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詩* 本屋

通路に流れる やさしい空気が
いつも 私を包んでくれる
この空間では 誰も皆
違う時計を持って ここに居る

紙とインクで出来た彼らは
棚の中に行儀よく並び
人間の知恵と歴史と欲望を
静寂の中で大いに語る

彼らに圧倒されながら
自分を探す私は
波に揺れる小舟のように
言葉の海を彷徨っている

ページをめくる微かな音が
海鳥の鳴き声のように
夕刻から夜にむかって
時の経過を知らせてくれる

ああ今日は出会えなかったなと
肩を落とすのは 私だけでなく
またいつか 出会える自分に
想いを馳せながら 家路につく

無駄と呼ぶには あまりにも
愛おしい時間
効率にも組織にも属さない
愛おしい時間

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