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2024年 年初の思い
※この記事は、当店のHP内のブログで1月15日に投稿されたものの転載です。
遅ればせながら、改めて、今年はどういう年にしようか、この店をどうしていこうか、と考えたことを、公にお知らせするとともに、自分にとっても意思表明の覚書として残しておこうと思って、書きます。
と、その前に、のっけから脇道に入って補足となりますが、昨年の夏くらいに、「そろそろブログ投稿を再開、本格化させよう!」と考えて以来、8月に一件だけ投稿して、しょっぱなから完全にストップしてしまっていました。一瞬の出来事でした(笑)。
この有言不実行(笑)は自分でもとても不本意でお恥ずかしいことでしたが、まだまだ店としてほかに整えなければいけないことが山積していて、外堀を掘ったり、外郭のレンガ積みをしたり、地ならしをしたりして、「カンティーヌ+(プラス)」というコンセプトの店の形の土台を整備しきるためにやらなければいけないことに追われるばかりで、結局文章を書くだけの余力がありませんでした。ブログを書くのって、けっこういろいろと体力を必要とするんですよね。
さてそんな中で…2023年を終えて、クリスマスまで試したかったことをひととおりやりきってみて、それでまた改めて自分で「とんかつカンティーヌ+ゆめみるこぶたとは、どんな店なのか?」を俯瞰してみた結果…やっとこれで、ひとまずのその形が定まってきた気がします。今までも何度かこういうことを言ったことがありましたが、結局まだまだ不十分で、全体像として全ての歯車が立体的に収まった感じが、していなかったんですね。
2024年は…とんでもない災害から幕を開けました。このことには、私もかなり動揺させられました。しばらくは、ポジティブに前だけを見据えて「よし、2024年、今年こそ、いっちょやってやるか!昇竜のように!」という気分にはなれず、ニュースを見るたび、悲嘆し、かわいそうで、悲しくて、どんよりとした心持の毎日が続きました。
しかし…そうは言っても、それをいつまでも続けているわけにはいかない。それとは別の問題として、自分の事業を、今年こそ、成長させなければならない。でなければ、今のままの収益性では、今年中にゲームオーバーです(!!)。
幸い、2023年は、試したかったことを、いろいろ試し、その結果を検証することができました。その中でも…実は最も、「とんかつカンティーヌ+」として、試してみたかったこと、これは一度、やってみないわけにはいかない、と考えていたこと、これを「とんかつカンティーヌ+」の主軸とするとかそういうことではなくとも、「このオプションが、とんかつカンティーヌ+にはあるんだ」ということを自分の中で明確にしておきたかったこと、それを…
クリスマスに試してみることができたことは、自分の中で、大きかったです。そう、「とんかつカンティーヌ+ゆめみるこぶた」は、「クリスマスにだけ、フレンチレストランになる」んだ、ということを、自分の店のアイデンティティとして明らかにすることができた、ということが、です。
2022年11月、リニューアル時…「とんかつカンティーヌ+」は、基本的にはとんかつを提供する店として、あるいはとんかつではないいろいろな料理や食事を提供する店として、あくまで日常使いのできる、
「レストラン未満な、食堂以上。」
をコンセプトとするものとして、考案しました。
それは、(フレンチ)レストランなんて利用する習慣はない、フランス料理なんてほとんど食べたことがない、という、世の中の多くの皆様に向けた、肩ひじ張らない、ハードルの高くない、しかしまた同時に間違いなく「(フレンチ)レストラン」という空間が持つ、独自の気分的豊かさ、独自の時間感覚、独自の食事体験、を体現し、日常の中に、ほんの少しだけ上質な非日常を提供することを、目的、存在意義としたものでした。
そして改めて、思うようになったのです…
「空間はカフェ、レストラン未満な、食堂以上。」
「とんかつの店であって、しかもなお、『とんかつ屋』じゃない。」
「カンティーヌ+」としての、これらいくつかの新しいコンセプトキャッチフレーズを新たに考え、それを全面に押し出すようにしてきたものの…
それでもなお、やはりこの店の一番根幹であるあの、開業の前に長い時間をかけて、いろいろ考えに考えた結果、ついに「これだ!」と決めるに至った、あの最も重要なキャッチフレーズ…
「今日はちょっとレストラン気分に、とんかつ。」
やはり目指したいものの全ては、ここに集約されていたのではないのか?なぜこれをもっと大事にし、もっと理解してもらい、もっと広めていこうとする努力を、半ば忘れていたのか?
