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よみあとんと(読書記録5)

こんにちは。とんとです。

今回の記事は、いま言語関係の本で大注目の読み跡(よみあとんと)です。

よろしくお願いします。

 今回の本は、
今井むつみさん、秋田喜美さんの『言語の本質』(中公新書 2023)です。

とても挑戦に満ちたアツい本でした!


<短めな紹介文>

 なぜヒトだけが言語を持つのか?この謎に挑んだ学者たちは多かった。本書では、言語のあり方と人間の思考という二つの基地を行ったり来たりしながら、異なる学問分野をまたいで、筆者と一緒にこの謎を考えていく。
 言葉の誕生と進化の方面からのアプローチで切り込んでいく様を読み進めていくことは、読者にとって、とてもスリリングかつエキサイティングな体験となる。鍵は「オノマトペ」と「アブダクション推論」だ。


<読後の感想>

 オノマトペを言語的ではないとして軽視したソシュールやホケットという近代言語学の大御所たちへの挑戦が込められた、とてもドキドキする本でした。

 新書なのに、まるで小説を読んでいるかのような感覚は、福岡伸一さんの『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書2007)を想起させるようなところがありました。

 2000年代の言語学事情を全く知らなかったのですが、人工知能(AI)研究の飛躍などから、ホケットのいう「言語の十大原則」というゴールドスタンダードの一部が揺らいで、「言語は身体的である」ことが広く受け入れられるようになっている事情を知り、とてもワクワクしました。

 そこへきて、筆者たちのいう「オノマトペ」研究と「アブダクション推論」の二本立てで、<言語の本質>に切り込んでいく様が、読者の私をもドスンと衝かれるような読書体験へ誘ってもらいました。

 最終章では、<今井・秋田版「言語の大原則」>と銘打って締めくくるところ、格好いい向こう張りですね!ロマンすら感じる……!

 また、個人的にはオノマトペに関するうんちくを14個も拾うことができ、ホクホクしています。

 コラムで、「ゆる言語学ラジオ」の話題も織り交ぜて、子どもの成長を語ったりもしている、剛柔自在な本作は、間違いなく名作だと思います。

<振り返り>

 今回は以上です。

 振り返りとしては、ニカラグア手話の発展からも分かるように、アナログからデジタルへの移行をしていく<言語>というものが、果たして洗練化と本当に呼べるのか?という疑問がわきました。

 なぜかというと、オノマトペ多用者は、野暮ったいのか??というちょっと自分ゴトとして、ドキッとするような疑問が生まれたからです。

 主観ですが、関西人は一般的にオノマトペ多用だと思うのですが、どうなんでしょうかね?関東の方たちは、<論理的関係の言葉>を多用するようにも思うので、そのあたりをどなたかに今度聞いてみたいと思います。
 

 それでは、ご一読頂きありがとうございました!

とんと

<キーワード>

・記号接地問題
・パースの「アイコン性」
・ヘレン・ケラーの「名づけの洞察」
・ガヴァガーイ問題
・ニカラグア手話
・アイコン性の輪仮説
・Cyc(サイク)プロジェクト
・昆虫ロボットプロジェクト
・PDPモデル(ニューラルネット型AI)
・ブーツストラッピング・サイクル
・対称性推論

<キーパーソン>

・山口仲美(1943-)
本書では、山口さんの
「たたく」「ふく」「すう」は、「タッタッ」「フー」「スー」であったという驚きの話が!
著書の、『オノマトペの歴史<2>ーーーちんちん千鳥のなく声は・犬は「びよ」と鳴いていた』風間書房(2019)はいつか読んでみたい。
というか、『日本語の歴史』(岩波新書2006)のヒトだったのか~。

・デイヴィッド・プレマック(1925-2015)
アメリカの心理学者。心の理論の提唱者。
動物は、アブダクション推論をするか、とくに、動物が結果から原因について推測すると考える根拠はないと結論づけたヒト。

著書の『ギャバガイ!』これも読んでみたい。

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