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『坊ちゃん』まだ読んでないの?!

 こちらは新潮文庫出版、著者夏目漱石の『坊ちゃん』の読書感想文でございます。

 私は東京理科大学に通っており、『坊ちゃん』の主人公の出身校でもあることから、所々でその名前を耳にしていたのですが、とうとう読んでしまいました。
 というのも、私は典型的な入り口というものには入りたくないタチでして、「理科大に行っているから坊ちゃんを読む」みたいな使い古された型にはまってしまうのを避けるために読まないようにしていたんです。
 ですが、少し前に「坊ちゃん文学賞」というものに応募しまして、いやさすがにここまで来たら読まなあかんやろと。私、縁から運命とか感じちゃう乙女なので。

 それで昨日読んでみたら、「これは現代人が読まなあかんやつやん」となった次第であります。

 早速、軽い奴だと思われたくない私がプライドを捨ててまで宣伝するそのわけをお教えしましょう。
 まずはじめに、現代は義理人情というものが絶滅の危機に瀕しています。利害関係というビジネス的な繋がりが、友情や親子の絆にまで侵食していて、損得を度外視した思いやりや人の温かさというものはめっきり見られなくなってしまいました。

 そんな状況を踏まえて、作中の主人公のセリフをご覧いただきましょう。ではどうぞ。

『履歴なんか構うもんですか、履歴より義理が大切です』

 このセリフは、主人公についてだけではなく、この物語の全てを表していると思います。
 この物語の主人公は、曲がったことが嫌いで、世間体や目先の利益のために道理から外れる行動をしたりはしません。たとえ自分が損をすることになっても。

 ここまで聞いたら坊ちゃんは聖人君子のように思えて、遠い存在のように感じてしまうかもしれませんが、もしそうならここまで読み継がれることはなかったでしょう。
 主人公坊ちゃんは、捻くれ者で、いつも江戸っ子特有のべらんめえ口調で憎まれ口を叩いているのです。
 この物語は一人称視点ですから、そんな坊ちゃんの心の声がダダ漏れです。
 登場人物に雑なあだ名をつけたり、言葉遊びで煽ったりと、千鳥足でふらふら歩きながら気分に任せて街ゆく人にちょっかいをかけるような爽快感があります。

『坊ちゃん』の物語の魅力は、なんと言っても主人公坊ちゃんのキャラクターにあると思います。
 こういう人好き、こういう振る舞いに憧れる、そのままの人なのです。

 夏目漱石は、明治時代の人で、英国に留学もしています。そこで、近現代的な進歩成果主義によってもたらされる、人と人との間に機械のような冷たさを先行して感じ取っていたのでしょう。
 その予感の通り、現代はロボット同士のやり取りみたいな人間関係になってしまっています。
 だからこそ、そんな冷たい暗闇の中で坊ちゃんみたいな人間が輝いて見えるのだと思います。
 そしてそれが今なお愛される理由の一つだと言えます。

 というわけで、『坊ちゃん』の中の坊ちゃんについての魅力を語ってきました。
 心蔑視の現代を生きる我々にとって、焚き火となるような作品であること間違いなしです!
 他にも、タイトルの由来についても本編で言及されているので、気になった方はぜひ読んでみてください。

 ここまで目を通していただき、本当にありがとうございました!

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