「今日はちょっとレストラン気分に、とんかつ。」
このキャッチフレーズを、ご存じの方もいれば、そんなのどこに書いてあった?と思われる方も、いらっしゃるかもしれません。
誰もが目にしている、当店のこぶたのロゴ、あのロゴの下に、いつもどこででも、必ず、小さく、このフレーズは、添えられているのです。
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しかしこれは、けっこうフォントが小さく、今までことさらに説明することも、アピールすることも、していませんでした。ロゴの下にあるんだから、誰でも目に付くだろう、読むだろう、伝えたいニュアンスは伝わるだろう、くらいに軽く考えて、自分でもなおざりにしていたのです。
どちらかというと「食堂」として気軽に使ってもらえることを目指していた、開業時の「とんかつカンティーヌ」。しかしそれでは結局「食堂止まり」にしかならないことを痛感し、もう一歩先へ、食堂以上で、レストラン未満なところを目指した、「とんかつカンティーヌ+」。
いろいろあれこれと考え続けすぎた結果、皮肉なことに自分でも注意がおろそかになってきていた、おおもとのおおもと、出発点であった「今日はちょっとレストラン気分に、とんかつ。」この原点を、改めて、もっと大事にしよう。ここにいつでも回帰できる、軸をやはり、据えておかなければならない。
やはり私は、レストラン人。restaurant(フランス語)という世界の職人であり、フランス料理の料理人です。この店の根幹には、まごうことなき、それがある。そのポジションを、明確にしておきたい。しておかねばならない。
そう思って、クリスマス、つまりフレンチの料理人にとって、一年で一番の、最大のイベントの場には、完全な「フランス料理として成り立っているコース料理」を提供しよう、と決めたのです。それも、「とんかつとは関係ないように見えて、しかしとんかつカンティーヌ+の料理としては、違和感がない」と誰もに納得してもらえるような、そんな料理を。
これは、おかしなことを言いますが、多くの人にご利用いただけると想定していたメニューではありませんでしたし、それを目指していたわけでもありませんでした。すでに言った通り、この店は、フレンチに関心のアンテナが強く立っている方をメインターゲットとしている店では、ありません。
しかし…もし、普段はランチプレート、ライトディナープレート、通常のとんかつメインディッシュ、を楽しんでくださっているお客様の中に、「この店が、一年で一度だけ、フレンチレストランになる」日があるとして、それをも楽しんでくれるような方がいらしたとしたなら…そういうお客様に対する、一年で一度の特別な料理として、とんかつカンティーヌならではのフランス料理、を提供できる機会がある、というストーリー(物語)があることは、店の存在の意味を、もう一段階拡げ、深めることができるのではないか。そう考えたのです。
だから、半分以上、検証であり、チャレンジのつもりで、クリスマスの特別コースを用意しました。果たして、予約は入るのだろうか…もし入らなかったとしても、それはそれで、仕方がない…数組だけでも予約が入るのなら、それだけでも、今の考えの中においては、充分な結果だ。そう考えていました。
しかし結果は、想像以上となることができました。そしてさらにその結果には、本当に感激でした。心から感謝をしています。
そのようにして、私は、当然自分では決して忘れないし、今いらしてくださっているお客様にも、これからいらしてもらおうと考えている全てのまだ見ぬお客様に対しても、感じさせたい、忘れさせないようにしたい、と、改めて思ったのです。この店のコア(核)には、「レストラン」が秘められている、ということを。
この思いを新たにして、2024年、とんかつカンティーヌ+ゆめみるこぶたという店が、目指そうとする方向性が、またひとつクリアに、見えた気がしました。