・ストーリー』と違って『インサイド・ヘッド』ではライリーのお母さんが普通に出てくる。だからヨロコビはライリーの育てのお母さんというよりも、ライリーがもともと持っている母性を司る存在というべきか。
もちろん最初っからヨロコビが完璧な母なる存在として居るわけでは全くない。
最初はライリーの経験の良し悪しを恣意的にジャッジしちゃう。にっちもさっちも行かなくなった時に他の感情たちから「どうしたらいい?」と聞かれて、途方に暮れたまま「わかんない」と答える。
そうなんだよ。母ちゃんも父ちゃんも、みんな最初は初めて母ちゃん父ちゃんやってるわけで、一寸先は闇なのよ。親もわからないことだらけの中で試行錯誤しながら、成長していく存在なのだ。
そしてクライマックスの、感情たちのあのシーン。
個々の感情に良し悪しなどない。全部ひっくるめて自分らしさを形作っているというメッセージと、ヨロコビがそこに気づいて母なる存在として成長する姿が一致してて、とんでもなく極上なクライマックスシーンだった。
我が家の思春期どものインサイド・ヘッド
今回、小5の息子と鑑賞したが、観賞後に息子は
「1に出てきた『ライリーのためなら死ねる』って言ってた理想のボーイフレンドをなんで出さないんだ!?」
って、ずっと言ってる(どこに目をつけとんw)。なぜかムカムカが活性化しているご様子。
一方ライリーと同じ年齢の中3の娘は、一緒に見に行こうと約束してたのに、前日になって友達と遊ぶのを優先してキャンセルしやがった。どうやらダリィが発動したらしい。
かと思えば鑑賞後に帰宅したら
「平成フラミンゴ(女子中学生に大人気の女性YOU TUBERコンビ)どうだった!?」
と真っ先に聞いてきた。後からイイナーが活性化したご様子。
※平成フラミンゴの2人は今回声優として本作に参加している。
思春期にも色々あるよね。
インサイド・ヘッド3以降を妄想する
『インサイド・ヘッド』はおそらく今後もライリーの成長に合わせて続編が作られていくはず。なので勝手に続編がどんな感情たちの物語になるのかを妄想してみた。
▪︎20代のライリー恋愛編
あの「ライリーのためなら死ねる」の理想のボーイフレンドが現実に現れる。この男を前にして、今作2でえらい波長が合ってて独自のグルーヴ生み出してたカナシミとハズカシが拗らせモードに。そのせいでライリーが自意識過剰になって目も当てられないことになる。そんな時、1の最後や短編『ライリーの初デート?』に出てきたジョーダンが、ずっとライリーに純粋な好意を寄せてくれていたことを知る。そこに胸打たれて最後にジョーダンを選ぶ『勝手にふるえてろ』的な展開になるとみた。
▪︎30代のライリー子育て編
ライリーとジョーダンの間に子どもが産まれて育児に奔走するが、思い通りにならない日々にムカムカとイカリが膨張。その反動でダリィも一層ダルくなり、感情起伏のジェットコースターが止められなくなる。更には司令部の崩壊を防ごうとイイナーが理想の子育てママのイメージを作り上げる。こうしてライリーが二重人格のようになってしまう『タリーと私の秘密の時間』的な展開になるとみた。
▪︎40代のライリー ノスタルジック編
今回2でコメディリリーフのチョイ役として登場していたナツカシが、ここらあたりで本格的に幅きかすようになってくる。そのうち暴走し出して、いい年こいたオトナなのに、ノスタルジックな思い出に溺れて日常の生活を見失ってしまうという、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!モーレツ オトナ帝国の逆襲』的な展開になるとみた。
50代…いやもう流石にメンドくさいw
(誰も知らないであろう)あの曲がずっと頭の中でリフレイン…
最後に超蛇足な話題。
今回2の特に後半あたりを見てて、頭の中でずっとある曲がリフレインし続けていて。
ほとんどの人が知らないと思うが、90年代から2000年代初頭まで活動していた名古屋のスカパンクバンド・小島 のこの曲。
エンドロールの音楽コレだったら良かったのに。(それは絶対にないw)
『リスペクトユアセルフ』小島
すべての感情がここに 音をたてすべり込んだ
ユー リスペクト ユアセルフ
記事タイトルはこの歌詞の引用でした。
まさかのゴリゴリの強モテパンクバンドとピクサーが結びつくという、よくわからん感情…。自分の頭ん中の感情たちこそ一番見てみたいわ。