【化学基礎】混合物の分離_その①<ろ過>~化学のモチベーション向上につなげよう~
化学基礎の最初の単元といえば、混合物の分離。
ろ過、蒸留(分留)、再結晶、クロマトグラフィー、抽出、昇華。
1年間を見通したときに、時間的な制約から、演示や紹介にとどめ、サラッと流してしまうという話をよく聞きます。
しかし、この単元は最も実験を取り入れやすく、そして、生徒の興味関心を高め、この後の化学の学習へのモチベーションUPにつなげやすいのです。
なので、私は分離の実験は全て授業に取り入れてきました。
今回は、混合物の分離のろ過についてです。
ろ過は小・中学校で学習済みなのでわざわざ高校でやらなくても、と思うかもしれませんが、やるべきです。ただし、やり方を確認して、教科書通りにやってもちっとも面白くありません。ここでは、私が実践してきた方法を紹介します。
タイトル
タイトル(実験名)は重要です。今回はろ過ですが、「ろ過」という用語は敢えて使用せず、
「砂が混じった食塩から砂を取り除くには?」とします。
「やってみたい!」「面白そう!」と思えるタイトルにすることを意識してきました。そのためには、方法や作業を書かないことも大切です。今回は探究的な要素も意識しています。
単元
物質の成分-純物質と混合物
目的
・粒子の大きさの違いを利用して、液体と沈殿物を分離する。
・ろ過の原理と正しい操作を身につける。
実験を進める上でのポイント
砂と食塩の混合物を水に溶かしてろ過しよう、と生徒に提示しても面白くなく、生徒のモチベーションは上がらない。実験ではなく、ただの操作(作業)になってしまう。操作(作業)が目的化しないようにすることが大切。
例えば、「料理に食塩を使いたいんだけど、なぜか砂が入っちゃった(混合物)。きれいな食塩(純物質)じゃないと困るよね?どうやって砂を取り除く?」のような導入にする。
この問いに対しては、小中学生でろ過を学習しているため、10年以上の経験から言えば、9割以上の生徒はすぐに「ろ過」がイメージできる。
実験はできれば2人1組にして多くの生徒が思考・操作に関われるようにする。ペア(グループ)で手順を考え、プリントに手順を整理する。
所要時間
導入と課題の提示 5分
思考と手順書作成 10分
実験 20分
考察と振り返り 10分
後片付け 5分
準備するもの
ろ過セット(ろうと台、ろうと、ろ紙、ガラス棒)
食塩と砂の混合物(砂がわずかに混じる程度。重量比で食塩:砂=20:1程度)
ガスバーナー(最近はマッチを使えない生徒も増えたので)
蒸発皿
三脚
金網
ビーカー
純水
手順
あらかじめ作っておいた食塩と砂の混合物を生徒に配布する。
課題を提示し、混合物を分離する方法を考えさせる。
実験プリントに手順をまとめる。手順は以下の通り。
食塩と砂の混合物を水に溶かす。(食塩が全て水にとけるまで)
ろ過する。
ろ液を蒸発皿に移し、ガスバーナーで加熱すると食塩が析出する。
実験プリントに結果と考察を記入する。
補足事項
ろ過の注意事項(ガラス棒の使用、ろうとの脚をビーカーの壁につける)については、敢えて最初に伝えず、実験の様子を見ながら確認するようにしていました。余裕があれば助手の先生などに動画を撮ってもらうのも効果的です。
生徒の感想・疑問など
ものをきれいにすることは、時間が少しかかったりいろいろな準備をしなくてはならないなと改めて感じました。日本の水道水はすごいなと実感しました。
実験の手順も自分たちで考えられたし、楽しくできたので良かったです。
実験の結果から、なぜそのような結果になるのか、どのような性質によってその結果が生まれるのかをきちんとまとめて理解することが大切だと思いました。
「砂糖」と「砂」でもできますか?
砂は水に溶けないからろ過で分離できたけど、水に溶けるもの同士だったらどうやって分離するのですか?
発展
「砂糖」と「砂」でもできるのか?という疑問は毎年出てきます。この問いに対しては、実際に授業の空き時間にやって写真(動画)を次の授業で見せてフィードバックしていました。砂糖の場合は有機物なので、加熱すると黒焦げになるわけですが。
まとめ
たかがろ過、されどろ過。
やり方次第で導入実験としては、とても意義のあるものになります。
特に、自分たちで解決方法、手順を考えさせる良い訓練になります。
混合物の分離シリーズはこの後の記事でもたくさんアップしていきます。
感想、ご意見等ありましたら、是非よろしくお願いします。
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