琴平町のメガネ店で未来を見る
夜、運転をしていてナビの詳細が読めなかった。
眩しいからかな、と思いきや、眼科で聞いてみたら老眼の始まりなんだそう。
遠近両用のコンタクトレンズを購入しに行ったら、これがなかなか見えにくい代物らしい。慣れないまま1箱使いきった。
さてどうしよう、と考えていたとき、たまたま琴平町の新町商店街の入り口にある「ダイオー光学」さんのオーナーさんと話す機会があった。そういえば、眼鏡屋さんだったことに気が付く。
同行していた人もメガネに目が留まった様子だ。2人して色々かけてみていたら、田舎のメガネやさんにしてはおしゃれなものが置いてある。(失礼)
わたしも、同行者もコンタクトレンズ歴はもう30年くらいになるので、いまさらメガネに変えたくないと話しながら、冷やかし程度に物色していた。
ところが、お互いにこちらのメガネの不思議な魅力に取り憑かれてしまい、気が付くと、本気モードでフィッティングを始めていた。
今、世の中は安くておしゃれなメガネが溢れている。
わたしも過去に2本ほど買ったことがあるが、すぐに飽きてしまい、もうその有名な安売り眼鏡店では買わなくなった。コロナのお籠もりの最中に、もう少しだけ高いチェーン店で買ったものが最後。
けれど、友人に「ださい」と言われて、つけなくなってしまった。自分ではおしゃれだと思って買ったのに、ださいとは….とほほ。
事前に顔の形の分類から、似合うメガネのタイプや形状を確認して、店員さんとも確認したつもり。
それなのに、どうして?泣
そうか、わたしはメガネが似合わない顔なんだ、と妙に納得してメガネはできるだけ付けないことに決めた。
ところが、このダイオー光学さんでフィッティングしていると、なんだかとても似合っているように見えてきて、次々に調子にのってメガネをかけていた。
すると、同行者と店主が同時に叫んだ。
「それ!」
「え?」
あまりにも二人の声が揃っていたので、びっくりしたのと、そのメガネの個性が強過ぎて、わたしは二重にびっくりした。
え?わたしにこれ似合ってますか?
自分で見たところ、全く似合っているように見えない。念のため店の前の道にいた人にも聞いてみたら、やっぱり似合っているとのこと。
店主によると、無難なメガネは今までの人生の延長上にある。
自分の個性を開いて、少し先の未来の自分を変えたければ、このメガネを選んだ方がいい、悪いことは言わないから。
とのこと。
確かにこの店主さん、哲学書や文芸書もたくさん読まれていて、知的な人生の先輩だから、妙に納得感があった。
職業や、服装や髪型、顔立ちを考慮して総合したら、こういうのが似合うのでは?と提案してくださる店主さんは、御年70代くらいと思われる。
おしゃれは若い人の専売特許ではなく、熟年の目利きに頼った方がよいことがあるのかもしれない。ましてやAIによる統計的な診断なんてものも、きっと及ばない。
ネットの情報に日々浸かっていると、過去の選択の延長線上にたくさんの商品がレコメンドされて無意識のうちに同じようなものを選び続けている。
けれど、そのメガネは、ちょっと先の理想を見せてくれて、その未来を今選ぶことを意識させてくれた。
なんだかとってもいい。
昭和レトロのいいところ、もう1つ見つけた。