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松田青子『おばちゃんたちのいるところ』(読書記録2)

こんにちは。とんとです。

今回の「読み跡」は前回に続いて小説をピックアップして書いてみます。

よろしくお願いします。

 今回の紹介本は、
松田青子さんの『おばちゃんたちのいるところ』(中公文庫)です。

非常に愉快な作品でした!

  

<作品のご紹介>

  この本は、おばちゃんたちが現代社会に生きる我々のところにお節介をやきにやってくるんですが、彼女たちは、みんな幽霊なんですよね。それで幽霊があれこれとしゃべりかけてくるんです。
 
 我々にも幽霊は何故か見ることができて、話すこともできるわけなんですけど、話していくうちに、こじれた問題が解消していったりして、ちょっぴり前向きになるきっかけになったりするんです。
 
 しかも幽霊たちは謎の企業にスカウトされて勤めていて、現代人のもとに派遣されたりするんですね。非常に愉快な企業で、スカウトマンがいて(そのキャラも幽霊です)組織的に私たちを救済してくれる。救済アイテムもあったりして、それぞれの幽霊もキャラ立ちしていて魅力的なんです。

 短編集なんですが、連作となっていて、それぞれの幽霊の話は、モチーフになっている落語や歌舞伎の話があるんです。『皿屋敷』とか『娘道成寺』とか『骨つり』とか。

 面白い設定だし、古典的名作をリバイバルさせている手腕も見事なんです。

<読後感>

 「日本の幽霊」って江戸時代なんかには実際に生活の一部に居たかのように感じられるというか、人々は感じていたんじゃないかと私個人的には思ってしまったりするんですが、その辺りが今の私たちの社会では想像出来なくなってしまっているんじゃないでしょうか。

 そしてその想像力を補って現代社会のくたびれてしまった人々に温かな励ましをしたりしてくれる幽霊というモノについて、私は時空を超えてマクロな世界を感じられたりする不思議な存在なんだと思ったりしました。

 怖いことは全くなく愉快な怪談集ですので、お気軽に読んでみてほしいと思います。

 「死者が生者を元気づける」
そんな世界観があってもいいんじゃないでしょうか!
その世界は、もしかしたら江戸時代特有のものではなくて、普遍的な感覚だったのかもしれないですね。
現代社会が特殊過ぎるのかも?
そんなふうに、飛躍的に考えたりしました笑

 今回は以上です。

ご一読頂きありがとうございました!

とんと

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