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宮本輝『錦繍』(読書記録1)

こんにちは。とんとです。

読んだ興奮が少し落ち着いてきて、まとまって話せるようになってきましたので、今回の「読み跡」を書いてみます。

よろしくお願いします。

 今回の紹介本は、
宮本輝さんの『錦繍』です。

とても胸を衝かれる作品でした。

  

<作品のご紹介>

作品の舞台は、日本です。10年前の日本と現在の日本といった感じ。
登場人物は、ある男女。二人は離婚して、今は関係がない状態です。
ところが、ある旅行がきっかけで二人は十年ぶりの再会をします。
どちらかというと、男性の方が、ややくたびれた風な感じでした。
女性はというと、再婚して子供もいます。

 そんな二人の偶然の出会いと、女性側からの手紙という形式で物語は始まっていきます。

二人の過去に何があったのか、どうして離婚してしまったのか。今後の二人の関係は続くのか……。

そういったことがこの物語に人生の深みを与えているように私は思います。

男性の手紙もあります。というか、この小説は男女の<往復書簡形式>で成り立っているんですね。
読者は二人の手紙のやり取りで、過去の事件の真相を知っていくことになります。

 

<読後感>

 私は読み終えた後、生きることの悲しい部分に胸を衝かれました。
10年間で人間は変わっていくし、それは悲しい部分もあるんだなとはおもいます。
ですが、生き続けていくことで、得られるものもあり、なんというか「深層」みたいなものも出てくるのだなと思いました。

 そして、タイトルの「錦繍」の意味を考えました。

詳しくは分からずイメージだけなのですが、「錦の御旗」というくらいですから、織物のことを指しているのでしょう。
それが、人生は綾であり、個々人が織りなす模様は本当に複雑、というか唯一のものなんだろうなとしみじみと感じました。

この物語の登場人物たちの「錦繍」の模様は、なんというか、けっして煌びやかなものではないのですが、
いわゆるプリントアウトされた出来合いの簡単な模様では全くなく、
むしろ手作業で丹念に作られた複雑な模様だ、と思います。

 また、私の人生の模様はどうだろうと顧みて、自分の来し方や行く末を考えました。

たまたま、この男女の10年間が、私の人生の10年間とほぼ重なったためです。

 宮本輝さんは、この年代にフォーカスを当てて描いたことに、どういった狙いがあるのだろうか……。
そんなことも考えました。

 20代半ばから30代半ばって、多感な青春時代を終えて、次のステージにという時ですが、
人生の盛り上がって来る時期に、離婚したり失職したり病気になったりする人も少なからずいますよね。
そんな、目立たないけど、必死に生きている人たちのことを忘れてはいけないと思うのです。

 最近は、こういった人情的な物語にグッと来てしまう私なのでした。

 今回は以上です。

ご一読頂きありがとうございました。


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