生きて、抗え 「ゴジラ-1.0」
君たちはもう、「死んでも構わない存在ではない」
「ゴジラ-1.0 」オスカー受賞 おめでとうございます。
「沢山のゴジラ作品の上に私たちの『ゴジラ』がある」
アカデミー賞発表前日の山崎貴監督の言葉が沁みましたね。ゴジラはなぜ生まれたのか、人は何を守ろうとしてゴジラと闘ったのか。闘いの後はどう生きるのか。ゴジラの凶暴さと共に、実は悲劇が産んだヒールである事を、時代を変え、角度を変えて何度も描いて来た長い歴史があることを、監督は語らずにはいられなかったと思います。
それでも今回の受賞対象は、映像表現でした。これに関しては、
「ぜひ、劇場で❗️」
と、言わせていただきます。
さて、2023年は、「ほかげ」、「ゲゲゲの謎」、ちょっと違うけど「君たちはどう生きるか」…と、戦後の市民生活の混乱と南洋からの帰還兵のPTSDを取り上げた映画が続きました。この「ゴジラ-1.0」もまさしくその流れにあったと思うんです。戦地で理不尽な扱いを受け、「死ぬ」こと「殺す」ことを強いられ、一個人であることを否定された環境から、いきなり「自分の足で立て!」と言われ…。だけど「ほかげ」「ゲゲゲ」と「ゴジラ」が明確に違うのは、「生きて、抗え」というコピー通り、「生きろ、生きて生きろ」という熱量だと感じました。それを強烈に印象付けたのは、神木隆之介が操縦してゴジラめがけて震電で突っ込んでいって、積極的に生還を選び取ったことです。あの瞬間、「ああ、21世紀のゴジラ映画なんだ」という感動で涙が出ました。日本人はどうしても「君のために僕らは死ぬ」が好きで、ハリウッド映画の「アルマゲドン」もそうです。
だけど、21世紀の「ゴジラ」が描いたのは、自分の頭で考え、選択して、生き抜け! もう「死んでもかまわない存在」ではない! というメッセージでした。
正直言って、10代から日本の戦争映画を観てきた私も、「宇宙戦艦ヤマト」「連合艦隊」をはじめとする特攻映画好きの一人です。そんな私も、この結末には涙してしまいました。それは、戦後80年を迎えようとする今、個人を尊重することを、本当の意味で日本人は出来るようになったと思ったからでした。
そんなことを考えながら旧Twitter を眺めていたら、「戦後初 PTSD・心的外傷後ストレス障害とみられる旧日本軍兵士について国が実態調査へ」(https://news.ntv.co.jp/n/ybc/category/society/yb32b7e00ced7045c28f151177298bf57a)という投稿を見つけました。戦後初だそうです。PTSDの帰還兵は、単なる精神疾患患者として隔離されてきたというのは知っていましたが、この事実がもっと報道されて、当事者は亡くなっているだろうから、その遺族の苦悩などを積極的に調査されて欲しいと思います。
「ゴジラ-1.0」の内容のに話を戻すと、もう少しハッキリと、原爆のせいで伝説の怪獣ゴジラが巨大化して凶暴さが増したのだという表現が欲しかったと思います。そうなると、「原因と結果」として、作品賞の「オッペンハイマー」に並べて賞賛されたかもしれないですよ。
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